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2007年11月28日 (水)

「日本のシステムはインサイダーの保護」との指摘

 ハーバード大学政治学部の准教授であるマルガリータ・エステベス・アベさんが「日本の福祉国家:現状と課題」について27日、語るのを聞いた。連合総研設立20周年記念シンポジウムでの発言である。興味深い点を紹介するとーー

 日本の福祉政策は社会政策としてよりも、これまで土建国家、護送船団方式、農業保護といわれるような代替的なものだった。規制によって競争を制限し、あるいは公的企業をつくって失業をなくしてきた。企業を守って、仕事を守ることで国民福祉を維持してきたもので、賃金労働者とその家族に対する所得保障や、介護、保育などの社会サービスは企業や家族(女性)に任せてきた。

 大企業、その基幹労働者、金融機関、官僚制、与党政治家の「票とカネ集め」に有利なこのシステムは、そこから疎外されたアウトサイダーにとって不公平なものである。また、市場原理が貫徹されないので、資源の効率的な配分が阻害されてきた。自由な職業選択およびライフスタイルも著しく阻害されてきた。ひとたび、ある職場に入ったら、ほかに移ることが難しいため、過労死や自殺、あるいは妻が代わりに働くという選択肢がない。

 また、日本の福祉政策は資本蓄積型、つまりカネをためるというところに特徴がある。生命保険、郵便貯金などへの優遇措置がとられ、特別会計に貯める社会保険制度を強く志向してきた。しかし、貯めたカネの運用は市場原理によらず、官僚の思うがままに使われてきた。

 こうした日本の福祉政策をどうすればいいか。従来の仕組みに守られてきた人々(インサイダー)はいままでのままがいいという立場だ。彼らは税金を払いたくないし、市場での競争もしたくない。だから、高負担の福祉国家はいやだし、市場競争もきらう。

 日本の政治に目を転じると、中選挙区制度のもとで特定利益団体のための政治、つまりインサイダー保護の政策がとられ、官僚がそれにのっかって自らの利益を確保してきた。しかし、小選挙区の採用で、組織票が弱体化したので、特定団体への利益供与は削減可能となり、他方で、国民の多数が受け入れる福祉システムへの転換が必要になっている。

 二大政党のもと、増税など選挙民にとって負担増となる政策をとると、次の選挙で与党は負ける可能性が上がる。こうしたペナルティーを考えると、与野党が政策協定を結ばないと、財源対策としての増税は難しい。

 インサイダーのための福祉から、生活保障のための福祉に転換する必要があるものの、国民の多数が納得し、いま以上のコストを負担することに合意する仕組みをどうやってつくるかが日本の課題である。

 日本では米国の福祉政策に誤解がある。米国ではインサイダーを保護するのではなく、競争に負けた人を守る。非営利の大きなセクターがあり、ボランティア人口が多い。寄付も多い。冷たい社会ではないから、市場社会が成り立つ。スカンジナビア型にも誤解がある。デンマークやスウェーデンにはきちっとした市場があるが、公的雇用が多い。公的セクターで女性がたくさん働いている。男性は主にプライベート・セクターで働いていて、大きい公的セクターを支えている。

 ドイツは住宅政策と都市政策がしっかりしている。だから、住宅コストが日本よりはるかに低い。それに社会が物質的(過剰な消費?)でない。日本は住宅コストを下げる必要があるし、カネのかからないレジャーへ国民の関心を振り向けるようにすべきだ。

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