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2007年2月 6日 (火)

『小泉官邸秘録』と小泉前首相

 前内閣総理大臣の小泉純一郎氏が1992年に郵政大臣に就任したとき、郵政省の官僚は小泉大臣を徹底的に干した。「郵政事業の民営化などと、突拍子もないことを言うなんて、どうかしている」と思ったのだろう。当時、郵政省担当だった新聞記者によれば、重要案件を大臣に諮らずに事務次官以下で勝手に処理していたという。

 当時、まだ官僚支配で、おおむね大臣はどこでもお飾りだと、新聞記者のほうも思っていた。加えて、小泉氏は変わり者とみられていたから、記者はほとんど大臣取材には行かなかったようだ。おそらく、小泉郵政大臣はひまをもてあますこともなく、大臣室で趣味などに没頭していたのではないか、という。

 たかだか十数年前、官僚も新聞記者も、郵政民営化を唱える小泉氏を変人扱いしていた。彼らの誰も、小泉氏を将来、総理大臣になる人だなんて思わなかった。だが、郵便貯金などの「入口」、特殊法人などの「出口」、その間を資金でつなぐ財政投融資制度が、国民のカネを壮大に無駄遣いする官の仕組みであること、したがって、それをやめて、民で効率的、効果的に資金を活用する仕組みに改める必要があることは、今日ではかなりの国民が理解するところとなっている。

 小泉内閣の5年5ヵ月は、振り返ってみると、構造改革の追求であり、抵抗勢力との闘いであった。小泉氏の秘書である飯島勲氏が著した『小泉官邸秘録』(2006年12月、日本経済新聞社)を読んでそう思う。

 小泉改革はぶちあげるだけで、あとは人任せで、成果が乏しいと批判された。確かに、問題提起はすばらしいのだが、結果は竜頭蛇尾に終わることが少なからずあった。例えば、道路公団改革とか道路特定財源改革などは所管の国土交通省の官僚や族議員などによって見事に骨抜きにされた。郵政改革にしても、中途半端な内容である。

 行政の権益に手を突っ込むことにもなる行財政改革を行うにあたって、小泉内閣は改革案を行政の人間の手を借りてつくらざるをえなかった。それだと、問題提起はよくても、細部で官僚の利害を反映したものになり、結果は妥協の産物になりやすい。

 一方、小泉改革は、政策の決定過程を国民に見えるものにした。何が問題か、どう改革しようとしているか、それに誰がどういう理由で反対しているか、対案は何か、そして、どのような議論が行われ、どんな結論にいたったか、がすぐに公開される。これはおそらく、小泉改革の最大の成果だろう。その意義は極めて大きい。

 同書を読んで、自民党によく、このような政治家がいたものだという感慨にとらわれた。小泉氏は保守政治家としては想像できないほど徹底して身綺麗である。また、私心を捨て、信念を貫く孤高の人でもある。座右の銘は「信なくば立たず」だという。 

 それで思い出すのは、かつて、経団連会長を務めた土光敏夫氏(東芝社長、会長などを歴任)のことである。清廉潔白な人柄ゆえに、1980年代、第2次臨時行政調査会の会長にかつぎ出され、国鉄などの民営化に貢献した。小泉氏にせよ、土光氏にせよ、「掃き溜めに鶴」である。日本人はこういう人が無条件で好きだ。

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