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2007年10月 7日 (日)

“戦前・戦中”に対する思い込みの誤り

 「戦時下、日本の文化は窒息していた。西洋音楽は禁止されていた。そういう戦後の通念に疑問を持つ。1930年代の後半、40年代の前半にはいい音楽作品が多い」ーー片山杜秀氏(政治思想史研究者、音楽批評家)は、「芸術を! つくる/楽しむ/研究する」と題した人文科学進行プロジェクト公開シンポジウム(独立行政法人日本学術振興会主催)でそう述べた。

 戦時中というと、何もかも抑圧された暗黒の時代だと思いがちだが、片山氏は1937~1945年に発表された山田一雄(和男)、伊福部昭、早坂文雄、橋本国彦らの作品を挙げ、「日中戦争以後、1944年頃までに日本近代音楽の器楽を中心とする黄金時代がある」と指摘した。クラシック音楽に関する限り、通念とは異なって活性化していたという。ただ、敗戦後、軍国主義批判とのからみで、作曲家たちも沈黙してしまい、演奏もされなかった。そのため、通念がいまだにまかり通っているということのようだ。

 片山氏は、敗戦の年の1945年1月1日に日比谷公会堂で初演された山田一雄の交響曲「おおむたから」について、葬送行進曲と題されたマーラーの交響曲第5番第1楽章の本歌取りであり、それに天台宗の声明の旋律を乗せたものだと断定。これは玉砕をめざす当時の日本の国民を葬送する死の音楽だと述べた。ちなみに「おおむたから」は古事記や日本書記に出てくる言葉だそうで、天皇の民、万民などの意らしい。

 戦後の教育の結果、私たちは戦中や戦前はひどい時代だったと切り捨ててしまいがちだが、大正デモクラシーの時代のように、豊かな時期もあった。それが戦中・戦前の日本における西洋音楽の豊穣な成果をもたらした背景らしい。

 思い起こすと、私が若い頃に学んだ歴史では、士農工商の身分差別でがんじがらめの江戸時代を暗黒の時代のようにとらえていた。いまの歴史学では、江戸時代を民衆の活気あふれる時代だったととらえているようだ。そして、環境・エネルギーの視点からは、完璧な循環型社会だったと高く評価している。歴史の見方はこんなにも変わるものか、と驚く。 

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受信: 2007年10月 7日 (日) 15時47分

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