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2007年10月29日 (月)

国の歳出増を求める動きがあちこちで

 いま各省大臣の中で最もメディアに登場する舛添要一厚生労働相がウイルス性肝炎患者のインターフェロン使用による治療費負担を軽減する支援策を明らかにした。インターフェロンによる治療を受けている患者を10万人に倍増させたいというもので、公費の投入は7年間に1千億円から2千億円程度の見通しという。

 これに異議をとなえるつもりはないが、最近の報道には、社会保険庁のでたらめなど行政の過ちの尻拭い以外にも、政策として妥当か否かはさておき、国の歳出増を求める動きが以下のように相次いでいる。

 そうした例を挙げるとーー

・来年4月に70~74歳の高齢者医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げるなどの予定を、いまになって与党は見直そうとしている。70~74歳の窓口負担増を1年凍結し、75歳以上の新たな保険料徴収については半年間凍結し、次の半年間は負担予定額の10分の1の負担にとどめるなどになりそう。これが行われれば、国は年間1千500億円程度の歳出増になる。

・政府は生産過剰でコメの市場価格が下がっているため、市況対策としてコメを買い上げ、政府の備蓄量を増やす方針という。自民党は若林農林水産相に余剰米を備蓄の名目で34万トン買い入れ、古米の放出を1年間凍結するよう申し入れている。備蓄を積み増せば数百億円規模の歳出増になる。

・子供を生んでからも働き続けたい女性の割合を引き上げる(現在38%→10年後に55%)には、育児休業・保育サービスなどの充実のため、少なくとも新たに年間1兆5千億円はかかるという(厚生労働省試算)。現在、こうしたサービス(約4兆3千億円)のうち、国や地方自治体が4分の3を負担している。政府の「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議がこれを検討している。

・政府・与党は中小企業オーナーの後継者に対する相続税の負担を軽減しようとしている。非上場株の課税価格減額(1割)を事業用地並みの8割に下げようとするもので、税収の減少は年200億円から300億円程度の見込み。

・関東地方知事会(1都9県)は地方交付税の増額を求めている。三位一体改革で削減された交付税総額を復元、充実すべきだという。また、全国知事会は三位一体化改革で減った約5兆1千億円(年間)のうち、不合理な減額に相当する9600億円の復活を求めた。

・産業構造審議会の基本政策部会は、中学校より若い世代に対する教育の充実こそが経済成長や格差解消などにとって重要だという趣旨の報告書をまとめ、就学前教育の無料化などを提言した。

 ーーこれらのうち、07年度の補正予算で実現を、というものもあれば、08年度およびそれ以降に実現をというものもある。一方で、証券優遇税制を廃止すべきだという意見が政府税制調査会に強いとか、年金など社会保障の膨張に対応して消費税引き上げ論議が盛んになるなど、歳入増に関する動きも一部みられる。だが、全体としては、与党が次の衆議院選挙を意識してバラマキに戻りかねない危険性を感じる。

 平時における国家予算編成で、財政再建の道筋をゆがめる歳出膨張は絶対にしてはならない。道路特定財源に対する姿勢をみると、福田政権はそこがどうも怪しい。いまこそ、歳出削減との見合いで歳出増を認めるといった財政規律をきっちり設ける必要がある。

 ところで、「日本経済復活の会」というところが、朝日新聞10月26日付け朝刊の1ページまるまるを使う意見広告を出した。「日本はここまで貧乏になった」という大きな見出しとグラフにより、1人当たりGDPで、世界1位から18位に転落し、1971年水準に逆戻りと指摘。「国の借金は公共投資を増やせば軽くなる」と述べ、「国の借金が大変なら日銀が買い取れば良い(長期国債買入)という海外エコノミストの声」を紹介している。10月19日のブログ「日経に載ったおかしな全面広告」で取り上げたものと、どこかつながっているような気がする。なんとなく不気味な感じがして仕方がない。 

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