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2006年9月 3日 (日)

岐阜県の裏金づくりの実態

 第三者(弁護士)から成る「プール資金問題検討委員会」の報告書が9月1日に公表された。58ページにおよぶ報告文書はよく調べ上げた内容だ。

 これによると、遅くとも、昭和40年代初め頃には、すでに不正な経理による資金づくりが行なわれていたことが窺われるという。①正規の予算に計上できないが、業務上、必要な費用(官官接待、土産代、予算が付かない備品等の購入など)を捻出するにはやむをえない、②単年度主義の予算なので、年度内に使い切らないと、次年度に削られる可能性が高いし、担当者の予算見積もりの甘さが指摘される、などの事情が背景にあるという。役所の中にいると、必要悪としか思わなかったのだろう。

 そういう事情だとすれば、岐阜県だけの話ではなさそうだし、もっと前から行なわれていたのではないか。戦前、小学校の教師だった人が話してくれたところによると、「実際には一度も出張したことがなかったが、校長からはたまに”○○さん、出張してください”といわれ、ハンコを渡したことがある。学校の備品を買うためにどこでもそうしていた」とのこと。岐阜県県庁の場合も、ひょっとしたら、戦前から連綿と続く慣習だった可能性もありそうだ。

 梶原前知事(1999年就任)は不正経理資金が存在する可能性を認識しつつも、過去の実態を解明するのではなく、これに蓋をした上で、規制強化により将来的に不正経理をなくす方針をとった。それが不正資金を隠すための県職員組合への資金集約につながった、とし、重大な責任があると指摘された。

 森元副知事(自治省から出向)、奥村元知事公室長、高橋元総務部長らの幹部や、職員組合の中央執行委員長、書記次長も「責任重大」と指摘された。処分についての意見では、「重い処分が相当」だとされる者として、現職にある元知事公室次長、組合役員、個人で費消した者が挙げられた。

 市民が公金を私したら、金額の多寡にかかわらず、厳しく処罰される。この件も、庶民感情からすれば、詐欺や虚偽公文書作成罪・同行使罪にあたる行為だったのだから、深く関わった役人は皆、刑事罰に処せられて当たり前だ。しかし、報告書は、組織ぐるみの行為なので、組織の責任の範ちゅうにあるものは、資金を返還するという形で責任を問えば十分、という。組織の責任とはいえないものについても、資金を返せば、刑事責任まで問う必要はない、という。個人的に費消してしまったものも、少額だったり、悪質性が認められない場合には内部処分等で足りるとしている。

 刑事責任が問われるべき場合でも、公訴の時効や立証可能性の問題があるとし、現時点で委員会が刑事告発すべきだと考えたのは数名だという。報告書を読んだ限りでは、公訴時効などの理由で、前知事、元副知事、元出納長、元知事公室長、元総務部長など幹部は刑事責任を追及されないようだ。

 1992年度から2003年度までの12年間につくられた裏金は、委員会の推計によると16億9722万円。利息を足すと約19億1775万円。すでに返還された金額を引くと、約14億4520万円になる。これを現役の管理職やOBの幹部、管理職に負担してもらおうとしている。それで数名の刑事告発があるにせよ、一件落着という話だ。梶原前知事をはじめとして、幹部OBが県関連の公職に就いているのには、それは「退いていただくことを期待する」と遠慮がちに述べている。

 日本では官僚支配国家なので、「官僚は悪いことをしない」という発想がいまだに強い。国民から、悪いことをしていると批判されても、なかなか認めない。だから、犯罪的な行為をしても、軽い処罰にとどまる傾向がある。今回の報告書は調査分析はすぐれているが、処罰の話になると、控え目だ。現在の知事という利害関係者が委員会の委嘱者だからだろうか。

 報告書は再発防止のため、情報開示などの対策を挙げている。それはよいとして、県の職員には、どれだけ罪の意識があるのか。彼らはどういう反省をしているのか。そこいらが気になる。県職員は県民のサーバント(奉仕者)であるはずなのに、従来、県民を見下し、自分たちだけうまい汁を吸ってきた。そこにメスを入れないと、住民主体の真の地方自治は実現しない。職員の意識改革が古田現知事に課せられた責務である。

 

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コメント

私は梶原前知事の県政については批判的。IT・ソフト施策は戦略なしに予算をつぎ込んだし、国と地方の関係についてのビジョンもなかったというのが私の評価。ただ、この裏金問題については、梶原氏の責任は小さい。悪者をつくり、バッシングするというのは気持ちがいい。その人の地位が高ければ、なお、バッシングは気持ちがいい。しかし、客観的にみよう。梶原氏に不利な発言をすべて集めても、梶原氏は裏金作りを指示したことも、使ったこともない。仮に東京出張経費に裏金があてられていたとしても、それは梶原氏のあずかり知らぬところだったし、就任直後のみであった。隠蔽するよう指示したこともない。梶原氏に不利な証言を採用したとしても、少なくとも調査をしようとしたという。事実として、裏金が発覚したときは、職員を非常に厳しく処分した。日常的におこなわれてきた裏金づくりは、梶原県政の間に、ほとんど行われなくなったのも事実。現在の岐阜県の課長が、梶原氏の返還額が少ないと不満を述べたという記事を読んだが、知事に当選してはじめて岐阜県入りした梶原氏とは違い、今50歳くらいの課長こそ、梶原県政前の日常的な裏金づくりに加担したか、黙認してきたはず。今、裏金を隠したとされる人たちが批判されているが、そのさらに前の世代で、裏金を作り、使った人たちこそが本当に批判されるべきではないか。今の県政(若い県職員)を悪くいったり、税金を払わないとかいうのは筋違いだ。

投稿: logic star | 2006年10月 6日 (金) 22時41分

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