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2007年9月30日 (日)

地方公共団体の06年度普通会計決算はちょっぴり改善

 総務省が都道府県と市町村の06年度普通会計決算の速報数値を9月28日に発表した。都道府県、市町村のいずれも依然、厳しい財政事情が続いているものの、05年度よりはちょっぴり改善した。

 ただ漫然と景気回復による税収増などに依存するだけでは、自治体の財政再建は難しい。さりとて、深刻な財政危機に直面している国にもっとカネをくれというのも無理な相談だ。最大の資源(?)である職員がアタマをもっともっと使って、限られた歳入で最大限の効果を生み、地域経済を活性化するようになってほしい。

 都道府県の普通会計決算は、歳入総額が48兆4382億円で、阪神・淡路大震災復興基金に係る特殊要因を除くと、前年度を実質的に3429億円上回った。地方税は1兆2078億円増加した。歳出総額は47兆5359億円で、実質的に2619億円増えた。「地方債残高+債務負担行為額-積立金残高」でみた将来にわたる実質的な財政負担は80兆7932億円で、前年度末より1457億円(0.2%)減少した。

 また市町村の普通会計決算は、歳入総額が48兆7501億円で、実質的にみて前年度より7838億円少なかった。5年連続の歳入減。地方税は4940億円増えた。歳出総額は47兆4239億円で、実質的に7940億円の減少。将来にわたる実質的な財政負担は55兆9191億円で、前年度末より1兆2138億円少なくなった。

 都道府県の人件費は退職金増のため15兆0113億円と、前年度より27億円多かった。投資的経費は8兆4044億円で、6573億円(7.3%)減った。市町村では、人件費が9兆4861億円と、前年度を1876億円(1.9%)下回った。投資的経費は6兆8995億円で、4232億円(5.8%)減少した。

 過去5年間の歳入決算額の内訳をみると、顕著な傾向がみられる。第1に、地方税の割合が上昇している。都道府県02年度30.2%→06年度37.9%、市町村35.0%→37.3%である。第2に地方債の割合が低下している。都道府県14.6%→11.1%、市町村10.8%→8.6%である。第3に、地方交付税も都道府県21.0%→17.8%、市町村17.2%→15.1%と減少。いずれも数値だけで判断すれば地方自治にとって好ましいトレンドだ。

 もっとも、国庫支出金のほうは、都道府県は16.1%→11.4%へと減り続けているが、市町村は02年度9.2%→04年度10.3%→06年度10.0%と増えたり減ったりしている。

 以上、財政改革を推進する立場から言えば、小さな歩幅ながら一歩前進だと評価する。一方で、切り詰めるばかりでは、職員のやる気が出ないというお役所の人たちの不満も聞くけれど、民間に比べ意識改革、創意工夫がまだまだ足りない。首長のリーダーシップを発揮してもらいたい。 

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2007年9月29日 (土)

「国家の借金は返そうと思えばいつでも返せる」のか

 ーー国家の借金は返そうと思えば、いつでも返せる。例えば、日本政府が明日、返そうと思えば、明日返せる。税率100%の国債保有税をかければいい。このことを忘れているのが国債の保有者である。国債を持っていない人は心配する必要はないが、インフレになれば生活が混乱する。歴史によれば、政府はお札を発行できるから、インフレにすれば、国の借金はいつでも解消できる。財政赤字について心配すべきことは、国家破産ではない。重要なことは、国債の大量発行で金利が上がったり、インフレが起きたりする経済的混乱をうまくコントロールすることである。ーー 

 民主主義の観点から財政を考える神野直彦東京大学教授の著書『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、07年6月刊)を読んでいたら、上記の趣旨を述べている個所があった。

 神野氏によれば、「経済的な危機や社会的な危機が生じると、財政は危機になる」、「そういう経済的な危機や社会的な危機を、財政を使って解消することが必要」、「ところが、財政が借金返しに追われて、危機を解消するという本来の使命を果たせなくなるということが大きな問題なのです」。(ここの論理はどうも理解できないーー引用者)

 財政の大きな任務は所得再分配だが、税金を国債の借金返しに使えば、「一般の国民から税金をとって豊かな人々にお金を配分してしまう」逆再分配の機能をもってしまう、ともいう。

 そこで、今後の国の財政政策は、租税構造をできるだけ公平にする、財政支出を減らさない、借金の元金を返さないで利子だけ支払う、などとするよう求めている。

 神野氏の日頃の主張には学ぶことが多い。このジュニア新書から教わることがいくつもあった。でも、上記の文章からは、国債保有者イコール金持ちだから、彼らに借りたカネを無理して返す必要はないと言っているように受け取れる。国債の主な保有者は郵便貯金や銀行などであり、間接的には個人の零細預貯金、つまり圧倒的多数の国民の貯蓄がかなりの部分を占めることをご存知ないとは思えないが‥‥。

 また、国の借金は外国債ではない、国民から借りて国民に返すだけだからデフォルト(債務不履行)にはならないと書いている。それはその通りかもしれないが、内国債である日本の国債を保有している外国の投資家もいる。海外投資家が日本の国債に投資しているファンドに投資することもある。マネーには国境がない。だから、100%保有税などの強権的な政策をとったら、日本は世界の信用を失い、経済危機に陥る。

 神野氏は、そうしたグローバル経済の実態を踏まえているのかなと疑問を感じる。それと、借金の元金を返さないで利子だけ支払う状態を続けるというのは、好不況の循環や金利の上昇(正常化と言うべきか)を考えると、持続可能でないと思う。やはり、借金残高をGDP比60%まで下げるといったような取り組みが必要ではないだろうか。

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2007年9月27日 (木)

福田さんは財政がわかっているのか

 新聞・通信社などの世論調査では、福田新首相に対する支持率は60%弱という。まだ首相として所信表明をしていない段階の調査だから、多分に安倍政権との比較感からくる感覚的な受け止め方を示す数値にすぎないと思われる。

 もっとも、福田さんの政策の方向として1つだけはっきりしたことはある。それは、自民党と公明党との連立政権合意書に、高齢者医療費負担増の凍結をうたったことである。同意書には障害者の福祉サービス利用における自己負担を導入した障害者自立支援法の抜本的見直しや、母子家庭への児童扶養手当の一部削減の凍結も含まれている。これらを実現すると、国庫だけでも年間1千億円を上回る負担が生じるようだ。だが、その財源をどこから捻出するかが合意書には書かれていない。

 額賀財務大臣には歳出・歳入一体改革を進めるよう指示したようだが、経済財政諮問会議を担当する大田経済財政担当大臣に対する指示には歳出・歳入一体改革がなかったと報道されている。そのあたりの真相は不明だが、福田さんが強力に財政改革を推進する姿勢をみせたことはない。

 しかし、景気のいい局面でさえ国の長期債務残高が膨れ上がる極端な借金依存体質を是正しなければ、のちの世代に財政負担を先送りするばかりだし、財政破綻が近い将来に起きる可能性は増大する。そうした危機感を福田さんが抱いているようには感じられない。道路特別会計の一般財源化に福田さんは否定的である。これも、日本財政の危機や時代の変化に疎く、まだ旧来の自民党利権政治のしっぽを引きずっているからだろう。

 井堀利宏東大教授は近著『「小さな政府」の落とし穴』の中で、「財政健全化努力を続ければ、わが国財政は十分に維持可能である」、「それでも、時間的余裕はあまりないと見るべきだろう。財政危機は、いったん表面化すると、一気に問題が大きくなる」と述べ、「2010年頃からは団塊世代が老年世代として社会保障受給の中心世代となり、歳出の増加圧力が高まってくる。したがって、できるだけ早急に財政改革の道筋をつける必要がある」と指摘している。財政再建策としての「小さな政府」論に対しては「歳出削減には限界があり、最小限の増税をせざるをえない」と言い切っている。

 同書の締めくくりのところでは、「財政規律が緩んだままで将来世代に負担を先送りしている状況」であること、「歳出の無駄の増加や財政赤字の累増は、公務員や政治家の既得権益から生じているばかりではない。むしろ、われわれ国民が政府・財政にただ乗りしてきた結果でもある」と述べている。

 そして、地方分権を推進して負担と受益の関係をリンクして住民がコスト意識を持てるようにすること、そのためには地方交付税制度を抜本的にスリムにすること、納税者番号制度を導入すること、「改革の将来像を明示して、世代間、地域間の公平性と効率性を促進させるような社会保障改革」などを提案している。

 同書は「痛みなき財政再建路線は危険だ」という副題を付けている。福田さんはじめ新政権の皆さんに必読の書としておすすめしたい。

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2007年9月25日 (火)

基礎年金の全額税負担を求めた?経団連会長

 現在の政治の大きな争点の1つは年金問題である。社会保険庁による保険料の積み立て記録がずさんだったり、積み立て保険料の横領や流用が多かったので、25日に選任される福田康夫氏率いる新内閣においても、重い課題である。それに関連して、日本経団連の御手洗会長は20日の記者会見で次のように述べた。

 「国民の一番の関心は年金問題である。年金記録問題などが顕在化し、年金制度が満身創痍の状態になっている。与野党には、持続可能で、国民にとって安心・安全な年金制度の構築に向けて、抜本的な議論をしてほしい。その際、例えば、公的年金の基礎年金部分の全額税方式化についても議論してはどうか。毎年1兆円のペースで増加する社会保障費の財源が足りないとなれば、徹底的にムダを省き、歳出削減や給付の是正・合理化を行なった上で、消費税を引き上げることはやむを得ないのではないか。」

 従来、政府は基礎年金の2分の1を税で負担することになっているので、その実現を優先課題としている。これに対し、民主党が基礎年金の全額を税でまかなうという政策を打ち出している。御手洗会長が、ここで消費税引き上げとのパッケージで全額税負担を打ち出した背景には、民主党の参議院選圧勝、安倍首相の突然の辞意表明、後継内閣選出などの政治情勢を踏まえ、自民党と民主党の歩み寄りを求める意図がうかがえる。

 たった2日前の9月18日、経団連は「国・地方を通じた財政改革に向けて」と題する提言を発表したばかり。提言では、公的年金制度について、「給付時に一定以上の所得・資産を有する者に対する基礎年金給付の逓減や公費部分の支給停止、報酬比例部分の支給乗率の逓減に加え、所得代替率の下限の引き下げ、基礎年金の財源方式のあり方などを含め、制度の根幹に踏み込んだ見直しを検討していく必要がある。」と述べている。

 18日の総花的な見解が、20日には焦点をしぼった発言になったように受け取れる。この違いは何か。大企業を代表する経団連にしてみれば、国内政治の安定がぜひとも望ましい。それに、法人税の引き下げや社会保障制度における企業の負担を増やしたくない。この2つを同時に満足する答えの必要性を御手洗会長が痛感したからだろう。

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2007年9月23日 (日)

シンポ「生物の生存戦略」を聞いて

 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構が9月23日に東京で開催したシンポジウム「生物の生存戦略  われわれ地球生物ファミリーはいかにして ここに かくあるのか」を聞きにいった。朝10時から始まって、終わったのは夕方6時近かった。10人の研究者が各30分(オーバーする人もいる)講演し、その内容も実に多様だから、聴衆も相当にくたびれただろう。

 でも、満席の聴衆はほとんど最後まで聞いていた。興味深いテーマばかりで、しかも、それぞれの話が画像、映像を有効に利用してわかりやすく工夫されていたからだろう。立花隆氏が企画し、東京大学の立花ゼミの皆さんが中心になって実現したものだから、専門研究者と一般市民とをつなぐ、こうしたシンポジウムができたのではないか。

 講演は「生命を生み出すまでの宇宙進化」、「無性生殖と有性生殖ーー幹細胞を介した生物の適応戦略」、「昆虫の起源と進化」、「共生と生物進化」等々、興味をそそられるテーマばかり。エーと驚くことばかりだった。いずれ本になるが、じっくり読んだら、おそらくもっとおもしろく思うに違いない。

 シンポジウムは残念なことに、聴衆の多くが60歳代以上で、若い世代はきわめて少なかった。元気で、好奇心が旺盛、かつ学ぼうとする高年者がたくさんいるのはすばらしい。でも、こんなおもしろいテーマのシンポジウムに若い世代が関心を持たない日本は将来が心配不安だ。

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2007年9月22日 (土)

脱北帰国者支援機構代表、坂中英徳氏の話から

 法務省の元東京入国管理局長で、現在、脱北帰国者支援機構代表の坂中英徳氏の話を聞いた。在日韓国・朝鮮人問題や、近年の外国人受け入れ問題などについて語ったが、日本の政治がこれらの問題に真正面から取り組んでいないことに強い不満を表明した。自民党総裁選における福田、麻生両氏の政見では全く触れられていないが、重要な問題点の指摘である。

 福田、麻生両氏は北朝鮮による拉致の問題を取り上げていたが、1959年~84年の帰国運動で北朝鮮に帰国した在日朝鮮人約9万3千人(うち日本人妻など日本人6800人)の救出については何も述べていない。“地上の天国”だと思って北朝鮮に帰国したものの、実際は地獄だった。出国の自由はなく、下層身分に位置付けられ、差別と監視の対象となって、強制収容所に監禁されたり、餓死したりした人が多いといわれる。

 日本に家族が残っている人は、日本から金銭や物品を送ってもらうことが可能だからまだましだ(この人質によって北朝鮮は日本からたくさんの金品を巻き上げたとも言える)が、それができない帰国者は悲惨な状態だという。

 日本人妻は1800人、北朝鮮に行ったが、坂中氏は、そのうち、生きているのは100~200人と推定する。生きているなら70~90歳ぐらいだろうという。彼女たちは山奥で、古代の縄文人のような貧窮生活をよぎなくされている。その人たちの救出を、日本の政治家は金正日総書記に働きかけるべきだと強調した。

 日本人妻は日本へ帰って死ぬのを願っているが、それができず北朝鮮で死んだ場合には、頭を日本に向けて葬ってほしいと言っているそうだ。

 坂中氏は、北朝鮮に帰国した人々は二世、三世を含めると、普通なら現在30万人超でもおかしくないが、実際には20万人ぐらいだろうと推測している。将来、自由に往来する道が開かれれば、半分の10万人くらいが日本に戻ってくると想定し、日本政府は受け入れ体制を整えるべきだという。

 また、坂中氏は、これからの50年間に日本の人口が4千万人も減る少子化対策の1つとして、50年間に1千万人の外国人受け入れを提唱した。そして、いま200万人を超える外国人が日本にいるが、その中で、日系人二世のブラジル人30万人の子弟の教育をきちんと行うことが緊急の課題だと述べた。

 彼らが中途半端の出稼ぎ意識だとしても、子弟がほとんど日本の学校教育を受けようとしない状態は改める必要があるという。このままだと排斥運動が広がりかねない。日本は外国人受け入れのあり方を真剣に考え、他民族との共生の実現を目指すべきだ、それが坂中氏の主張だった。

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2007年9月20日 (木)

経団連が財政改革のあり方を提言

 公明党が、19日、政府の基礎的財政収支(国・地方)を2011年度までに黒字化するという財政再建目標を「錦の御旗のごとく掲げなければならないのか」(北側一雄幹事長)と達成時期の先送りを求めた。

 その前日(18日)、日本経団連は提言「国・地方を通じた財政改革に向けて」および税制改正に関する提言を発表した。日本の財政は「長期金利の高騰に対して極めて脆弱な構造」であるとし、「中長期的な財政健全化目標ならびに国・地方の税・財政関係のあり方について、経済界としての考え方を示す」ものである。

 それによると、基礎的財政収支の黒字化は財政健全化への一里塚であり、GDPに対する政府債務残高の比率のさらなる上昇を避けるという意味にとどまると指摘。先進国の中で最悪の状況から脱するためには、次の目標として、GDPに対する国の債務残高の比率の安定的な引き下げ(目標としては例えば、07年度末約116%を100%以下に下げる)を掲げるよう提言している。予算編成の基準としては、債務の利払費用までをカバーする狭義の財政収支黒字化が選択目標として考えられるとしている。

 そのための歳出歳入一体改革では、消費税については経団連がことし1月に発表した提言「成長と財政健全化の両立に向けて」を踏襲し、当面2%程度引き上げ、2015年までにさらに3%程度の引き上げを唱えている。

 公明党は基礎的財政収支を黒字化する目標年次を先延ばしして歳出を増やそうという考えらしい。しかし、一里塚にすぎない基礎的財政収支黒字すら達成できなければ、財政再建はおぼつかない。経団連がポスト財政収支黒字化の目標設定を求めたのは評価したいが、目標年次を掲げなかったのは不満だ。

 ところで、地球温暖化対策では、京都議定書で一部先進国に対し、2012年までの温室効果ガスの排出削減目標を定めている。しかし、京都議定書は地球温暖化を抑えようとする取り組みの過程における一里塚にすぎない。2012年より先の抑制対策は先のG8で「2050年までに半減」という安倍首相の働きかけが受け入れられただけで、国連レベルではまだ何も決まっていない。だが、その京都議定書の目標すら、達成できるか、危ぶまれている。日本の財政再建と世界の温暖化対策は、よく似た状況にある。

 日本にとって、財政改革も、地球温暖化対策も深刻な課題である。しかし、国民1人ひとりが深刻さを実感しにくいから、一里塚にすぎない改善目標すらホゴにしようとする動きが生じる。まして中長期の目標を設定し、それを実現するための各論を詰めて実行するのは並みの政治力では不可能だ。大きな時代の曲がり角では、国民に新しいビジョンを明示し、説得し、それで国民が納得し、ついていくようにできる政治パワーの必要性を痛感する。

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2007年9月18日 (火)

高齢化はまだまだ進む

 17日の「敬老の日」にちなんで、総務省が発表した推計(15日現在)によると、65歳以上の人口の割合は21.5%だった。高齢化がここまで進んだか、という感慨があるが、今後、この程度の高齢化ですむわけではないことも確かだ。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、65歳以上の高齢者の総人口に占める比率は2020年には29.2%、2030年には31.8%、2040年に36.5%、2050年39.6%と、うなぎのぼりである。

 現在、15~64歳の生産年齢人口に対する65歳以上の人口の割合は33.1%。要するに、働く人々の3人で65歳以上の高齢者1人を支えていることになる。この割合が2020年には48.7%、2030年は54.4%、2040年67.3%、2050年76.4%にまで上がる。即ち、2020年、2030年のあたりは働く人2人が高齢者1人を支える、それが2050年には4人で3人を支える事態になる。1995年には5人で1人を支えていたのとは恐ろしいほどの違いだ。もちろん、少子化で育児の費用負担は減るが、働き盛りの人たちにおぶさる高齢者の割合がどんどん大きくなると、働く人たちは黙っていまい。とんでもないことが起きてもおかしくない。

 現在の社会保障を享受する高齢者は自己負担をはるかに上回る受益になっている。それが可能なのは、生産年齢人口による負担に加え、国債を大量に発行して将来世代に負担のツケを回しているからだ。現在の高齢者には、いまの医療、介護、年金などの自己負担や給付内容に不満を抱く人が多いが、国全体の現在および将来をみると、現役や将来の世代に負担を押し付け、うまい汁を吸っている世代である。

 日本の社会が持続可能であるためには、高齢者が享受している医療、介護、年金などにおける給付を減らしたり、自己負担を増やしたりするのが筋である。高齢者の耳に痛いことをはっきり言い、社会保障制度のありかたを根本から見直すべきだと国民にきちんと説明するのが現下の政治の責任である。 

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2007年9月17日 (月)

厚生労働白書には年金記録問題の原因追及の記述がない

 厚生労働省が毎年、発行する「厚生労働白書」の平成19年度版が今月14日に発表になった。参院選挙にも大きな影響を及ぼした年金記録問題について、白書がどのように記述しているか、調べたら、252ページで9行、そして301ページから302ページにかけて36行の記述しかなかった。もっぱら対応策の説明である。

 国民年金保険料の免除等に関する事務処理の不正については、301ページで9行の記述をしている。

 そして、303ページで、「厚生労働省・社会保険庁としては、年金記録問題など、近年の度重なる不祥事について、国民の皆様に深くお詫び申し上げるとともに、以上の諸施策を通じて、社会保険事業に対する国民の信頼回復に向けて全力をあげて取り組むことにしている。」と締めくくっている。

 291ページでは、「社会保険庁の組織改革」という見出しで「社会保険庁については、事業運営に関する様々な指摘がなされるとともに、不祥事案も生じたところであり、国民の信頼回復に向けて、業務・組織両面にわたる抜本的な改革を着実に進める必要がある。」と述べている。

 こうした白書の記述には、なぜ、それらの不祥事が起きたのかに関する分析、説明が全くない。これには唖然とする。自らの組織が引き起こした問題の原因を、自ら探るのはやりたいことではないだろうが、再発防止のためには絶対に必要な作業である。

 官僚は自らの過ちを決して認めないといわれるが、失敗の原因の分析、研究なしに、「業務・組織両面にわたる抜本的な改革」を進めると言われても信用できない。

 今年度の白書は第1部「医療構造改革の目指すもの」、第2部「主な厚生労働行政の動き」から成る。第1部では、国民皆保険制度のもとで医療保険制度を持続可能にするため必要な対策をあれこれ述べるとともに、医師不足などの医療提供体制の対策などに触れている。

 ここで興味深く読んだのは、第3章「保険医療・介護をめぐる地域差の現状と課題」である。①1人当たり年間医療費総額が最も高いのは鹿児島県(33.4万円)、最も低いのは埼玉県(17.9万円)。②1人当たりの老人医療費が最も高いのは福岡県(96.5万円)、最も低いのは長野県(63.5万円)。③老人医療費のうちの入院費では、最も高いのは北海道(54.1万円)、最も低いのは長野県(29.5万円)。入院外医療費では、最も高いのは広島県(43.2万円)、最も低いのは沖縄県(30万円)。

 老人医療費の多寡に基いて都道府県をグループ化して分析すると、「病床数と平均在院日数は入院医療費と強い相関関係を有しており、入院医療では、供給が需要を生み出す側面があることを示唆している。」という。ベッド数が多い地域は、それに見合って入院患者を増やすから、医療費がたくさんかかるということである。社会的入院なんてずっと以前から問題にされていたことだが、政府はいまもってきちっとした手を打っていない。

 医師数は毎年、3500~4000人程度増えている。ただ、病院勤務医の繁忙感は強まっているという。一方、診療所の数は増えているものの、時間外、深夜、休日などには診療するところは増えていない。往診を実施する診療所もおおむね横ばいだという。

 庶民は身の回りの医者の様子をみているから、開業医はもうかる、と思っている。私もそう思う。ただし、専門職として、もうけてもいいけど、医者同士で、交代制でもいいから、救急医療を受け入れたり、往診に行ったりしてほしい。大学の医学部に国から多額の財政補助が行われたり、国家試験で医師の資格を与えたりしているのは、医師が公的な役割を担っていることを意味するのだから。 

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2007年9月16日 (日)

福田さんか、麻生さんか

 安倍さんのあと、総理大臣になるのは福田康夫氏か、麻生太郎氏か。自民党内部での跡目相続の選挙が行われる。政党間の政権をめぐる闘いではないから、あまり盛り上がらなくて当然だが、小泉純一郎氏のような個性的なキャラクターが1人でも加わっていたら国民の関心が高まったかもしれない。

 うろ覚えだが、十数年前、諸井虔氏(元経済同友会副代表幹事)から、二大政党の時代における保守政党と革新政党の対立点は大別すれば2つだろうという話を聞いたことがある。一つは、市場競争を重視するか否かである。いま1つは、外交・安全保障をめぐり、対米重視か否かである。このものさしを今日の自民党と民主党に当てはめてみると、対立の構図がうまく説明できない。

 2つの対立点のうち、前者は、大きな政府か、小さな政府か、と重なる面が少なくない。大きな政府、小さな政府という場合、GDP比などでとらえた歳出規模や税収・社会保険料などでみるのに加え、法的規制が多いか少ないかで判定する部分もある。許認可、競争制限、国公営などが多ければ、大きな政府に該当しよう。

 いまの日本だと、急速な少子高齢化で、社会保障へのニーズが年々増大している。だから、福田、麻生両氏が「小さな政府」を志向して構造改革を続行しても、現実には、社会保障関連の規模拡大で、カネの面では小さな政府が大きくならざるをえない。せいぜい大きくなる程度を抑えることしかできない。一方、法的規制については、自民党は市場原理の採り入れによって大きな政府を小さくし、経済を活性化しようとしてきている。しかし、それが格差などの問題を起こした理由だと批判されている。

 参院選敗北で、自民党には格差問題などで、大きな政府を志向する動きもなくはない。社会保障費用の増大および財政再建の必要から、福田、麻生両氏とも消費税引き上げに言及している。これに対し、民主党は歳出削減などで財源を生み出すとして、増税せず、と言い切っている。保守政党が増税を、逆に、革新政党が小さな政府の維持を、というのは従来の保守、革新の概念では例外のようにみえる。

 もう1つの対立点とされる外交・安全保障については、民主党がテロ対策特別措置法で対米重視と異なる方針を打ち出した。世界の安全保障をめぐる情勢の変化があろうとなかろうと、保守の自民党はお経のように対米協調を繰り返すだけである。そして中身はさておき、憲法改正を唱えている。さりとて、民主党も、テロ特措法以外は、与党とは大きく異なる独自の外交・安全保障政策を国民に訴えているようにはみえない。その点では、社会民主党のほうが自民党との違いがはっきりしている。

 諸井氏の2つの対立点がそもそもピントはずれなのかもしれないが、別の見方として、日本の政党がまだ二大政党政治にふさわしい姿に再編成されていないとの解釈もできるのではないだろうか。自民党の内輪の後任争いがメディアで大々的に取り上げられるのも、政権の座にある自民党が理念を掲げた確固たる保守政党になっておらず、その時々で、基本政策さえもが変わりうるからだということかもしれない。 

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2007年9月12日 (水)

二世、三世議員の脆さ?

 安倍総理大臣が12日、突如、辞意を表明した。久しぶりに新聞の号外が出た。

 参議院選挙後、私が会って話した人のほぼ全員が安倍さんを否定的に見ていた。要するに総理大臣の器ではないということだ。おじいさんの岸信介、父親の安倍晋太郎、そして安倍晋三、とくると、能力、識見、経験等々、すべてでスケールが小さいことが明らかである。そして、二世、三世議員の通弊だが、苦労していない分、観念的であり、逆境に弱い。

 いまの政界の大きな問題点の1つは、安倍さんのみならず、二世、三世議員が多いこと、そして、彼らの政界での出世が早いことだ。歌舞伎役者か何かと同じような世界になっている。もちろん、選挙の洗礼を受ける点は違うが、地盤、看板、カバンの3要素がカギなので、エリートの子はエリートにといった、まさに格差固定社会になっている。頭がいい有能な二世、三世議員もいるが、概して庶民感覚に疎い。バイタリティも足りない。

 自民党では、後任の党総裁・総理大臣として、麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫氏らの名前が上がっている。しかし、その3人ともが二世、三世議員である。そういう分類に異を唱える方(かた)がいるかもしれないが、親の七光りまでいかなくても、二光り、三光りはあるだろう。そのほか、思いつくままに挙げれば、この間まで官房長官だった塩崎恭久氏もそうだし、衆議院議長の河野洋平氏も、そしてその息子、太郎氏も二世、三世議員である。

 そして、この二世、三世議員は自民党ほどではないが、野党第一党の民主党にもいる。まず、小沢一郎代表がそうだし、鳩山由紀夫幹事長もそうである(兄弟の鳩山邦夫法務大臣は自民党だが)。最近、参議院議長になった江田五月氏にしても同様だ。旧社会党の流れを汲む国会議員にしても、二世、三世議員がいる。

 いやいや跡を継いで政治家になったというケースは聞くが、実際に政治家になって、やっぱりいやだといってやめた人はまずいない。それほどに政治家という稼業は魅力があるらしい。

 しかし、グローバルに激動する世界を適確に把握し、先見性をもって日本国家を繁栄させる政策を打ち出す政党および政治家を私たちは必要としている。それには、二世、三世議員とは違うスケールの大きい人材を国会に送り込まねばならない。それが私たち有権者の責務だが、では、どうしたらそれができるのか、というところで悩む。

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子供が18歳になるまで短時間勤務認める会社

 「ただいまー」。子供が学校から帰ると、家ではお母さんらが「お帰りなさーい」と迎える。そんな光景は現代の日本社会では少ない。共働きの家庭が多いからだ。また、片親の家庭もある。

 しかし、子供が健全に育っていくうえで、こうした家族の間のコミュニケーションはとても大事だ。働きたいし、家庭も大事にしたいし、という社員の希望に沿う会社が増えることが日本の社会を豊かにするはずだ。

 きのう(9.11)、日本ユニシスの籾井勝人社長から聞いたところによると、同社は06年9月に仕事と生活の両立支援制度を大幅に改定した中で、子供の養育のため、子供が高校を卒業するまで利用できる短時間勤務制度を設けたという。毎日の勤務時間を2時間短縮(給与はそれに見合って減る)でき、その利用を社員の権利とみなす。

 籾井社長は「街頭犯罪の約4割が14歳~19歳の若者で占められていると聞く。だから、子供の高校卒業時ぐらいまでは、社員が家族生活を大事にできるように、短時間勤務を可能にした。社員にしっかりと働いてもらいたいからだ。政府でやれることはミニマムにし、われわれ民間でやれることをどんどんやっていくべきだ」と言う。

 ところで、同氏の持論だと、高齢社会に入っているので、年金受給者(65歳以上)が市町村の職員になるのがいいという。年金をもらっているから、給与はわずかですむ。65歳で平(ヒラ)の職員になり、80歳で部長になるのがいいという。ご自身も、会社を引退したら、出身地の九州に帰って、自治体の職員になりたい、とのこと。本気か冗談かはさておき、ユニークな発想はこりかたまった頭に刺激を与える。

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政府税調の田近調査分析部会長所感

 11日に開かれた政府税制調査会第14回調査分析部会で、部会長の田近栄治氏(一橋大学教授)が「調査分析部会のこれまでの審議をふりかえって(所感)」を表明した。

 「(1)社会経済構造の変化」で、「税制を取り巻く環境の変化」と「各税目に求められる役割の変化」を具体的に挙げ、「(2)歳出歳入一体改革の中での税制改革」で、まず、プライマリー・バランスの確実な黒字化と、高水準の国債残高/GDPから生ずるリスクの軽減に向けた取り組みの強化を課題に挙げた。

 そして、もう一点、「「歳出改革の取組みを行って、なお対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定財源を確保し、将来世代への負担の先送りは行わない」こととするための必要額が明確にされる必要がある」と述べた。どの位の増税が必要かを明確にする作業の手順として、田近氏のこの見解は間違ってはいない。

 ただ、経済同友会のあるメンバーによると、最近、同友会の財政関係の委員会で、財務省はもっと財政の実態を示す情報を出すべきだという意見が強かったという。国債発行額や国債残高ばかりを言い立てて危機をあおるのではなく、バランスシートのように資産・負債についての詳しい情報を開示すべきだということらしい。確かに、歳出の中身を含め、徹底した情報の開示が十分かといえば、そうとは言えない。財政危機に対する国民の認識が乏しいのもそのせいかもしれない。そこは税調の議論に欠けている大事なポイントである。

 ところで、田近氏の言う増税額を明確にするには、何よりもまず歳出改革を徹底しなければならない。いまの予算編成は新規要求については厳しく査定するが、過去に認めた歳出の継続分などはほとんど見直さない。そこにムダな歳出が存在する。最近、明らかになった農業共済への行き過ぎた補助などは一例だ。税調は税金のことしか議論できないというかもしれないが、それでは歳出・歳入一体改革はうまくいかない。

 また、歳入の基本である税収にしても、クロヨン・トーゴーサンピン、消費税の益税、徴税の不均等など、納税意欲を損ねる問題が依然残っている。財務省の中に、難しい問題の解決に力を入れるよりも、消費税を上げるほうがコストも安くすみ、楽だという安易な発想があるとしたら、それこそ国民の信頼を失うだろう。税調の審議は常に基本に立ち返って議論をきちんと積み上げてほしい。 

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2007年9月10日 (月)

テロ対策特別措置法の延長問題

 本日、臨時国会が始まった。インド洋上における海上自衛隊の給油活動を11月1日の期限切れ後も継続したいという安倍首相は9日、「職を賭して取り組む」と述べ、継続できなければ内閣総辞職もありうるとの決意を表明したという。臨時国会は冒頭からテロ特措法の延長ないし新法の制定をめぐる与野党間の激しい対立で波乱模様だ。

 しかし、10日、臨時国会開会を前に、民主党の小沢代表が「参院が主戦場だ」と言ったり、輿石参院議員会長が「我々民主党に挑戦する宣戦布告だ」と言ったのは不穏当な表現である。単なる言葉遣いの問題にすぎないという見方もあろうが、「主戦場」や「宣戦布告」という言葉は、憲法第9条を根拠に、日本が海外で戦争や戦闘行為に及んではならないことを主張する民主党のリーダーたちとしては、決して口にしてはいけない言葉だと思う。

 政治家は言葉を大事にすべき職業のはずだが、与野党を問わず、粗雑な使い方が目立つ。それでは、国民の心に響かないと思う。

 10日付け日本経済新聞夕刊で、安倍首相の所信表明を読んだ。納得できる個所をあげると、「無駄ゼロを目指す行財政改革を断固、実行します。」、「地方が考え、実行することのできる体制をつくります。」など数ヵ所。

 「「ばらまき」や「護送船団」といわれた、かつての政治手法に回帰することは、絶対に許されません」というのは受身の表現であり、「絶対にしません」と言ってほしかった。

 納得できない個所を1、2あげると、公的年金で与野党の「透明で建設的な協議が行なわれることが極めて重要です。」と言ったり、政治資金規正法の改正について「各党各会派や国会において十分なご議論をいただきたい」と言っていることだ。

 テロ特措法問題については、過去6年間、給油活動の前提となっている米欧先進国などによるテロとの闘いについて、それが適切だったか、問題がなかったか、これからもそれを続けるのがいいのか、といった点についてまず検討し、そのあとで給油活動を継続するか否かを、国民に説明すべきである。安倍首相の所信表明には、それが欠けている。国際協力を言う前に、自分の頭で問題の根本を考えるべきではないか。

 国の将来に関わる大きな争点について首相の明確な見解を述べないということは、自分の意見がないと表明しているのと同じだ。そうしたリーダーシップの欠如、そして自分が関心を抱いている特定の政治的課題についてだけはやたら熱心であるというのが、安倍首相に対する国民の不信のもとではないかと思う。

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2007年9月 8日 (土)

地方公共団体の実質公債費比率に関心を持とう

 都道府県や市区町村の財政が地方債という借金でどれだけ苦しいか、苦しくないかを表す実質公債費比率(04~06年度の3年間平均)を総務省が7日に発表した。皆、自分の住む地域の比率を見て、自治体の財政状況がどうなっているか知ろう。

 比率が低いほど財政状況はよいと言えよう。18%以上だと、地方債の発行が自由にはできなくなる。25%以上、35%以上だと、それぞれ、もっと起債が難しくなる。

 夕張市の破綻を未然に防げなかった反省でつくられた地方公共団体財政健全化法(ことし6月成立)は健全化判断比率として4つの財政指標を定めているが、その1つが実質公債費比率だ。大雑把に言うと、分母は地方税や普通交付税など使途が特定されていない財源、分子は地方債の元利償還金およびそれに準ずるもの(公営企業の地方債元利償還金への補助など)。起債で公共事業などを行なえば、当然、地方債の利息支払と償還が必要になる。そのツケの重さを比率は表している。

 都道府県では北海道20.6%、兵庫県19.6%、長野県19.2%、島根県18.1%が高い。低いほうでは神奈川県9.8%、群馬県10.2%、和歌山県10.3%、京都府10.7%、長崎県10.9%など。ちなみに東京都は15.2%、愛知県12.4%である。

 政令指定都市では、横浜市26.2%がトップ。次いで千葉市24.8%、福岡市23.0%、神戸市22.3%、川崎市21.1%、名古屋市20.9%、広島市20.9%、京都市19.3%の順だ。市町村で比率トップは長野県王滝村で42.2%。30%以上の市町村は全国で10ある。

 もっとも、横浜市は、主要な財源である都市計画税が分母に含まれていないうえに、地下鉄、下水道などの投資が大きいため、分子が膨らんで、見掛け上、財政状態が悪いようにみえるだけだと、比率の算出方法を批判している。

 そうした問題点はあるものの、比率が18%以上の黄信号の市区町村が501、全体の27.7%に達するのには驚く。島根県では21市町村全部が18%以上である。18%以上の市町村の数が5割を超える県は、鳥取県(63.2%)、青森県(60.0%)、岡山県(55.6%)、富山県(53.3%)、石川県(52.6%)、山形県(51.4%)、高知県(51.4%)である。

 一方、18%以上の市町村の数がゼロのところは長崎県と大分県。1つが栃木県、神奈川県、愛知県、三重県、2つが福井県、3つが福岡県、4つが東京都、岐阜県、滋賀県、愛媛県である。

 実質公債費比率のデータを見ていると、財政の良し悪しはそれぞれの市区町村によって相当異なることがわかる。国におんぶでだっこを求める自治体もあれば、自主独立の精神で財政の健全性を踏まえた行政を進めてきた自治体もある。単純に大都市圏と地方との格差ばかりを言い立てるのは必ずしも的を射ていないのではないか。   

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橋の寿命を長くするという話

 1980年代の終わりに米国に行った。そのおり、自動車のメッカであるデトロイトで、自動車専用道路を走ったとき、道路がひどくデコボコしているのに驚いた。舗装が傷み、へこんでいるところがある一方、傷んだところにセメントを詰めているために盛り上がっているところがある。だから、新しいクルマであっても、ガタガタと揺れて走る。

 道路や橋などの構築物はつくったときは立派だが、永久に持つわけではない。維持補修で長持ちさせるための人、カネが必要だし、いつかは取り壊して新しくつくらねばならない。だから、カネがあるからといって安易につくるのは考えものである。米国ミネソタ州ミネアポリスの橋が崩落した事件は、原因ははっきりしないが、構築物の維持管理に問題があったことをうかがわせる。

 旧国鉄には「橋守」という仕事があったという(朝日新聞9月7日付け朝刊)。大きな橋の近くに住んで、橋に異常がないか毎日点検する人がいたのである。家電製品でも、橋などの構築物でも、新品のときは問題が起きないが、1年、2年‥‥とたつと、どこか傷んでくる。構築物の場合、家電のように簡単に買い替えるわけにはいかないから、さびを防ぐため塗装がはげたらすぐ塗り直すなどが必要だ。旧国鉄には、そうした日々のメンテナンスによって、長持ちさせる橋守がいたというわけだ。いまはどうなのか。

 ところで、国や地方公共団体の財政は、企業と違って単年度の現金主義である。将来の造り替えに備えて減価償却を行い、そのときのためにカネを留保するということはない。したがって、財政の余裕がなくなれば、橋などの造り替えなんて不可能になる。国も地方自治体も、財政難で公共事業への予算を圧縮しているが、過去の公共事業のツケともいうべき構築物の保守やスクラップ・アンド・ビルドに必要なカネにさえ苦しむことだろう。

 ハコモノはもうかる、というので、いまでも、景気回復テンポの鈍い地方では、公共事業予算の拡大に期待する向きが少なくない。しかし、企業会計の方式や連結決算の方式で地方財政の試算を行なっているように、地方財政の危機の実態がより鮮明になっている。将来の財政にいっそうの負担を課すのではないか、という視点を地域住民は持つようにしたい。 

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2007年9月 5日 (水)

なぜ財政危機に至ったのか、を訴える森木亮氏の著書

 国債増は長期金利の上昇で「国債費増」となる。国債費増は大切な税収を食い潰す。こうした「負のスパイラル」を急いで断ち切らないと、日本は確実に破産する。しかし、蛮勇を奮って、是が非でも変えてやるという気位の高い人間がどこにも見当たらない。

 『ある財政史家の告白「日本は破産する」』(森木亮著、07年2月刊)は「まえがき<これでも日本国と呼べるのか>」で、そう悲憤慷慨している。

 この本は、なぜ、日本の財政が破産に近い状態にまでなってしまったか、を歴史的に叙述しているので、読みやすい。昭和41年(1966年)に戦後、初めて国債を発行してから約40年。その間に、GDPをはるかに上回るほどの国債発行残高を抱えるにいたった。あたかもブレーキがないかのように国債依存度を高めてきた背景には、著者のいう「亡国の技巧」が作用していることは否めない。

 「亡国の技巧」として挙げている1つは、1984年度に赤字国債の償還期限を60年にしたことである。本来、当該年度中に返済すべきものをこうしてゆるめたから、発行残高の限度が一挙に拡大した。

 2つ目は、建設国債でつくる社会資本の耐用年数を60年にしたことだという。建設国債の償還期限60年に合わせたものだ。しかし、ある試算だと現実の耐用年数は平均32年にすぎない。32年たったら、その社会資本は使い物にならないが、借金はその後28年間にわたって残るという。

 第3に、借金を先送りする借換債の誕生だという。一般会計から繰り入れて積み立てる国債整理基金の制度があり、その基金を取り崩して償還することになっていたのを借り換えという手段を導入した。

 それらのいずれも、大蔵省(当時)の幹部らが実施に踏み切ったと著者は批判している。財政悪化の原因がもっぱら財務省(旧大蔵省)にあるという著者の見方には必ずしも賛成しないが、天文学的な債務の累積を許した制度上の欠陥がどこにあるかを教えてくれる。

 読み終えて感じることは、著者ならずとも、財政建て直しのために命をかけるぐらいの政治家や財務官僚がいないのを私も情けなく思う。

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2007年9月 4日 (火)

隠蔽されてきた年金保険料の着服

 拠らしむべし知らしむるべからず、という言葉がある。公的年金の記録問題で強く感じる1つは、都合の悪いことは隠蔽するという役所の体質である。前鳥取県知事(現慶応大学教授)の片山義博氏の表現によれば、「役所というのは一種のカルト集団のようなもので、外から批判されるほど内部の結束が固くなり秘密主義になります」(日本経済新聞8月23日付け夕刊)。

 4日の毎日新聞朝刊は、社会保険庁が前日に公表した同庁職員や市町村職員による年金保険料などの着服の個々の案件を一覧表にして掲載している。社保庁職員の不正に限っても50件のうち、同庁がこれまでに積極的に公表したのは24件にすぎなかったという。着服が判明しても依願退職を認めたケースもある。それに、着服したカネが元にもどっていない事例もある。積み立てたはずの保険料が、ここでも目減りしているわけだ。

 この新聞記事を見て、早速、社保庁のホームページを見てみたが、着服の個々のケースを一覧表にしたものが探しても見当たらなかった(どこか特殊な箇所に載っているのかもしれないが)。都合の悪い話は知らせたくないというのは情報公開の意味がわかっていない。

 社会保険庁のホームページに3日にアップされた「年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録体制の確立について(進捗状況)」は、8月23日に開かれた年金業務社会保険庁監視等委員会(第2回)に社保庁案として提出した「年金記録適正化実施工程表」に掲載した事項を中心に説明するというもの。その中に「保険料着服への対応」という項目がある。

 その中で、着服を防ぐためのチェックの仕組みを述べ、それを改めて周知徹底するよう7月31日に社会保険事務局を通じて社会保険事務所に指示したと書いている。それに続いて「また、万一、不適正処理が行なわれた場合は、刑事告発、免職、損害賠償請求という措置を採るとともに、速やかに公表しています」と言っている。

 しかし、社保庁が本当に「速やかに公表」していたら、4日付けの新聞記事はもっと前に個々の不正事件として記事になっていたはずではないか。また、社保庁や市町村が適時適切に刑事告発などを行なっていたのなら、社保庁を持つ厚生労働省の大臣になったばかりの舛添氏が「刑事告発すべきだ」などと言う必要もない。

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2007年9月 2日 (日)

05年度の国の財務書類を読む

 8月下旬に財務省が05年度(平成17年度)の国の決算について、①一般会計と特別会計を合算し、債権債務等を相殺消去したもの、②さらに独立行政法人、特殊法人等、認可法人、国立大学法人等および日本郵政公社を連結したものーーを作成して発表した。企業会計の考え方を用いて作成されたもので、一般会計だけでとらえるのとは、国家財政の姿が違ってみえる。

 ①をみてみよう。当年度に発生した費用を示す「業務費用計算書」によると、総額は122.7兆円(一般会計だけだと76.4兆円)。内訳は年金・政管健保等46.2兆円(うち年金36.6兆円)、補助金等31.1兆円、地方交付税20.3兆円の3つで8割を占める。そのほかは利払費8.7兆円、人件費5.4兆円、減価償却費4.5兆円、事務費4.1兆円など。

 05年度末のストックの財政状況(貸借対照表)はというと、資産合計691.4兆円、負債合計980.6兆円(うち公債627.0兆円)で、負債超過額289.2兆円。

 資産の主なものは、貸付金246.0兆円、有形固定資産177.5兆円、有価証券84.1兆円、運用寄託金83.0兆円、出資金47.4兆円など。負債の主なものは公債627.0兆円、公的年金預かり金147.6兆円、預託金86.0兆円、政府短期証券59.4兆円など。

 道路、河川など売却なんて考えられないものや、回収不能な融資、出資があるから、実質的な負債超過額はもっと大きいだろう。財務省は「将来の国民の負担となる債務」としては普通国債残高約527兆円が1つの目安だとしている。

 ところで、①に含まれていない国債等の債務償還費は180.0兆円という。

 次に②をみると、業務費用は148.5兆円で、①よりも25.8兆円も膨らんでいる。内訳は年金・政管健保46.2兆円、補助金25.3兆円、地方交付税交付金等20.3兆円、保険金等支払金16.0兆円、事務費12.1兆円、人件費10.5兆円、減価償却費6.9兆円、利払費6.0兆円などとなっている。

 貸借対照表は、資産合計840.2兆円、負債合計1102.3兆円。負債超過額は262.1兆円、前年度末より6.1兆円減少した。主な資産は貸付金270.2兆円、有形固定資産265.0兆円、有価証券183.7兆円など。主な負債は公債401.1兆円、郵便貯金198.1兆円、公的年金預かり金150.9兆円、責任準備金138.4兆円など。

 数字を羅列してしまった。こうした天文学的な数字をきちんと読み解くのはとても難しいが、国の財政がひどい状態にあるのは理解できよう。一般会計だけを見るのではなく、連結決算というか、政府の活動全体をまとめた数値で財政再建を考える必要があることを財務省も国民に伝えたいのだ。 

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2007年9月 1日 (土)

日本社会は自壊しつつあるのか

 無茶苦茶暑かった8月の夏が終わった。でも、日々のニュース報道を見ていると、カッとくる話の多いこと、多いこと。

 ストーカー警官が女性の家に不法侵入し、女性を射殺し、自分も拳銃自殺した事件で、警察は死亡警察官に退職金を5割増しで払うと決めたという。この報道は何かの間違いかと思ったが、そうではないようだ。もしも、警察官が生きていたら、殺人犯として逮捕されるだろうし、懲戒解雇だろう。当然、退職金なんて出っこない。それなのに、自殺すれば、ご褒美まで出るの? ついでに言うと、退職金は私たちの税金から出すことを警察のお役人たちは忘れているらしい。

 国土交通省の08年度予算概算要求で、道路特別会計の予算を上回る道路整備予算を要求したという。小泉政権のとき、道路特別会計のカネを全部、道路整備に充てている仕組みを廃止しようという声が高まった。財政危機に直面しているし、環境問題の観点からも、もう道路をどんどんつくる時代ではないという理由からだ。しかし、道路族議員や国交省、さらに自動車業界などが猛烈に抵抗し、その結果、どうしても必要な道路はつくることとするが、それで余ったカネは一般財源に充てることで決着した。

 しかし、今回の概算要求で、国交省は1円たりとも一般財源には渡さないという意思を表明したわけだ。「必要な道路」を彼らの都合のいいように解釈し、国民経済全体の利益をになう立場を放棄したのである。官僚の腐敗、ここにきわまれり、だ。

 厚生労働省の九州厚生局局長を最後に退職したOBが社会福祉法人「枚方療育園」の前理事長と縁戚関係にあり、多額の金品を受け取っていたという。OBの言う通り、仕事上、便宜をはかったことはないとしても、厚生労働省と社会福祉法人という関係があって、多額の補助金が国から流れている以上、法人側から一方的に利益供与しているというのは、第三者の目からみれば贈収賄や癒着に見える。それにしても、前理事長の羽振りのいいこと、福祉施設の経営はもうかるものらしい。まあ、以前から言われていることだけど、そこにメスは全然入りませんね。

 国家公務員倫理法に触れる云々はさておき、この官僚OBの側に、「オレのほうが偉いのだから、いろいろしてもらって当然」という特権意識が強かったように思われる。厚生労働省(そのうちの旧厚生省系)および社会保険庁の職員には、公務員として、やってはならないことのわからない者がかなりいる。彼らは仕事柄、○○してやる(措置)ということが多かったから、上下意識ないし官尊民卑の意識が骨の髄まで染み込んでいるのだろう。

 山形県の置賜農業共済組合が1999年、農業災害補償法に基く共済掛金を水増しし、国の補助金を不正に受給していた。それが3年ほど前に会計検査院などから指摘されたにもかかわらず、いまもって返済が実行されていない。同組合の組合長はこのたび農林水産大臣になった遠藤武彦衆議院議員が勤めていて、8月31日にあわてて組合長理事を辞任した。不正受給(税金ドロボー)していた組織のボスが補助金を出す側の農水省の親玉になるなんて、奇っ怪な出世物語?

 補助金を水増し請求したり、不正に使用したりする話は農業分野に限らず、いくらでもある。医療費、介護費用などの水増し請求もちょくちょく表沙汰になる。まあ、税金のムダ遣いは限りなく存在するとみてよかろう。

 大阪市で開催された50km競歩で、案内係が周回数を勘違いしたため、選手が失格。東京の私鉄で、発車してすぐにドアが開いた電車があった。生後2ヵ月の乳児が泣き止まないため、若い父親が殴ったりして殺した。妊娠したら、身体に気をつけるべきなのに、深夜2時半ごろ、スーパーに行っていて、腹痛が起き、救急車に。受け入れる病院が容易に見つからず、死産に、etc。どの話も日本社会が自壊しつつある現れに思えてならない。

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