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2008年1月26日 (土)

日本がアジアの金融センターになるのは至難

 「金融・資本市場改革の方向性」に関するシンポジウム(1月26日)を聞いた。池尾和人慶応大学教授、松尾直彦東京大学教授(前金融庁金融商品取引法令準備室長)、斉藤惇東京証券取引所グループ代表執行役社長らが講演とシンポジウム(司会、上村達男早稲田大学教授)に登場、日本の金融サービス産業が強くなるために乗り越えるべき問題点を指摘した。

 日本経済が発展するには、製造業以外に、「国内で雇用と税収を生む産業を拡大させなければならない」(池尾氏)。その有力候補が金融サービス産業だという。そのための基盤づくりが金融商品取引法の成立、新しい会社法の制定などである。しかし、ロンドン、ニューヨークに追い付くどころか、アジアの金融センターとしての地位を確保することさえも危うい。そうした実態が各論者から次々と明らかにされた。

 印象に残った点を紹介すると、まず、池尾氏は講演で、シンガポールなどが国家的優先課題として金融・資本市場の強化に取り組んでいると紹介したうえで、日本は金融でも食っていくのだという金融立国の覚悟を持たないでいいのか、と迫った。金融サービス産業の意義を理解せず、マネーゲームで食うなんてという考えがいまだにあるように、金融立国のコンセンサスはまだ日本にはないからだ。

 松尾氏は金融商品取引法制の基本的視点として利用者の視点、市場の視点、国際化の視点の3つを挙げ、国際化の視点に対して、日本の金融機関が冷ややかだと述べた。また、「品位ある(インテグリティ)ビジネスをするため、外資系企業は金融庁によく相談に来るが、日本の金融機関は来ない。この点でも日本の金融機関は負けている。いまの日本の金融機関は20年間、体質が変わらない。官僚制そのものだ」と厳しい見方を示した。

 斉藤氏は「日本は個人が異様にリスクをとる社会、プロがリスクをとらない社会だ」と述べた。日本に対する外国からの投資は機関投資家によるものだが、日本では、外国への投資を個人がいきなり行う。こんな国はないという。日本について「こんなにカネのある国はない。預貯金をリスクマネーに転換するだけで金融サービス産業は爆発的に大きくなる」と語った。

 さらに、斉藤氏は「外国の金融関係者は日本は予見性がないので信用できないと言っている。同じことが検査によって良かったり、悪かったりと異なって判断されるからだ。また、海外投資家が日本株への運用を行うとき、運用の意思決定拠点が日本とみなされると日本でも課税されるというようなことでは、運用会社は日本からシンガポールなどに拠点を移す」と。「日本政府は軍事技術の流出防止のために外国為替管理法を改正し、10%以上の株式取得規制を導入したが、いくつもの年金などを抱えているフィデリティなどはすぐ引っかかる。そこで、事前申請で詳しく報告するから、見掛け上10%を超える取得であっても認めてほしいと言ったがノーだったという。硬直的だ」とも述べた。

 これに関連して、松尾氏は「官僚が国内の視点だけでやるからそうなる」と語った。同氏によれば、「金融庁内でも、強いのは国内派だ。英語が最大の問題」だそうだ。斉藤氏は、英語ができる人材が日本に少ないことから、日本の教育制度に疑問を投げかけると同時に、日本の金融人材が乏しい理由の1つとして、日本の金融機関のキャリアパスに問題があることも指摘した。

 このシンポジウムを聞いて、日本の金融サービス業が強くなって、日本の経済発展に貢献するようになるには、思っていた以上に、いろいろ厄介な障壁があるなあと痛感した次第だ。

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