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2007年2月27日 (火)

浜松市の行財政についての鈴木修スズキ会長の話

 「自治体経営シンポジウム」(26日)で、自動車会社、スズキの鈴木修会長が、浜松市行財政改革推進審議会会長としての体験を披露した。市の行財政の問題点として、「情報公開がされていない」、「振出金(赤字補填のこと)などという言葉を使い、日本語が通用しない」、「したがって市民の関心度は低い」、「企業会計方式でなくドンブリ勘定になっている」、「“特別”会計というから一般会計よりはるかに小規模かと思いきや同じぐらいだ」、「手当がいろいろあり、本来の仕事をしているだけなのに手当がつく」など、問題点をたくさん挙げていたが、その中で最も強烈だったのは、市職員に対する住居手当について市役所がどう説明したかのくだりだった。

 「住居手当は国に準拠しているという。では国はいくら払っているかと聞くと、月に2500円だという。それなら浜松市は2000円かと思い、いくらなのかと聞いた。なかなか答えなかったが、6200円だという。で、期間は、とたずねたら、国は5年間だという。では市はどうか、と聞いたら、定年までだという。国家公務員は月額×12ヵ月×5年で、総額15万円だ。市は25歳からもらうとして月額×12ヵ月×35年で260万円になる」。鈴木氏の語った数字等が事実、その通りなら、とんでもないことだ。

 06年3月13日に鈴木会長ら審議会が提出した「浜松市行財政改革に関する答申書」を読むと、鈴木氏の指摘を実感する。答申書に付された「委員からのコメント」で、鈴木氏は以下のようなことを書いている。

 「いったい市のやっていることの何割くらいを示してもらったのだろうか、という思いがあります。」

 「市の部長さんたちからも、何かを改革したいという提案はほとんど出てきませんでした。また、市の説明を聞いていると、「官から民へ」、「三位一体の改革」、「大阪市の問題」などの報道に、無関心か、聞く耳を持たないのか、とにかく時代の流れを感じているのだろうかという疑問を感じました。」

 「今回の行革審で浜松市の状態・税金の使われ方をつぶさに見て、どこかにもっと税金を大切に使っている国はないだろうか、いっそ家も会社も火星に移そうか、と思うほどのショックを受けました。これだけ民間企業が汗を流し、従業員を叱咤激励し、従業員もまたそれに応えて全力で仕事をして、その結果として血のにじむ思いで利益を出し、市へ税金を納めている。その税金がこんな使われ方をしているのでは、従業員にも本当に申し訳ないと強く感じました。」

 最近、浜松市は行政改革で非常に進んでいると評価されている。しかし、行革審の提案257項目に対して、浜松市は約9割を実施すると言ったが、「慎重に検討します」とか「次回、検討します」といった実際はやらないと同じものを除くと、実施は62%にとどまるそうだ。上記コメントに秘められた鈴木氏の怒りと絶望は、いまも消えていないように思われる。鈴木氏の鋭い目で見たら、ほかの自治体も大同小異ではないだろうか。

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2007年2月25日 (日)

株式上場の意味をとらえなおす

 日本生命が保険金の支払い漏れの点検に約4千人追加投入すると23日発表した。それまで約1200人が作業にあたっていたとのこと。4千人というのは内勤社員のおよそ4割に相当するそうだから、通常業務は後回しにしてもという態勢である。同社にとっては非常事態ということだ。

 金融庁が4月13日までに報告するよう生保各社に命令を発したのに対応した措置。生保、損保の業界のいずれも、顧客第一というよりも顧客獲得第一という、従来の会社本位のビジネスのありかたを根本から見直すよう政府から迫られているということだろう。社会保険庁がひどかったのと共通するのは、保険が一般の人々にわかりにくいという点である。いい加減な仕事で加入者に損失をもたらしても、露顕しにくい。

 一方、金融界には、金融庁が過剰に規制をしているという批判がある。銀行や保険会社だけでなく、株式を公開している企業の情報開示等に対しても、金融庁の一方的な判断を押し付けているともいう。その当否はさておき、政府の厳しい規制で、経営に大きなコスト負担がかかるのは間違いない。ある大手損保によると、「ものすごくコストがかかるようになる。それはお客さんの負担になる」と指摘している。

 日本版SOX法といわれる、金融商品取引法(06年6月成立)と会社法(05年6月成立)とにより、上場企業等は財務報告の適正化と、それを保証する経営の内部統制(ガバナンス)を確立しなければならない。銀行だと、さらに不正マネーをきちんとチェックできる内部システムを整備しなければならない。

 こうしたガバナンスを徹底するとなると、人、システム等に巨額の投資や経費がかかる。“言い出しっぺ”とも言うべき米国では、SOX(サーベンス・オックスレイ)法、即ち企業改革法の導入で、米国の企業のコストがかなり高くなって国際競争力が低下したという反省が最近生じている。

 日本の企業は現在、日本版SOX法を遵守するために沢山の人とカネを投じている。そして、米国内での反省機運と似た、行き過ぎへの不満が聞こえてくる。

 すでに、一部でひそかにささやかれているのは、「株式上場はしないほうがいいのではないか」という意見だ。昨年あたりから、MBO(経営者が株式を取得して非公開会社になる)などのやりかたで非上場会社化する企業がちらほら出てきたのも、そうした考え方が影響しているのではないか。企業買収の対象にならないですむように、という思惑で非上場化したところもあるだろう。

 株式公開のメリットはいろいろいわれてきた。出光興産のように長年、非公開の会社が株式上場(06年10月)に踏み切った例もある。格付けが「投機的水準」に下がり、借り入れが厳しくなったからだ。しかし、サントリー、竹中工務店などを見ていると、公開と非公開のどちらがいいか、一概に言えない。ただ、公開のメリット、デメリットと非公開のメリット、デメリットを比べたとき、日本型経営の企業が公開へと踏み切るインセンティブが以前ほどではなくなったように思える。

 2年以上前のことだが、金融界のあるトップは「上場していても、資金調達は株主の反対で思うようにできない。これでは上場している意味がない。さりとて株主が何万人と多数だから、上場廃止することもできない」と語ったことがある。グローバル化した今日、個々の企業も、株式公開の意味を多面的にとらえなおすことが必要ではなかろうか。 

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2007年2月22日 (木)

みすず監査法人の解体

 4大監査法人のうちのみすず監査法人(旧中央青山)が解体の道を歩むことになった。前身の監査法人中央会計事務所に初めて取材に行ったのは1980年頃だ。当時から大手の一角で、中瀬宏通、村山徳五郎等の理事長は日本公認会計士協会の会長を務めた。1990年代末に表面化した監査先、山一證券の“飛ばし”を見逃した“前科”があるが、当時の業界の「くさいものにはふたをする」の風潮のもと、うやむやにされた。

 2000年に外資系の青山監査法人と合併して中央青山監査法人となり、磐石の体制を確立したかと思いきや、カネボウの粉飾決算に関わったことが明らかになり、さらに、最近、日興コーディアルグループの不正会計も見逃したということで、業務の存続が困難になった。

 上場会社等の会計監査は、外部の第三者である公認会計士ないしはその集団である監査法人が担う。しかし、どこの会計士・監査法人に、この外部監査を依頼するかを決めるのは当の上場会社等である。したがって、杓子定規に言うと、会計士・監査法人は監査先の企業、つまりクライアントから嫌われ、監査契約を打ち切られてしまっても平気だ、という覚悟がないと、公正な監査意見を書けない。

 現実には、会計士・監査法人が会社側に説得や指導をして適正な決算書類をつくるようにもっていく。それがどうしてもうまくいかないとき、会計士・監査法人側は監査を下りる(契約をやめる)か、それとも、監査契約を維持するため、クライアントの無理な要求を容認するか、の選択を迫られる。

 今日では、監査法人の多くは、法人の中に別途設けた審査部門が、担当者から監査の経過を聞き、監査意見が妥当か否かチェックするようにしている。したがって、クライアントが無理なことを言ったとしても、まず審査部門が認めない。それをクライアント側に伝えて、無理な注文を引っ込めてもらう。

 ところが、会計士・監査法人の中には、会計士とクライアントとの関係が長年、固定されてきているところがある。即ち、会計士事務所が集まって監査法人をつくったあとも、○○先生が△△会社を会計監査するという関係が続いているということである。見掛けは大きな監査法人であっても、その中は多数の会計士事務所が割拠しているというわけだ。中央青山のうちの中央の系統は大先生がそれぞれ自分の縄張りを維持していたようだ。そこにクライアントの無理な要求を受け入れる素地があったとみられる。

 ところで、日本の企業が会計監査で支払う料金は米国などに比べると半分以下だとされる。監査の時間も短い。概して、日本の企業は監査費用を抑えようとする。それもこれも、企業が外部の第三者による会計監査にあまり価値を認めていないからである。そうした事情があるから、会計士・監査法人はクライアントと対等の立場になかなかなれない。みすず監査法人の解体をもたらした甘い外部監査の連発には、こうした日本的な事情も微妙に影響したのではないか。

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2007年2月16日 (金)

津島自民党税調会長の話

 2月14日に、自由民主党の税制調査会長である津島雄二氏の会見を聞いた。国家財政の中で社会保障が圧倒的に大きなウエートを占めるようになった今日、「税制だけとって議論するのは全体を見失う」とし、国民が求める給付と、それを支える負担とについて、与野党で徹底的に議論すべきだと語った。

 一党一派が手柄にすべきものでもないし、責任を負うものでもない。国民合意を達成することに尽きる。そう言う津島氏は、北欧を例にあげ、与野党が一緒になって年金、医療などの制度をつくりあげ、政権交代しても制度が変わることがないようにしたいとの見解を表明した。

 また、津島氏は地方の法人二税(法人事業税、法人住民税)が地域格差を生んでいるのではないかと述べた。グローバル化の進展により、企業が海外事業で挙げた利益が本店に上乗せになる結果、本店が集まる東京などの大都市に税源が偏るという。世界的に法人税率引き下げの流れにあるが、同氏によれば、日本では、法人税率を下げたとき、いちばん得をするのは外国でかせいでいる企業だ、という。日本で従業員をたくさん抱えている企業は、年金の企業負担分が重く、法人税率下げのメリットは小さいとのこと。

 津島氏の見解はおおむねバランスがとれているが、歳出カットについては、「ムダはいかなる場合もはぶかねばならない。しかし、一方で、隠れた財政需要がある。ムダをなくせば世の中がよくなるというには、長く政治にたずさわりすぎた」と消極的な発言。

 07年度の国家予算(案)は歳出切り込みが足りないと識者から批判を受けているが、津島氏の発言はそれと平仄が合う。

 去る1月22日に開催された政府税制調査会。香西泰氏が新会長に選任されたときだが、猪瀬直樹委員が国立新美術館を槍玉にあげ、「本当に歳出・歳入一体改革なのか、本当に歳出カットをしているのか」と発言している。国立新美術館は建設費350億円で、敷地が1万坪あり、時価で売れば、1千億円を下らないという。そこで、猪瀬氏は、国有財産をきちんと売却していくべきだと税調でも強調していいのではないか、と述べている。

 科学技術研究予算がかつての公共事業予算のように放漫に使われているなど、財政のムダ遣いは随所にある。自民党は長い間、政権の座にあったから、歳出切り込みがどうしても甘い。津島氏は消費税を社会保障目的税化することに賛成しているが、それも財政規律がゆるむ危険をはらむ。

 これでは『日本は破産する』という本が出て当然かもしれない。 

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2007年2月14日 (水)

時間外労働と賃金割増率を云々する前に考えるべきこと

 「家庭のだんらん」考と題して2月10日に書いた。その後、労働問題にくわしい人たちの話を聞いて、時間外労働に関する大事な視点を教わった。

 現在の労働基準法は、第32条で、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」、「1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」と規定している。

 法の冒頭の第1条において「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすものでなければならない」とはっきり言っているのを踏まえると、第32条の労働時間の規定に反して労働者に残業させるのは違法だと理解しておかしくない。

 ところが、第36条には、使用者が労働者の過半数を代表する者と書面で協定し、行政官庁に届けた場合には、労働時間の延長や休日労働をさせることができる、ということになっている。いわゆる三六(サブロク)協定は週40時間、1日8時間という第32条の規制を形骸化して、野放図に時間外労働・休日労働を認めているのである。

 もともと日本でもヨーロッパの規制の考え方を受けて、1日8時間以下という1日単位の労働時間規制だけだった。それが1988年の法改正で週40時間以下という規制が加わったため、労働基準監督行政は1日8時間以下という規制を問題にしなくなったという。いま割り増し率引き上げの法改正の議論で、月80時間超だと50%増し、などという3段階の改正案が出ているのも、そうした88年法改正以後の発想を引きずっているからだという。

 ヨーロッパでは、1日単位の規制であり、1日の労働は10時間超は絶対だめだというやりかただが、日本だと、ある日に何時間も残業しても、問題にされない。また、我が国では深夜まで働き、翌日朝、普段通り出勤することが珍しくない。しかし、ヨーロッパだと、休息時間の概念があり、次の勤務との間に少なくとも11時間の休息が絶対に必要だという。

 時間外労働には割り増しをつける。ヨーロッパではペナルティ(罰金ないし反則金)というとらえかたである。それが日本では慰謝料といういうことになる。

 どっちの考え方がいまの日本にふさわしいか。経済的・物質的な豊かさのひずみがあちこちに表れて国の将来が危ぶまれている今日、ワーク・ライフ・バランスを家庭のだんらん重視に変えるべきではないかと考える。春闘が本番入りしたが、賃上げと並行して、三六協定を根本から再検討することを望む。 

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2007年2月12日 (月)

科学技術予算バブル

 2月12日付け日本経済新聞に「危ういぞ 科学技術立国」②が載っている。それによると、政府が財政支出を軒並み抑制している中で、科学技術予算は例外扱いされ、年間3兆5千億円の水準を維持している。「しかし使い道に目を移すとムダ遣い指摘される公共事業にも似たバラマキの実態が浮かぶ」と指摘している。

 科学技術予算バブルとでも評したらいいか。私も、大学の理工系の教授らから、科学技術研究予算に問題があると聞いたことがある。第一に、使い切れないほど予算をもらい、ムダ遣いしているような事例があること。過去に大きな業績をあげた研究者に、そういう例があるようだ。第二に、短い期間で研究開発の成果を出さなければならないので、成果の見通しがつきやすいテーマに資金が配分されること。第三に、やたら装置などにカネのかかる研究開発に資金が出ること。

 研究開発のテーマの審査にあたるのはいわゆる大家だ。しかし、彼らも、まだ存在していない未来の画期的な技術が誰の、どんな研究開発から生み出されるかは予測できない。それにもかかわらず、予算を配分しなければならないとなると、審査員も、その背後にいる政府の担当者も、安全パイを振りたがる。いまよりも大掛かりな装置にしたら、成果があがるだろうとか、実績のあるあの先生なら、成果が期待できるだろうとか。

 しかし、そうしたロー・リスクの姿勢は結局はロー・リターンしか生まないのではないか。科学技術立国たらんとするなら、ハイ・リターンをもめざすべきだと思う。それには、まだ、際立った業績のない若い研究者が挑戦する画期的な研究開発テーマにも資金を優先的に配分するようにすべきだ。カネ食い虫の装置偏重型テーマはほどほどにして、文科系の学問分野にも広く投網をかけるような資金配分に切り替えることも検討すべきだろう。

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2007年2月10日 (土)

「家庭のだんらん」考

 はるか20年ほど前のことだが、初めてオーストラリアに行ったとき、驚いたことがある。記憶がいささか怪しくなっているが、第一に、太陽が南を通るのでなく、北を通ること。第二に、ホテルなどのサービス業を除き、普通の会社などは土曜、日曜は完全にお休み。週35時間だったか、日本より労働時間は少なく、平日の時間外労働の割り増し率は50%であり、土日は100%だったこと。

 売り上げに占める人件費の割合の大小によって事情は異なるだろうが、概して、割り増し賃金率が高いと、企業は時間外労働までさせて売り上げを増やそうとは考えない。それに、労働は苦役という発想が強い社会だから、長時間労働や週末の労働は容易に受け入れがたい。それらが土日休み、時間外の高い割り増し賃金率に表れていた。

 当時の私は、普段、遅くまで仕事をし、たまには週末も出社していた。そうした労働状況を仕事柄、やむをえないと思っていた。しかし、オーストラリアに行ってみて、はるかに生活重視、家庭重視の社会システムであることを知り、衝撃を受けた。高い割り増し賃金率などを日本も導入すれば、もっと家庭を大事にする社会になるのではないか、と考えたりした。

 いま、政府は労働法制を改めようとしている。ホワイトカラー・イグゼンプションを棚上げして、時間外割り増し率を引き上げるという方針に賛成だ。ただし、西欧などにならって、割り増し率を50%に引き上げる(現在の25%から何年かごとに段階的に引き上げ、10年ぐらいかけて最終的に50%にする)こと、月間の時間外労働時間数いかんにかかわらず割り増し率を一律に適用すること、圧倒的に人数が多い中小企業も同じ扱いにすること、を提案する。

 10年前、20年前とくらべ、労働密度が濃くなっている。仕事時間中に、のんびりする余裕がなくなっている。それだけに、時間外労働それ自体が身体や心に及ぼす悪影響はかつてよりも格段にひどくなっている。したがって、政府が時間外労働をゼロにするという目標を立ててもおかしくはない。仕事が自己実現だとか、趣味だとか、いう人は対象外だが。

 家族のだんらんは家庭の基本だと思う。平日に何日か、家族が一緒に食事し、おしゃべりできると、子供は健全に育ちやすい。政府や国会では、少子化対策などと銘打って対策があれこれ議論されているが、家族のだんらんが人々の暮らしの基本であることを踏まえ、それを可能にする施策を考えたらどうか。労働組合も時間外労働をなくす闘争に切り替えたらどうか。

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2007年2月 6日 (火)

『小泉官邸秘録』と小泉前首相

 前内閣総理大臣の小泉純一郎氏が1992年に郵政大臣に就任したとき、郵政省の官僚は小泉大臣を徹底的に干した。「郵政事業の民営化などと、突拍子もないことを言うなんて、どうかしている」と思ったのだろう。当時、郵政省担当だった新聞記者によれば、重要案件を大臣に諮らずに事務次官以下で勝手に処理していたという。

 当時、まだ官僚支配で、おおむね大臣はどこでもお飾りだと、新聞記者のほうも思っていた。加えて、小泉氏は変わり者とみられていたから、記者はほとんど大臣取材には行かなかったようだ。おそらく、小泉郵政大臣はひまをもてあますこともなく、大臣室で趣味などに没頭していたのではないか、という。

 たかだか十数年前、官僚も新聞記者も、郵政民営化を唱える小泉氏を変人扱いしていた。彼らの誰も、小泉氏を将来、総理大臣になる人だなんて思わなかった。だが、郵便貯金などの「入口」、特殊法人などの「出口」、その間を資金でつなぐ財政投融資制度が、国民のカネを壮大に無駄遣いする官の仕組みであること、したがって、それをやめて、民で効率的、効果的に資金を活用する仕組みに改める必要があることは、今日ではかなりの国民が理解するところとなっている。

 小泉内閣の5年5ヵ月は、振り返ってみると、構造改革の追求であり、抵抗勢力との闘いであった。小泉氏の秘書である飯島勲氏が著した『小泉官邸秘録』(2006年12月、日本経済新聞社)を読んでそう思う。

 小泉改革はぶちあげるだけで、あとは人任せで、成果が乏しいと批判された。確かに、問題提起はすばらしいのだが、結果は竜頭蛇尾に終わることが少なからずあった。例えば、道路公団改革とか道路特定財源改革などは所管の国土交通省の官僚や族議員などによって見事に骨抜きにされた。郵政改革にしても、中途半端な内容である。

 行政の権益に手を突っ込むことにもなる行財政改革を行うにあたって、小泉内閣は改革案を行政の人間の手を借りてつくらざるをえなかった。それだと、問題提起はよくても、細部で官僚の利害を反映したものになり、結果は妥協の産物になりやすい。

 一方、小泉改革は、政策の決定過程を国民に見えるものにした。何が問題か、どう改革しようとしているか、それに誰がどういう理由で反対しているか、対案は何か、そして、どのような議論が行われ、どんな結論にいたったか、がすぐに公開される。これはおそらく、小泉改革の最大の成果だろう。その意義は極めて大きい。

 同書を読んで、自民党によく、このような政治家がいたものだという感慨にとらわれた。小泉氏は保守政治家としては想像できないほど徹底して身綺麗である。また、私心を捨て、信念を貫く孤高の人でもある。座右の銘は「信なくば立たず」だという。 

 それで思い出すのは、かつて、経団連会長を務めた土光敏夫氏(東芝社長、会長などを歴任)のことである。清廉潔白な人柄ゆえに、1980年代、第2次臨時行政調査会の会長にかつぎ出され、国鉄などの民営化に貢献した。小泉氏にせよ、土光氏にせよ、「掃き溜めに鶴」である。日本人はこういう人が無条件で好きだ。

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2007年2月 2日 (金)

東京都の07年度予算案

 東京都が07年度(平成19年度)予算案をまとめた。「財政の健全化に取り組んできた8年間の、まさに集大成となる予算」(石原慎太郎知事)だという。

 一般会計の歳入・歳出は06年度当初予算比7.0%増の6兆6020億円。歳入では、都税がなんと17.8%増の5兆3030億円。税源移譲に伴う増収2974億円を除いても、11.2%増と2ケタの伸びだ。増収の主なものは法人二税と個人都民税(区市町村が徴収)で、景気の回復が税収に如実に表れている。都債は21.4%減の2799億円。

 歳出のほうは公債費や特別区財政調整会計繰出金などを除く一般歳出が前年度当初比3.7%増の4兆3366億円。福祉保健費21.7%増、都市整備費5.4%増、土木費2.9%増など、いずれも予算増で、公債費は25.9%増の6281億円である。

 一方、特別会計(17会計)は4兆4020億円で、前年度当初比2.0%増、公営企業会計(11会計)は2兆679億円で同6.5%増である。

 06年度補正予算が一般会計で4649億円、特別会計で3842億円、公営企業会計で58億円プラスされている。06年度補正後に比べれば、一般会計、特別会計とも07年度はマイナスの格好だ。07年度も補正予算を組む前提で当初予算がまとめられている。

 07年度中に減債基金積み立て不足を解消し、“隠れ借金”はなくなるという。また、スポーツ・文化振興交流基金など3つの基金を新設し、基金残高を2639億円増やす。こうした財政基盤の強化は、職員定数削減などの経営改善努力による面もあるが、大きな要因は税収増である。都は一般歳出を全面的に見直して、ぎりぎり切り込むというところまで厳しい財政運営はしてこないですんだと言えよう。

 しかし、一般会計はさておき、特別会計や公営企業会計に累積損失や含み損失がないのか、都の予算案を読んでもわからない。一般会計でも、過密都市、東京の大震災への備えがほとんどない。住宅、街づくり、道路・交通などを考えると、特別区もだが、おそろしいほどお粗末である。オリンピックよりも、なすべき大きな課題が残っているのである。

 都の借金(一般会計)は07年度末に6兆7634億円の見込み。国(一般会計547兆円)や地方財政計画(199兆円)に比べれば、財政状況ははるかによい。だから、国や他の自治体からは「こっちに税収を多く配分する仕組みに改めるべきだ」という声が出てくる。国と地方の財政配分、地方間での財政配分など、見直すべき点は多々ある。しかし、都の相対的な財政優位は、多分に都民の住生活や安全・安心などを犠牲にして成立しているように思われる。

 ついでに言うと、07年度の都の一般歳出のうち、給与関係費は4割弱の1兆7059億円を占める。退職手当だけで24.9%増の2072億円になる。これを除いた分だと0.6%減になるが、いわゆる人件費が重すぎることには変わりがない。人減らしによる都の行政簡素化は今後も必要不可欠である。 

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