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2006年8月27日 (日)

原油高騰が示す環境税案の欠陥

 地球温暖化対策の一つとして、かねて環境税を導入すべきだといわれてきた。環境省が05年10月に発表した「環境税の具体案」は、炭素トンあたり2400円の環境税を導入すれば、年間4300万トン程度の二酸化炭素削減効果があるとした。日本は京都議定書で基準年の1990年に比べ、2008~2012年の年間の温室効果ガス発生量を6%減らすことを約束したが、この環境税の案を実施すれば、基準年比3.5%程度の削減効果があるとした。

 この場合、家計は月に180円(年間約2100円)の負担になるという。中身をみると、エネルギー消費に課税するので、ガソリンだと1リットルあたり1.52円、軽油同1.72円など、電気は1キロワット時0.25円の環境税額が上乗せされる。

 しかし、ここ1、2年は別として、それ以前は、普段から、ガソリンの小売価格はスタンドごとに違うし、しょっちゅう1リットルあたり1円や2円ぐらいは上がったり下がったりしてきた。クルマの効用を考えると、環境税の導入でガソリンが1リットルにつき1.52円上がったからといって、消費者が節約することは考えられない。環境省案では価格効果は期待できないと言ってよい。

 これについて、環境省は、以前は「アナウンスメント効果」(環境税を導入したと国民に知らせると、国民はそれじゃエネルギーを節約しなければと思うようになるから、エネルギー消費が減る)が大きいと説明していた。しかし、最近は、環境税の税収(現在の案だと約3700億円)を省エネ、新エネなどの温暖化対策に充てるので、その対策による効果が大きいという説明に変わった。価格効果はないことを環境省は十分承知しているのである。税収を環境省が自由に使える財源として確保したいという気持のほうが強いのかもしれない。

 いずれにせよ、環境省は、産業界などが強く反対している環境税をとにかく実現したい。そのために、経済界の抵抗ができるだけ少ない低い税額を提案したと解釈するのが当たっていよう。ひとたび導入してしまえば、官僚の思うがまま。あとは税率を徐々に引き上げればよい、ということだろう。

 8月27日の朝日新聞のコラム「竹内敬二のどうする」は、6月のガソリン消費量が前年比2.9%減ったことを紹介している。6月の平均ガソリン価格は1リットル136円、04年度の月平均価格は同107~120円、05年度は122~131円。これぐらい値上がりすると、「価格が上がれば消費は減る」。つまり価格効果が現れるのである。

 環境税導入反対派が唱える「ガソリンは少々上がっても消費は減らない」という見解は正しい。現在の消費減少(CO2の発生減少につながる)は、原油高騰でガソリンが大きく値上がりしたからである。それは、環境税がなくても起きたのであり、ガソリンで1リットルにつき1.52円という環境省案が価格効果という観点からはいかにピンボケであるかがよくわかる。

 コラムは、石油ほど値上がりしていない石炭にエネルギー需要がシフトすることを心配して「環境税をまじめに考えるときではないだろうか」と書いている。もしも、環境省案(石炭1キログラムにつき1.58円の環境税)の導入を念頭に置いて書いているのなら、ガソリン同様、疑問に思う。石炭の場合、企業が主なユーザーであり、ガソリンとは若干、事情が異なるが、それでも、少々の値上がりで価格効果がはっきり出ることは期待できない。環境税を環境対策の切り札と思うなら、1ケタ上ぐらいの課税額(ガソリンなら1リットルにつき15.2円といったレベル)を提起すべきではないか。

 竹内氏のこのコラムをいつも愛読している。しかし、今回のコラムは環境税に対する固定観念にしばられすぎているように感じる。

 

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