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2007年1月25日 (木)

「竹中平蔵大臣」5年間の苦闘に敬意

 小泉政権下、経済財政諮問会議が日本の構造改革をリードした。それを担ったのが竹中平蔵経済財政担当大臣だった。郵政民営化担当相などもやった。その竹中氏が書いた『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』(06年12月20日、日本経済新聞社)を読んだ。近来、これほど引き込まれたノンフィクションはない。

 大学教授からいきなり大臣に就任し、小泉首相の経済政策を一手に引き受けたような形で奮戦した竹中氏に対して、当初から、与党である自民党、霞が関の官僚、既得権益層のほとんどが批判的な姿勢だった。メディアも冷たかった。

 小泉首相もメディアに叩かれたが、竹中氏に対するメディアの攻撃ははるかに激しかった。それをものともせず、5年間フルに疾走した竹中氏の使命感と戦略、実行力はすごいのひとことに尽きる。凡百の政治家は彼の爪の垢を煎じて飲んだらいいと思うくらいだ。

 経済財政諮問会議を主宰する大臣として、竹中氏は予算案づくりなど経済政策の決定過程を大きく変えた。また、小泉首相がいのちをかけた郵政民営化実現を中心になって推進した。彼がかくあるべきだと考える経済政策を実行し、日本を変えようとした。当然、抵抗、反対する勢力が圧倒的に多い。その中で、われ行かんと、たじろがなかった。そのすさまじいエネルギーに驚嘆する。

 諮問会議のために、彼は独自に信頼できるスタッフで非公式な「チーム竹中」をつくり、予め政策に関する作戦会議を行い、そのうえで4人の民間議員と十分に事前の議論をし、意見を集約した。そうして十二分に準備を整えたうえで、本番の諮問会議に臨んだ。そこでは民間議員が改革の取り組みかたを示すペーパーを提示し、会議をリードするようにした。小泉首相には予め説明し、要所では首相の裁断を仰ぐようにした。出席している各省大臣は大抵は役所の代弁者にすぎないから、いざ議論となると民間議員たちにかなわない。

 普通の審議会方式だと、官僚は自分たちに都合がいいような文書をつくるので、改革は中途半端に終わる。郵政民営化にあたって、竹中氏は「政策については細部を官僚に任せることなくしっかりと制度設計をしなければ成果は挙げられない」、「戦略は細部に宿る」(139p)として、最初から最後まで官僚任せにしないようにした。そこはまさに改革を進める際のキーポイントである。道路公団改革などの失敗は官僚に事務局を任せたため、起こるべくして起きた。

  竹中流諮問会議のような政策決定のやりかたによって、いくつか画期的な変化が起きた。まず、官僚の縦割りの弊害を乗り越えて、経済に関するあらゆる政策を諮問会議が取り上げることができるようになった。また、予算、税制などの財政運営とマクロ経済の現状・展望とを結びつけて考えるようになった。さらに、時間軸を入れて政策を実現するための「工程表」づくりの導入である。

 諮問会議の議論の内容はその日の記者会見などで知ることができるが、詳しい議事要旨は3日ぐらいあとに公開される。大臣たちが参加する会議で、どんな問題がどのように議論されたかが明らかにされたのは当時、画期的だった。不勉強な大臣、役人の振り付け通りに発言する大臣は議事要旨を読むとわかる。この政策決定過程の情報公開は諮問会議の評価を高めた。そして、その後、各省の情報公開を促したのではないか。

 竹中氏は小泉首相がいて腕を振るうことができた。稀有のコンビが奇跡的に古い自民党を変えつつ、改革を進めた。このコンビがいなくなったいま、政府系金融機関の民営化実施などで、官僚の巻き返しがうかがえる。安倍内閣は構造改革を引き継ぐというが、真の改革を実現するため、本書から多くの教訓を汲み取ってほしいものである。 

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