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2007年12月12日 (水)

損失も株式取得もケタが違いすぎる

 スイスの大手金融機関、UBSが米国のサブプライムローンに伴う新たな損失として100億ドル(約1兆1千億円)の評価損を計上すると発表した。米シティグループもUBSを上回る損失を公表している。驚くのはこれら欧米金融機関の損失の大きさだけではない。資本補強のため、外国の政府系ファンドから受け入れる投資資金の規模も目をむくほどの大きさだ。

 UBSはシンガポール政府投資公社(GIC)に1兆1千億円の転換社債を引き受けてもらったほか、中東の投資家にも2千億円の転換社債を引き受けてもらった。先月には、シティグループがアブダビ投資庁から8千億円の出資を受けた(日本経済新聞11日付け朝刊)。

 ほかの産業分野に目を転ずると、資源大手の豪英BHPビリトンが先月、やはり資源大手のリオ・ティントに買収を提案した。金額は1200億ドル(約13兆6千億円)を超えるといわれる。そのリオ・ティントはカナダのアルキャンの買収にかかっていたところに、BHPビリトンが買収を申し入れてきたわけだ。

 この話が表面化すると、中国の宝山鋼鉄集団公司が鉄鉱石の価格吊り上げを懸念し、リオ・ティント買収を検討していると表明した。さらに、中国の外貨準備の一部、2000億ドルを運用するために9月に設立された中国投資公司が宝山鋼鉄と組んでリオ・ティント買収にかかることを検討していると明らかにした。

 こうした動きが示すのは、第一に、民間企業の株式(いずれ株式に転換できる転換社債を含む)を取得するのに動く資金規模が大きいものでは兆円単位~10兆円単位になってきたことだ。第二に、国家資金が株式取得や買収に大々的に使われるようになったことである。グローバリゼーションのもとでの資本の自由化は、民間企業の間での競争の段階から、国家資金までもが動員される段階に移行したと言えよう。

 こうした新たな局面に対し、日本の企業は、あるいは日本の国家は十分な心構えや迎え撃つ態勢ができているか。シンガポール政府公社やアブダビ投資庁のような株主は経営権を握ることは考えていないだろうが、BHPビリトンなどの買収の話は経営権をねらったものだ。鉄鋼では、世界最大のミタルが新日本製鐵などに買収を仕掛けてきたとき、買収を自然な経済活動とみなすべきか、日本経済に悪影響があるとして政府が阻止に乗り出す必要があるか。

 1年以上前だったと思う。中国の政府系企業が米国の石油会社を買収しようとしたら、米議会が反対し、買収話はやめになった。そうした歯止めが必要か、まじめに考える時期である。私個人は、主要な業界においては、外国資本に支配されていない企業が1社ぐらいはあったほうがいいと思う。その業界に1社でも日本に根ざした有力企業がいれば、同業の外資系企業に影響を及ぼすし、日本の経済社会の事情を踏まえて活動することが期待できるからだ。

 外国に本社がある企業は、支配下に置いた日本企業から技術やノウハウなどを取り込んだあと、日本の拠点を縮小・廃止することがあるし、世界的なリストラを行うときに、雇用など日本の事情を全く考慮しない。ドライである。もちろん、日本の企業にしても、海外に工場を移転したりしている。だが、それは最後の最後の手段としてである。

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