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2006年12月 3日 (日)

旭山動物園長はすごい人だ

 日本でいま最も人気のある動物園といえば、旭川市の旭山動物園だ。

 このほど「人間と動物との新しい触れ合い方を多彩に創出し、廃園の危機から十年あまりで「入園者数日本一」まで育て、新たな動物園のスタイルを創設すると共に、地方活性化の新しい可能性を提示した。」として菊池寛賞を受賞した。

 また、「生き生きとした動物本来の生態をありのままに見せる「行動展示」という手法を考案し‥‥」などとして、日経BPから小菅正夫園長が「日本イノベーター大賞」を受賞した。これらの受賞のため上京した小菅園長の会見を聞いた。

 「人間は人間以外の動物を馬鹿にしている。幼稚園児でも、ゴリラを見ると、「ゴンタのバカヤロー」という。ゴリラは悲しそうな顔をする。このように、人間は野生動物を尊敬していないが、彼らはすごい能力を持っている。そのすごさを知れば、人間は(絶滅のおそれのある野生生物を)残そうと努力するだろう。私たちは、人々に知ってもらうことで種の保存に貢献できればいいと思っている。」

 「従来、動物園では世話をする人が動物のうしろにいるから、動物は餌をくれたりする世話係のほうを見ている。つまりお客さんに背を向けていた。そこで、お客さんと動物の間に世話係がいるようにした。」

 「すべての動物が命を持っている。その「命を伝える動物園」をテーゼにやってきた。命を伝えるといっても、それは命の触れ合いからしか認識できない。そこで、こども牧場をつくり、抱いたり、触れ合ったりするようにした。」

 「動物は目的のない行動はしない。食べ物を求めるか、生殖のため異性を求めるか以外は寝ている。猛獣は生き物をとって食べるが、それは動物園ではタブーだ。そこで、ライオンやひょうなどが目の前で寝ているのを見てもらえるようにした。」

 「一つの命に、一つの環境(飼育場)を用意しなければいけない。虎とライオンとでは、まるで違う環境に置いてやらねばならない。旭山動物園では、命と、命を育む環境を皆さんに伝えたい。」

 「あざらしは地表ではおどおどしているが、水中では全く違う。また、彼らはものすごく好奇心が強い。だから、旭山では、あざらしが人間を見に行く。最近は人が多いのに飽きたらしく、そっけない。」

 「おおかみを新たに展示したい。北海道では1900年に絶滅した。酪農に役立たないとして人間が30年で絶滅させたからだ。しかし、おおかみは気持ちがこまやかで、家族愛、家族意識が強い。そうした本当の姿を知らせたい。いま、おおかみというと、悪いイメージばかりだが、それは西欧のイメージだ。日本ではもともと、いいイメージだった。稲作の日本では、おおかみが草食動物を食べてくれたからだ。」

 安田喜憲著『日本よ、森の環境国家たれ』によれば、「縄文時代以来の森の神々の中でもっとも強い神がオオカミだった。」、「日本のオオカミは、アンデス文明のジャガーと同じで、森の王であった。森の生態系の頂点に立ち、生態システムを維持してきた。」、しかし、「森を破壊する「家畜の文明」をもつ人々によって、オオカミは神の座から引きずり下ろされ、家畜を食い殺すもっとも憎むべき対象にされ、絶滅へと追い込まれていったのである。」

 小菅園長はそうした生態系と人間との関わりを根底に置いて、旭山動物園のありようを追求しているのである。二つの賞が表彰理由に挙げていない高次元の視点で運営されているのはすごいことである。

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