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2007年7月 8日 (日)

介護従事者の低賃金問題

 コムスンの介護報酬不正請求問題をきっかけに、高齢者の介護に従事する人たちの賃金が低く、そのために介護従事者が足りないことが指摘されるようになった。そして、法律で定めている介護報酬額が低すぎるから、上げるべきだという声が出てきている。

 8日付けの朝日新聞朝刊は、介護報酬を人件費とそれ以外に分けて、人件費を削れなくするか、一定の給与水準を保証する仕組みを求め、「不足分は税金で補ってもいい。所得の低い人に配慮しつつ、保険料や利用料を引き上げる必要があるかもしれない」と社説で述べている。

 賃金などの労働条件が悪ければ、働く人が集まらないのは当然のこと。最近のように、パートなど非正規社員の賃金が上がって、人手の確保が難しくなっている以上、介護事業者が事業を続けたければ、労働条件を改善するのが先だろう。それをしないで、事業者に支払う介護報酬を上げてやれというのは、話が飛躍している。

 コムスンの訪問介護事業を譲り受けたい事業者が多数いる。彼らはいまの介護報酬で職員を確保し経営していけると見込んでいるからだ。もちろん、人手の確保もできると思っているだろう。したがって、介護報酬額の引き上げを云々すべきではない。

 もちろん、いまの介護報酬だと、施設介護と比べ、訪問介護のほうが事業として成り立ちにくいという事情があるなら、公平性の観点での介護報酬の増減見直しはあっておかしくない。

 いまの介護制度には、需要過多の面があるように思われる。経済学では、安すぎれば、超過需要が発生するというのは当たり前だ。被介護者は費用の1割を払えばいい、つまり9割安の値段で介護サービスが買えるのだから、安易に利用することも当然ありうる。1割負担以外の9割は、毎月の介護保険料(保険加入者すべてが支払う)と政府の負担、つまり税金である。介護保険の利用者の激増、保険金支払いの激増の背景には、こうした負担と受益の極端なアンバランスが存在している。

 したがって、医療保険の自己負担が3割(70歳以上は別)であると同様、介護保険の利用料も3割の自己負担にするのがいい。そうすれば、安いからと安易に利用する介護の需要が減り、介護労働従事者の数もいまより少なくてすむ。そうなれば、保険の支出も減る。介護報酬が低すぎて事業者が少ないという場合には、介護報酬を上げるという政策選択も容易になる。

 政府が介護保険を創設したのは、社会的入院などで医療保険の財政規模がどんどん膨らんだため、医療保険の破綻を避けるという財政的発想からだった。だから、介護保険制度の設計はずさんで、介護保険料や利用者数なども過小に予測した。スタート時点から厚生労働省は大きな過ちをおかしていたのである。「フリーランチはない」。ただでメシが食えるのに等しい介護保険の1割負担は早く引き上げるべきだと思う。

 参議院議員選挙が近づき、どこの政党も負担の話はしないで受益、つまりもっと国民にサービスしますという話ばかりする。何百兆円もの借金を抱えている日本国の財政実態を踏まえたら、責任ある政党なら絶対に言えないセリフである。無駄な歳出をなくすとともに、いまも膨らむ政府債務を減らすための増税は絶対に必要である。おいしい話で国民を釣るなんて、許せない。

 高福祉国家、スウェーデンは付加価値税の標準税率が25%である。日本も消費税率を25%に上げれば、毎年40兆円程度の税収が上乗せになるから、政府も財政再建に充てるとともに、福祉にたくさんのカネを投じることができる。しかるに、各政党が負担増なしに受益増が可能であるかのごとき嘘を選挙公約で堂々と言うなんて、国民は馬鹿扱いされている。選挙結果によっては、本当に国民は馬鹿だということが示されるかもしれない。情けないことに。

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