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2006年9月27日 (水)

子供の医療費助成のツケはどこに?

 医療保険の自己負担率が3割(乳幼児2割)になって、病気などの治療費が結構、家計の負担になっている。そのため、近年、財政的に割合、余裕のある市区町村では子供の医療費の自己負担をゼロにするなどの助成制度を導入したり、助成する対象を拡大したりするようになっている。9月26日付けの日本経済新聞は「市区町村の医療費助成」という見出しを付けて、最近の動向を紹介している。

 子供を抱えている家庭にとっては助かる。少子化対策という観点からも、こうした医療費の助成は歓迎されることだろう。助成のない自治体から、助成のある自治体に住居を移す家庭も出てくる。かつてスウェーデンの自治体を視察したとき、自治体ごとに住民サービスや税金が異なり、住民が有利な自治体に引っ越すという話を聞いた。地方自治がもっと進めば、スウェーデンのようになっていく、その先駆け的な事例として医療費助成をとらえることもできよう。

 しかし、視点を変えると、いいことづくめのように礼賛するわけにはいかない。タダにすると、大した症状でもないのに、すぐ医者にかかるようになりがちだ。医者は”お客”が増えるから、歓迎だろうが、マクロ経済的にみると、医療保険の利用者が増えるのだから、国民医療費の増大に拍車をかける。財政危機を考えると、社会保障費の増大、そのうちの医療費増大をどうやって抑えるか、は現在の日本が抱える深刻な課題である。市区町村の医療費助成は、この問題をより悪化させるほうに作用する。

 医療保険は組合管掌健康保険、共済組合、政府管掌健康保険、国民健康保険などから成る。組合健保では会社と従業員が保険料を半分ずつ負担する。共済組合は国、地方、いずれの共済も、職員が保険料を半分負担するものの、残りは国、自治体政府が負担する、つまり税金で賄う。政管健保、国民健保、老人保健制度にも、巨額の税金が投入されている。そうした医療費国庫負担は実に約8兆円にのぼる。

 そのツケは当然、納税者に回ってくる。しかし、おかしなことに、組合健保に属するサラリーマンは、自らの保険には事務費程度しか税金の投入はないのに、他の医療保険に投入される税金を納税者として負担させられていると考えることもできる。従業員の多い企業のサラリーマンは見返りがないのに、他の医療保険加入者に”寄付”をさせられているという解釈も可能だ。

 そうした医療保険制度の仕組みを前提にすると、市区町村の医療費助成(これも税金で負担)は、医療保険の財政を悪化させるだけではない。税金投入という支援を受けていない組合健保の加入者に対し、他の医療保険の加入者に比べて、より多くのツケを回すことになる。医療保険制度のゆがみがそこに表れていると言えよう。

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