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2006年9月24日 (日)

財政改革への小泉首相の貢献

 小泉政権が終わる。同政権についてさまざま面からの評価が行われているが、ここでは、財政改革の問題に限って評価する。

 7月29日のブログ『「タイタニック号」の不安』に書いたように、2004年末の頃には、日本は財政破綻への道をひたすら歩んでいるとしか思えなかった。財政破綻をテーマとする書物はすでに1990年代からちょくちょく出版されていたし、この04年12月にも『「国家破産」以後の世界』(藤井厳喜著)が発売になり、さらに05年2月には『2008年 IMF占領』(森木亮著)が出た。いずれも、日本の財政破綻を既定の事実としてポスト破綻について書いていた。

 05年春、個人的に、財政改革について幾人かの識者に意見を聞いたことがある。メディア関係のある人は「財務省、経済産業省の人に内々に集まってもらって財政再建が可能か、検討してもらったが、破綻は必至という結論だった」と語った。そして、私に「財政破綻を回避するための運動をするというのはむだなこと。他のことをしなさい」と忠告してくれた。当時、政府の経済財政諮問会議で歳出歳入一体改革などを検討していたが、主要新聞は財政再建問題にはほとんど関心を示さなかった。

 その頃と現在とでは、世の中の雰囲気はかなり違う。おそらく最大の理由は、05年秋の小泉内閣改造で、経済財政諮問会議の担当大臣が竹中氏から与謝野氏に代わったことだろう。竹中氏が小泉首相の片腕として構造改革に取り組んでいたときの経済財政諮問会議は自民党とぎくしゃくしていた。霞が関の官僚とも。それに対し、政調会長だった与謝野氏は諮問会議の担当大臣になり、財政再建に与党の自民党を巻き込んだし、財務省や経済産業省などのエリートを活用した。(諮問会議を基本政策決定の場とし、独自のスタッフを擁して改革を推進した竹中氏の功績は実に大きい。あとを継いだ与謝野氏は竹中方式を修正した。その分、旧来の政策決定方式に逆戻りした面があるが、与党、官僚を含む”全員参加”型にしたことで、財政改革をとにかく軌道に乗せたことは評価していい。)

 ことしの7月に政府が決めた「骨太の方針」には、これまでの財政健全化努力を継続し、2011年度には「国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する」、「財政状況の厳しい国の基礎的財政収支についても、できる限り均衡を回復させることを目指し、国・地方間のバランスを確保しつつ、財政再建を進める」と明記した。自民党もきちんとコミットしたものだから、財政改革を進めるうえで大きな前進だ。

 ただ、2011年度までの改革プランは識者の指摘通り、問題がある。11年度に基礎的財政収支を黒字にするには、16.5兆円を歳出削減と増税で賄う必要があるとし、うち11.4兆円~14.3兆円を歳出削減でまかなうという。しかし、削減の比較のもとは現在予想される11年度の歳出であり、06年度の歳出(予想)ではない。また、人件費は06年度の30.1兆円から11年度35.0兆円へと増えることになっている。さらに、5年間の名目GDPの年成長率を3%と高めに設定している。改革プランはぎりぎりと歳出を削る一方ではないから、自民党も賛成したと言えなくもない。

 したがって、今後5年間、もう安心だと楽観せず、毎年毎年、経済情勢の変化を踏まえて財政改革プランを厳しく見直していかねばならない。それはそれとして、財政再建が大きな政治課題であることを小泉内閣のもとで政府・与党が認識し、とにかく一歩踏み出した意義は大きい。

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