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2007年2月25日 (日)

株式上場の意味をとらえなおす

 日本生命が保険金の支払い漏れの点検に約4千人追加投入すると23日発表した。それまで約1200人が作業にあたっていたとのこと。4千人というのは内勤社員のおよそ4割に相当するそうだから、通常業務は後回しにしてもという態勢である。同社にとっては非常事態ということだ。

 金融庁が4月13日までに報告するよう生保各社に命令を発したのに対応した措置。生保、損保の業界のいずれも、顧客第一というよりも顧客獲得第一という、従来の会社本位のビジネスのありかたを根本から見直すよう政府から迫られているということだろう。社会保険庁がひどかったのと共通するのは、保険が一般の人々にわかりにくいという点である。いい加減な仕事で加入者に損失をもたらしても、露顕しにくい。

 一方、金融界には、金融庁が過剰に規制をしているという批判がある。銀行や保険会社だけでなく、株式を公開している企業の情報開示等に対しても、金融庁の一方的な判断を押し付けているともいう。その当否はさておき、政府の厳しい規制で、経営に大きなコスト負担がかかるのは間違いない。ある大手損保によると、「ものすごくコストがかかるようになる。それはお客さんの負担になる」と指摘している。

 日本版SOX法といわれる、金融商品取引法(06年6月成立)と会社法(05年6月成立)とにより、上場企業等は財務報告の適正化と、それを保証する経営の内部統制(ガバナンス)を確立しなければならない。銀行だと、さらに不正マネーをきちんとチェックできる内部システムを整備しなければならない。

 こうしたガバナンスを徹底するとなると、人、システム等に巨額の投資や経費がかかる。“言い出しっぺ”とも言うべき米国では、SOX(サーベンス・オックスレイ)法、即ち企業改革法の導入で、米国の企業のコストがかなり高くなって国際競争力が低下したという反省が最近生じている。

 日本の企業は現在、日本版SOX法を遵守するために沢山の人とカネを投じている。そして、米国内での反省機運と似た、行き過ぎへの不満が聞こえてくる。

 すでに、一部でひそかにささやかれているのは、「株式上場はしないほうがいいのではないか」という意見だ。昨年あたりから、MBO(経営者が株式を取得して非公開会社になる)などのやりかたで非上場会社化する企業がちらほら出てきたのも、そうした考え方が影響しているのではないか。企業買収の対象にならないですむように、という思惑で非上場化したところもあるだろう。

 株式公開のメリットはいろいろいわれてきた。出光興産のように長年、非公開の会社が株式上場(06年10月)に踏み切った例もある。格付けが「投機的水準」に下がり、借り入れが厳しくなったからだ。しかし、サントリー、竹中工務店などを見ていると、公開と非公開のどちらがいいか、一概に言えない。ただ、公開のメリット、デメリットと非公開のメリット、デメリットを比べたとき、日本型経営の企業が公開へと踏み切るインセンティブが以前ほどではなくなったように思える。

 2年以上前のことだが、金融界のあるトップは「上場していても、資金調達は株主の反対で思うようにできない。これでは上場している意味がない。さりとて株主が何万人と多数だから、上場廃止することもできない」と語ったことがある。グローバル化した今日、個々の企業も、株式公開の意味を多面的にとらえなおすことが必要ではなかろうか。 

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