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2006年10月 8日 (日)

ソニーとホンダ

 ソニーとホンダ(本田技研工業)とは戦後生まれの代表的な企業である。歴史を振り返ると、どちらも似たところがある。ソニーは井深大、盛田昭夫の名コンビ、ホンダは本田宗一郎、藤沢武夫の名コンビで、いずれもベンチャー企業としてスタートし、大手メーカーと異なる独自の道を歩んで成長してきた。業界の中で、米国にいち早く生産拠点を設けたのもソニーであり、ホンダであり、両社とも世界に根を張るグローバルな企業になった。

 しかし、近年、ソニーの技術力が落ちたことを示す出来事が起きている。経営も不振続きだ。他方、ホンダはトヨタの蔭に隠れているため、さほど目立たないが、売り上げ、利益とも着実に伸びている。ソニーとホンダとは明らかに差がついた。ソニーはどうしておかしくなったのか。

 最大の理由は、出井伸之社長そしてCEO時代に脱ものづくりを目指したことではないか。中国などの追い上げで、電気製品のメーカーではもうからないと見た出井社長は、ソフト化をめざし、メーカー意識にどっぷりつかっていた技術屋の意識を変えることに力を注いだ。また、いくつかの工場を別会社に分離して生産受託会社に切り替えた。藤本隆宏東大教授のいう組み合わせ型か擦り合わせ型かの分け方でいえば、ソニーは組み合わせ型に属する生産形態だから、出井氏の経営方針は一概に間違いだったとは言えない。ちなみに、ホンダのつくる自動車は擦り合わせ型の製品である。

 しかし、ソニーは根っからのものづくり企業であり、出井氏の脱メーカー的な発想は多くの社員になかなか受け入れられなかった。また、ゲーム機などが売れたが、それがエレクトロニクス製品にとってかわり、ソニーの屋台骨を支えるところまではいかなかった。出井社長・CEO時代、技術屋はすっかりやる気を失った。液晶テレビが急速に普及し出した頃、ソニーはフラット型テレビに集中していて、液晶テレビへの移行が立ち遅れたが、それも、新しいものを開発するのに夢中になるはずの技術屋が元気をなくしていたからにほかならない。

 そして、出井会長兼CEOが後任に外国人のストリンガー氏を指名したのも、ソニー全体にとって大きな誤りだった。経営はそれ自体が専門的なスキルであり、どこの企業に行っても通用するといわれる。しかし、日本の会社であり、日本に開発および生産の拠点があるのに、トップは日本語ができず、日本の社員と全くコミュニケーションができない。それでうまく経営ができるはずがないのではないか。

 ソニーは日本の会社である。しかし、いまのソニーは会長・CEOが外国人で、重要な意思決定はストリンガー氏と彼の側近の米国人幹部によって行われている。日本の事情やエレクトロニクス部門に疎い彼らが会社全体の意思決定をしているのである。中鉢社長・COOは実体はエレクトロニクス部門の総責任者にすぎない。これでは、技術開発・生産を担うソニーの技術屋に元気がないのも当然だ。

 振り返れば、後任の社長に出井氏を選んだ大賀典雄氏は、もともとは別の人を後継者にし、自らは会長になろうとした。大賀氏が、会長だった盛田氏に名誉会長に就任してほしいと申し出たのに対し、盛田氏は自らが経団連会長になるつもりだったので、ソニーの会長にとどまると言い、大賀氏に副会長になるようにと言った。しかし、それに不満だった大賀氏は社長交代をやめて留任した。そして後任社長に予定していた副社長を系列会社の社長に出した。そして間もなく盛田氏が病に倒れた。それから何年かして、大賀氏が後任に選んだのが出井氏だった。社内では「成功体験のない人」として社長就任に反対する経営幹部がいたことも事実である。

 こうして振り返ると、盛田氏が会長を続けようとし、鼻っ柱の強い大賀氏がそれに反発したという経緯が、その後のソニーの運命を大きく左右したということもできる。

 ソニーとホンダとで大きく違う点の一つは、ソニーが経営のアメリカナイズを追求したことである。ソニーは米国の経営組織、会計、資金調達などで米国を真似してきた。したがって、その延長線でいえば、経営トップの座に外国人が座るのもおかしくない。ソニーを日本の企業だと受け止める私たちの認識のほうがおかしいのかもしれない。しかし、いまの経営からは、ホンダのような活力、創造性を感じないのは確かだ。

 ホンダもかつて一時、経営が不振に陥ったことがある。しかし、ソニーと違って超ワンマンを許さない社風だから、経営者の交代などで危機を突破した。新しいものに挑戦する企業風土をいまなお大切にしている。案外、そのあたりがソニーとホンダの差違の根源か。

 

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コメント

初めてコメントさせていただきます。


私もソニーとホンダは似た部分があったと思います。
両メーカーの経営側の事情についてはあまり詳しくありませんが過去の製品に対してのイメージは、

斬新な機能、デザインを持つものが多い。

今のソニーには、ブルーレイで頑張って欲しいところです。

投稿: | 2010年1月31日 (日) 22時40分

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