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2006年9月 2日 (土)

前国税庁長官の著書を読んで

 7月に刊行された『税財政の本道』を読んだ。前国税庁長官・現商工中金理事長、大武健一郎氏の著書だ。財政危機の実態を数字で示されると、わかっていたつもりでも、改めて財政改革がいかに重要かを痛切に感じる。以下、同書から読み取ったポイントを紹介する。

 平成18年度予算では新規国債を30兆円に抑えたと言われている。しかし、借換債108兆円、財政融資特会債27兆円、計165兆円もの国債発行だ。

 一般会計予算は79兆7000億円。うち国債費が18兆8000億円、地方交付税交付金等が14兆5000億円だから、いわゆる政策経費といわれる一般歳出は46兆4000億円しかない。しかし、政策経費のうち20兆6000億円が社会保障関係費だから、それを除くと、25兆~26兆円しか残らない。

 政策経費46兆4000億円を税収45兆9000億円でなんとかまかなうという状態なので、義務的な国債費や地方交付税交付金は、すべて借金でまかなわれ、いまも借金が増大し続けている。

 社会保障給付費は、一般会計以外の特別会計の分も合わせると、04年度ベースで86兆円と一般会計予算を上回る。「社会保障給付費のほうはほとんど国会で中身の議論なく支出されている」。しかも、この社会保障給付費は、2010年度に105兆円、2025年度には152兆円と見込まれている。

 国債は1991年度末の170兆1000億円から2004年度末の642兆5000億円へと急増した。誰が引き受けたのか。政府自体の引き受けが69兆1000億円から269兆7000億円にまで膨らんだ。その大半が実は郵便貯金である。郵便貯金は92年度末7兆2000億円だった国債保有が109兆7000億円に膨らんだ。また、簡易生命保険が1兆1000億円から55兆1000億円へと買い増した。さらに日本銀行は、保有残高が9兆3000億円から92兆1000億円になった。市中金融機関も64兆1000億円から204兆1000億円へと、約140兆円も国債を引き受けた。

 「個人と企業のお金が郵便貯金、簡易保険、そして市中金融機関を介して国債に回ったということ」だが、「国債にお金を回すというのは明らかに後ろ向きのところにお金を回すこと」だという。本来、国民が預けたお金が生産性の高い民間企業に回り、民間の設備投資が盛んになり、それが日本経済を発展させる。しかし、それがそうでなくなったから、「日本経済そのものが発展しなくなったのもうなずけないわけではありません。そこで、郵政改革の最大の狙いは、そうした郵便貯金の運用をもっと効率的なところへ回そうということだった」という。

 1997年度から2004年度までの国の中期的税収減の要因分析をみると、この間に税収が8兆3000億円減少した。「税制改正による減税分が7兆6000億円、経済要因等による減収が7000億円」。ひんぱんに財政出動が行なわれたのに、むしろ自然減収が発生した。「経済運営によっては自然減収になる時代に突入した」。したがって、「これからは国家戦略を立てて国家の活力を引き出す努力なしには経済活性化は難しく、自然増収どころか自然減収の可能性すらある」と述べている。

 「これからの時代は、右肩上がりの時代に始まった「当たり前」でないことを見直し、当たり前に戻る、すなわち自分のことは自分でやることが必要です。それに戻らない限り、この超高齢化社会は税金ばかりが増えて経済が押しつぶされる、そんな国になりかねない」と危機感を訴える。今までの歳出を見直すと同時に、「これからの社会は国や自治体に頼るのではなく地域や仲間で、元気なうちはみんなで助け合うということがもう一度求められる」と付け加える。

 これからは、「家族の絆」や「地域の絆」を大切にするという当たり前の暮らしに戻り、おのおのが今の行政サービスを見直して、自分たちでやれるものは自分たちでやり、国や地方自治体には手を引いてもらう、つまり、行政改革をする時代に入ったという。

  日本経済を活性化させる中で増税も図る、そして増収を目指す。そのためには、「日本の企業、特に日本の得意とする分野の企業の競争力を強化する税制が必要」という。

 大武氏は、このほかにもさまざまな主張を展開している。増税するとき、なぜ消費税が望ましいか、については、3つの理由を挙げた。①人は資産と所得を勘案して消費活動をするから、消費に着目して税負担を求めるのはいまの日本に適している、②貯蓄減少社会になっているので、消費に課税して消費を抑制し、貯蓄を増やす必要がある、③働く人の所得にかかる税・社会保険料ばかりに頼るわけにはいかないから、保険料引き上げが予定されている以上、税で負担を求めるとすれば消費に対してだ。そして、消費税を上げるとき、食料品に軽減税率を入れるよりも消費税額控除を導入するほうがいい、あるいは低所得者向けの社会保障施策を充実する、としている。

 「国のかたちを見すえて」という副題をつけた本書は、「日本の国家としての役割と国家戦略をしっかりと構築し、その一環として税財政のあり方を議論し、財政再建も図っていく」というのが本道だという。当然のことながら、財務省的な視点が強い(例えば、もっぱら一般会計だけを論じ、特別会計などにはほとんど触れない)が、大武氏独自の発想もあり、参考になった。

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