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2007年4月21日 (土)

金融・資本市場WGの意欲的な第一次報告

 経済財政諮問会議のグローバル化改革専門調査会金融・資本市場ワーキング・グループが、20日、第一次報告書「真に競争力のある金融・資本市場の確立に向けて」を発表した。

 国際金融センターはロンドン市場に代表される英国と、ニューヨーク市場に代表される米国の二つが圧倒的に強い。バブルの最中まではこの二者に対抗していた東京市場に代表される日本はその後、金融分野で見る影もないほど落ちぶれた。しかし、日本は、急成長を続けるアジアの一角にあって、1500兆円の家計金融資産を持ち、製造業は依然、強い競争力を持つなど、有力な国際金融センターになりうる要素を備えている。

 もし、ロンドン、ニューヨークに匹敵する金融市場を日本に築くことができれば、金融ビジネスが発展し、高い報酬を得る雇用が多数生み出されたり、国民の金融資産の運用成果を高めたりすることが期待できよう。

 こうした問題意識のもとにまとめられた報告書を読むと、東京市場をフリー、フェア、グローバルおよび自由と規律のある市場にしようと提案している。即ち、上村達男座長(早稲田大学法学学術院長)がかねて唱えている公開会社法の制定や証券取引等監視委員会を米国のSEC(証券取引委員会)のように独立性を高め、準司法的機能を持たせるべきだ、といった改革が盛り込まれているほか、証券取引所の持ち株会社化を踏まえて、商品取引所をその傘下に入れるとか、銀行業務と証券業務の兼業を禁止している銀証分離の業規制を見直すなどといった大胆な内容が盛られている。

 日本の官庁は自分のテリトリー(領分)を守るという発想でこり固まっている。もちろん、それは権限を守ろうとすることであり、天下り先を保持し続けるということでもある。だから、例えば、経済産業省と農林水産省は商品先物の分野(工業品の先物取引は経済産業省が、農産品の先物取引は農林水産省が所管)を、金融の分野(金融庁が所管)と一緒に法規制するのを拒む。 そうした時代に合わない規制が企業家精神の発揮を妨げてきた。だから、東京市場を世界の三大金融センターの一つに育てるには、この報告書に書いてあるぐらいの改革は必要だろう。だから、その趣旨にはおおむね賛成だ。

 ただ、一つだけ疑問がある。銀証分離の見直しを進めることが望ましいという指摘についてだ。銀行業務と証券業務との間にファイアウオール(隔壁)を置くのは効率性だけで言えば、ないほうがいいが、他方、顧客の利益を守る観点からはどうなのか。報告書からは、その点を十分に吟味したとは読み取れない。

 日本の大手銀行は、個人の預金者などに対するサービス意識に乏しい。だから、証券業務を兼業できるとなったら、顧客の財産を守る、増やすことよりも株式、投資信託などを売りつけて手数料をかせぐ対象としか考えないのではないか。

 日本の銀行はバブル崩壊後の経営悪化で海外業務を大幅に縮小し、いまでは、図体がでかいローカルな企業にすぎない。しかも、最先端の金融商品の開発力も弱く、業務内容は間接金融の預金・貸付中心で、旧大蔵省の護送船団行政のころとあまり違わない。そうした危機的な実態であることを当の銀行が認識していないのである。

 だから、銀証分離の見直しをすれば、資本規模の大きい銀行が証券会社を傘下に入れるという結果を招くだけだ。リスク・リターンを商売にする証券業務を、銀行の人間が管理することになると、証券業務が伸びないだろう。結果的に、日本の証券会社が消えていくことになるだけだ。

 ともあれ、安倍首相がこの第一次報告書をどこまで骨太の方針に取り込むか注目しよう。 

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