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2007年6月16日 (土)

「これ以上やさしく書けない」個人向け国債の話

 「これ以上やさしく書けない」などといわれると、物書きにとっては気になる。というわけで、たまたま財務省に行ったとき、同省が発行するパンフレット「これ以上やさしく書けない個人向け国債の話」をもらってきて読んだ。A4版で12ページ。確かに、ていねいに、わかりやすい説明をしている。

 ただ、個人向け国債の特徴として、「(安全+手軽)×選べる(2タイプから)=個人向け国債」と強調しているのには疑問を抱いた。元利払いや、ペーパーレスで偽造、盗難などの心配がないのは間違いない。しかし、もしもインフレが進めば、元本の価値が目減りするから、安全・安心というわけにはいかないはず。その点に全く触れていないのはどうかなと思う。

 換金可能になったとき、10年変動金利国債だと直前2回分、5年固定金利国債だと4回分の利子(税引前)相当額を差し引くとある。利子から税金を引いた分しか投資家は受け取っていないのに、税込みの金額を差し引くのはおかしい。そう思って財務省のホームページを見ていたら、6月12日に「個人向け国債の中途換金調整額の計算方法の変更について」をアップしていた。

 それによると、利子(税引前)相当額×0.8に変更する、適用は平成20年4月買い取り分からという。税金の二重取りを誰かに指摘されて訂正したものだろう。あらたむるにはばかることなかれだが、どうして変更(実際は訂正だ)したかの理由を何も書いていない。明らかに、「これ以上やさしく書けない」という看板に偽りありだ。

 霞が関の官僚たちの”辞書”には、間違っていました、という言葉がない。厚生労働省・社会保険庁の年金問題があれほどひどいのも、政府(の職員)の犯したミス(誤り)を認めず、あたかも神であるかのごとく無謬性の建前を貫こうとしてきたところに原因がある。官僚の皆さん、国民に対し、もっと謙虚たれと言いたい。

 このパンフレットや財務省のホームページから学んだ1つは、個人向け国債の2種類のうち、10年変動金利国債の売れ行きが、5年固定金利国債よりかなり下がってきていることだ。ことし4月発行分では、変動3479億円、固定8326億円である。こうした傾向は、固定金利国債の金利が、変動金利国債の当初適用金利よりかなり高いからということと、変動金利の意味が理解できる投資家層はリスク性の高い株式、投資信託、外貨預金のほうに移っていったこと、の反映ではないか。

 いま1つは、国債の保有者のうち、家計はわずか4.8%(06年末、日銀調べ)にすぎないことである。海外も5.8%にすぎない。これに対し、一般政府4.5%、日銀11.2%、郵便貯金19.9%、簡易保険8.8%、公的年金9.6%などと国ないしそれに準ずる機関が半分余りを保有。それ以外は銀行等20.7%、生損保等8.8%、年金基金3.8%である。もしも、長期金利がいまの異常な超低金利を脱して、数年のうちに5%程度に正常化していったら、固定金利の国債を大量に抱えるこれらの主体は軒並み巨額の損失を出しかねない。それは、また、めぐりめぐって国民の負担になる。

 国債金利が上がれば、利払い増で財政負担が増す。そうならないようにと、政府は日銀の金利正常化、つまり利上げを抑えている。日銀もそれをよしとしている。しかし、超低金利を維持していることがデフレからの脱却を妨げているという見方も根強くある。それに、超低金利によって、支払金利を少なくし、財政危機を表面化させないでいることが、政治家や官僚を無責任にしている。

 政府は2007年度の新規財源債として25兆4320億円を予定している。国債残高がさらに今年度にそれだけ上乗せになるのである。25兆円というカネは、国民1人あたり20万円ぐらいの税金を追加的に徴税するに等しい、それほどの大きな借金増なのである。地方自治体にも、同様な借金増がある。参院選挙があるからといって、増税・国民負担増の話を避けて、国民においしい話をしていられるような状態ではない。 

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