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2006年8月19日 (土)

加藤寛さんの「経済教室」

 小泉内閣の終焉を前に、小泉構造改革の評価がメディアで行われている。その中で、加藤寛千葉商科大学学長が日本経済新聞朝刊8月17日付け「経済教室」欄に書いた記事「小泉改革 背後に『公共選択』」は、小泉改革と、その基盤となった橋本行革の意義を適確に述べている。ぜひ一読を。

 選挙で国民の代表を選ぶ民主主義国家では、歳出の抑制が効きにくいから、どうしても財政赤字が膨らみやすい。日本では、政治家が既得権益を守ろうとする勢力の意向を受けて、実質的に政策決定の権限を持つ官僚と結び付いて、歳出がルーズになり、財政赤字が拡大した。こうした既得権擁護に走る政策決定の過程を是正し、政府の活動領域・租税制度が市民の意思を反映するものになる立憲的改革を行なう必要がある。小泉改革はその方向に沿ったものであり、そうした改革が可能だったのは先頃亡くなった橋本龍太郎首相時代の行政改革だった。ポスト小泉も、いまの改革の方向を強化すべきである。(加藤氏の論文を私流に要約)

 この「経済教室」には、公共選択論の立場から、どうやって赤字依存体質を脱却するか、が明示されている。紹介されてえいるJ・ブキャナンの見解を含めて賛成だ。

 ところで、加藤氏といえば、雑誌「Voice」の05年10月号「サラリーマン増税は必要ない」で、700兆円の国債について「発行された国債が何に使われているかというと、道路建設や護岸整備など、すべて国民の資産づくりである。国債が資産に変わっているだけの話で、一般にいう赤字とは違う」とか、「本来700兆円の国債は、赤字と見なす必要はない。雪山に例えるなら”根雪”のようなもので、止めなければならないのは、その上に降る”新雪”だ。」と書いていたことを思い出す。

 加藤氏は同誌で、よく聞かれる「歳出カットしても、財政赤字は埋められない」という主張は財務省の宣伝と考えるべきだ、と言い、増税よりもまず歳出カットをせよと述べている。それは正しい。しかし、700兆円から増えなければいい、という意見には疑問を抱く。経済財政諮問会議が「骨太の方針」を論議する過程で、長期金利と名目成長率とどちらが高いかをめぐって激論が交わされた。そして、長期金利のほうが名目成長率より高いとの見解が大勢を占めた。すなわち、700兆円もの国債を抱える異常な国家財政では、金利負担が増大して、財政破綻が起きる可能性があるのだ。

 政治家や官僚の抵抗で、2011年度にプライマリー・バランス(基礎的財政収支)の均衡を達成することさえ容易なことではない。それなのに、加藤氏が「いまある赤字は大した額ではない。」と言い切るのは、公共選択学者としておかしくはないかと思う。

 第一、加藤氏のように長い間、政府税制調査会会長を務めてきた要人が「いまある赤字は大した額ではない」と国民に言ったら、国民は財政危機をまじめに受け止めないだろう。結果として、政治家や官僚はいままでの既得権益擁護の政策決定を継続しやすくなる。そこを加藤氏は見落としているのではないか。

 

 

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