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2007年9月27日 (木)

福田さんは財政がわかっているのか

 新聞・通信社などの世論調査では、福田新首相に対する支持率は60%弱という。まだ首相として所信表明をしていない段階の調査だから、多分に安倍政権との比較感からくる感覚的な受け止め方を示す数値にすぎないと思われる。

 もっとも、福田さんの政策の方向として1つだけはっきりしたことはある。それは、自民党と公明党との連立政権合意書に、高齢者医療費負担増の凍結をうたったことである。同意書には障害者の福祉サービス利用における自己負担を導入した障害者自立支援法の抜本的見直しや、母子家庭への児童扶養手当の一部削減の凍結も含まれている。これらを実現すると、国庫だけでも年間1千億円を上回る負担が生じるようだ。だが、その財源をどこから捻出するかが合意書には書かれていない。

 額賀財務大臣には歳出・歳入一体改革を進めるよう指示したようだが、経済財政諮問会議を担当する大田経済財政担当大臣に対する指示には歳出・歳入一体改革がなかったと報道されている。そのあたりの真相は不明だが、福田さんが強力に財政改革を推進する姿勢をみせたことはない。

 しかし、景気のいい局面でさえ国の長期債務残高が膨れ上がる極端な借金依存体質を是正しなければ、のちの世代に財政負担を先送りするばかりだし、財政破綻が近い将来に起きる可能性は増大する。そうした危機感を福田さんが抱いているようには感じられない。道路特別会計の一般財源化に福田さんは否定的である。これも、日本財政の危機や時代の変化に疎く、まだ旧来の自民党利権政治のしっぽを引きずっているからだろう。

 井堀利宏東大教授は近著『「小さな政府」の落とし穴』の中で、「財政健全化努力を続ければ、わが国財政は十分に維持可能である」、「それでも、時間的余裕はあまりないと見るべきだろう。財政危機は、いったん表面化すると、一気に問題が大きくなる」と述べ、「2010年頃からは団塊世代が老年世代として社会保障受給の中心世代となり、歳出の増加圧力が高まってくる。したがって、できるだけ早急に財政改革の道筋をつける必要がある」と指摘している。財政再建策としての「小さな政府」論に対しては「歳出削減には限界があり、最小限の増税をせざるをえない」と言い切っている。

 同書の締めくくりのところでは、「財政規律が緩んだままで将来世代に負担を先送りしている状況」であること、「歳出の無駄の増加や財政赤字の累増は、公務員や政治家の既得権益から生じているばかりではない。むしろ、われわれ国民が政府・財政にただ乗りしてきた結果でもある」と述べている。

 そして、地方分権を推進して負担と受益の関係をリンクして住民がコスト意識を持てるようにすること、そのためには地方交付税制度を抜本的にスリムにすること、納税者番号制度を導入すること、「改革の将来像を明示して、世代間、地域間の公平性と効率性を促進させるような社会保障改革」などを提案している。

 同書は「痛みなき財政再建路線は危険だ」という副題を付けている。福田さんはじめ新政権の皆さんに必読の書としておすすめしたい。

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