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2007年10月21日 (日)

社会保障費の増加に対応して増税を打ち出した経済財政諮問会議

 10月17日、福田首相のもとで開かれた経済財政諮問会議では、医療・介護給付の増大傾向に対応して、財政再建を踏まえつつ、どのぐらいの増税が必要になるか、の試算(内閣府が作成)を有識者議員(4名)が提出した。

 急速な少子高齢化と日本経済の低成長は、さまざまなひずみを経済社会に引き起こしている。それが極端に表れているのが社会保障の分野である。

 この日、舛添臨時議員(厚生労働相)が参考として配付した資料を見ると、1枚目が「社会保障給付費の推移」と題するグラフである。1970年代以降、年金、医療、福祉その他を合計した給付費総額は斜めにほぼ直線的に増加している。2007年度(予算ベース)は国民所得383.2兆円に対し、給付費総額は93.2兆円に達する。うち、年金が49.5兆円、医療28.7兆円、福祉その他15.5兆円である。

 今後も給付は増える一方なので、政府は2004~06年の年金、介護、医療の制度改革で伸びを抑えているが、それでも、2015年度には給付が116兆円に増える見通しだ。さりとて、社会保障給付費の対GDP比では、日本は西欧諸国よりかなり低い。米国よりは高いが。

 こうしたデータをどう読むかは議論の分かれるところだが、こうした給付(受益)増をまかなうには国民が負担(税、保険料、個人負担)増を受容することが欠かせない。フリーランチはないのである。医療費を例にとれば、増税するか、公的医療保険の保険料を上げるか、治療を受けたときに支払う個人負担の割合を上げるか、などである。もちろん、医療におけるムダなどを殺ぐといった効率化も必要だが、国民が給付に見合う負担を受け入れることが、持続可能な社会の形成につながる。

 新聞各紙は増税のところだけを大きく取り上げ、しかも、それを消費税でまかなうと2025年に最大17%になるなどと報じたところもある。歳出削減は最優先の課題だが、それだけで安定的な社会保障制度を確立することはできない。その意味で、給付に見合う負担を国民に求めるということ、言い換えれば、増税という一番国民が望まない政策案を真正面から提示したことは評価したい。

 官僚支配に基く中央集権国家だったため、日本の国民は政府から与えられること、してもらうことには熱心である。だが、公的サービスのコストがいくらなのか、それに見合って、いくら自分が支払うべきかについては全く知らないし、知ろうともしない。だから、ほとんどの国民は財政や社会保障制度などを、受益と負担の両面からみるなんてしたことがない。

 選挙を意識する政治家、政党にしても、選挙民においしい話はしても、増税などの国民負担の話は避けてきた。いまも、そういう政治家、政党が多い。そうした中で、あえて、与党の自民党が増税を提起したのには、消費税を上げないという民主党との違いを明白にし、国民に正しい判断を期待するという戦術的なねらいもあるだろう。

 しかし、次の国政選挙では、国民が増税をいやがって、自民党に投票しないという可能性も相当あるように思う。それを承知で、ここで自民党が受益と負担のありかたを国民に問うたことで、日本の政治は成熟に向けて一歩進んだと言える。

 小泉政権時代のように、経済財政諮問会議が改革をリードすることは現在の政治情勢下ではありえない。でも、国が扱うカネの中で、社会保障制度関連のカネが突出しているだけではなく、内政の課題の中でも厚生労働省の関与する分野が圧倒的に重要である。したがって、厚生労働大臣が諮問会議の正式メンバーにならないのはおかしい。福田首相はそれに気付いて、早く改めるべきだ。 

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