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2007年4月14日 (土)

医師不足への日本医師会の取り組み

 地方の病院における医師不足、なかんずく産科、小児科の医師不足が深刻な問題となっている。新しい臨床研修制度の導入や、医療過誤訴訟による医師への行き過ぎた責任追及などが直接のきっかけだろうが、大都市では多すぎるぐらい医師がいるのに、特定地域や特定の科における医師不足を放置していたら、住民はひどい目にあう。放置しておけば、都市と地方の格差とか、少子高齢化とか、といった問題に拍車をかける。

 どうしたらよいのか。日本医師会の地域医療対策委員会(委員長は愛媛県医師会長)が3月にまとめた中間報告書「医師確保に関する喫緊の対応」はこの問題を考えるうえで参考になる。ちなみに、委員会のメンバーのほとんどが各地の医師会の役員。そうでないのは国立保健医療科学院院長、読売新聞記者の2人だけ。

 過去の政府の対策を振り返り、今後とるべき対策を短期的、長期的の両面からまとめている。そして、「おわりに」のところで、報告書の「処方箋」は「即効的効果のある特効薬とはなりえない」「対策が机上における計画通りに動くことは稀である」とも正直に書いている。そうだろうと思う。ただ、長年の財政的見地からの医療費圧縮がそもそもの原因であり、医師や国民は厚生労働省の政策の積み重ねの結果を見ているに過ぎないという指摘は、医師会というか、医師自身の責任を回避しているのではないか。

 かねて指摘されている通り、日本の医療制度は国民皆保険制度であることを誇ってもいい。しかし、医療制度の各論に入ると、日本医師会が大きな政治的圧力を行使してきたことによる歪みが大きい。その一つは、もっぱら開業医の利益になるようにしてきたことだ。いま起きている現象の原因は多様だが、開業医本位の医療制度がもたらした弊害でもある。

 小松秀樹著『医療崩壊』(06年5月、朝日新聞社)は「立ち去り型サボタージュ」とは何か、という副題が付いている警醒の書である。メディアの報道のありかた、警察介入の問題等々を鋭く追及しているが、「安全とコスト」と題する章で「現在、勤務医は過酷な労働と安心・安全願望の攻撃を受けて、病院診療に絶望している。絶望した勤務医の逃げ場が、中小病院であり、最終的には個人開業である。」と指摘。同時に、「少なくとも、私の知人の勤務医の多くは、日本医師会は開業医の利益代表として政治活動していると考えている。」、「社会からアンフェアだとみなされかねない状況を、あえて放置している団体であると思っている。」とも言い切っている。

 日本医師会の報告書を読む限り、いまの深刻な状況を打破するという当事者の責任や自覚が薄いように思える。誰でもが医療行為をやれるわけではない。医師の国家資格を保有している人しか、医師のいない地域や病院に行って医療にあたることはできない。だから、医師がまず具体的な行動を起こすのが当たり前ではないか。

 「国境なき医師団」とか、医療を受けられない途上国の人々を救うボランティアがあるように、日本の中でも、医師会が音頭をとって医療真空地帯に医師をボランティアとして派遣するぐらいの活動を起こしてほしいものだ。そこまでやれば、政治が目覚め、本気に対策を立てる。厚生労働省は、政治にきわめて弱いし、政治は医師会に弱い、という構造を踏まえると、まず、医師会が自らの社会的責務を自覚することが第一だ。そうなれば、自分たちの利益しか眼中に無い圧力団体という日本医師会へのイメージが変わるだろう。

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