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2007年4月20日 (金)

人気の職種に異変?

 公認会計士の世界では、金融など高収入が得られるビジネス分野へ転職する会計士が増えているようだ。粉飾などを見逃した会計士が処罰されたり、監査にあたった監査法人が業務停止処分を受けたりしたうえ、みすず監査法人が解体(2月22日のブログで取り上げた)に追い込まれた。それに加えて、企業の外部監査の強化などで、会計士の社会的責任が大きくなった。だが、そうした負担強化のわりに、監査法人で働く会計士の収入が増えないせいらしい。

 2、3年前までは、会計士の業務分野が拡大するのに伴って、会計士協会の幹部は会計士の社会的地位が上がると喜んでいた。しかし、いまや、上場会社などの会計監査などに必要な会計士が確保できるか心配される事態になっている。

 こうした動きは、仕事の中身やリスクと、それに見合った報酬という観点でとらえることができる。即ち、監査法人に所属する会計士の報酬は社会の平均に比べ相当高いけれども、企業の不正経理を防ぐ役割を従来よりはるかに厳しく求められるようになり、会計士の業務負担とリスクは高まっている。いままでいい加減に仕事してきたわけではないが、リスクなどが大きくなったという目でみると、リスクなどに比べて報酬がもっと高い仕事がよそにある。というわけで、会計士の“脱”会計監査が始まったのである。

 地方における医師不足、特に産科、小児科の医師不足が深刻。これらも、過酷な労働条件や、医療過誤ですぐ訴えられるリスクが高くなっているせいだ。地方病院の勤務医の収入はかなり高いが、それよりも、開業医になるほうが労働条件は楽だし、収入も概して高い。仕事の中身やリスクと、報酬との関係が勤務医と開業医とで違い過ぎるのである。ちなみに、国家試験で資格を得る医師については、義務教育の教師と同様、インセンティブを与えるなり、義務付けるなりして、僻地などに赴任させる仕組みの導入も考えられる。

 小中学校の教員の卵を育成する各地の教育大学、学芸大学などの入学志願者が減っている。以前から、景気がいいと教員志望が減るという傾向があったが、原因はどうもそれだけではなさそうだ。政府は教育改革を推進しようとしているが、そのねらいの一つは、できる教師とできない教師とを給与などではっきり差をつけるという能力・成果主義の導入である。しかも、学校間での競争をさせるといったこともあり、親の学校や教師を見る目は一段と厳しくなるだろう。従来以上に教える以外の仕事が増えるし、神経を使うことになりそう。それなのに、一般公務員よりちょっぴり高い、いまの給与を引き下げるという話もある。

 すでに、教師の夏休みなどは相当、仕事でつぶれている。もっぱら生徒を相手にしていればよかった良き時代の教師像は全く過去の話になっている。このままでは基礎教育を担う教師の質が低下していくことは避けられないだろう。

 上級公務員も東大などの成績優秀な人材が弁護士や外資系金融機関などに行くため、志願者の質が落ちているという。政治家をあやつって国家を経営していた時代は終わりつつある。上級公務員は相変わらず長時間労働の滅私奉公だが、天下国家を動かすという仕事の魅力が薄れたうえに、社会は高級官僚に対して天下りを許さない雰囲気になっている。公務員一般の給与水準は高いが、上級公務員の給与は外資系金融・証券などに比べればかなり少ない。

 このように、上級公務員は仕事の質や労働条件などがよくないうえに、報酬も民間の上のレベルに比べると劣る。国を運営するためには優秀な公務員をそれなりの員数、必要とするから、彼らの給与などを適正な水準にまで上げるのはいいが、他方で、その他の公務員の給与などは下げるべきだろう。

 以上の職種はいずれも国家試験をパスするなり、資格をとって初めて就職(開業)できるものである。逆にいえば、一旦、就職してしまえば、ハッピーな人生が約束されていた。これら人もうらやむような職種がいま揺らいでいるのである。そうした変動を引き起こしているのは、グローバルな自由競争、民営化、規制の廃止・縮小などの流れと、仕事やリスクに見合うリターンをという発想ではないか。仕事が楽で、リスクもないのに高収入というのは許されなくなるということだ。

 ところで、韓国のソウル市が仕事をしないでさぼったりしている職員を退職させるため、その候補となる職員を指名し、半年間、「現場是正推進団」に置いて草むしりやごみ拾いをさせるという(「Youngee Ahn の韓国レポート」第206回「無能な公務員は今清掃中」JMM423F)。釜山市なども追随するとのこと。これも、ろくに仕事しなくても、いい給与をもらい、終身雇用というのは許されなくなるという例である。日本にも、そうした動きが起きるのが望ましい。

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