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2008年1月20日 (日)

祝詞化?する「日本経済の進路と戦略」

 1人当たりのGDP(ドル表示)で、1993年にOECD諸国中第2位(世界では第2位)だった日本は2006年に第18位(世界では第20位)に下がった。このデータを見て驚くのは、絶対額が3万5008ドルから3万4252ドルに下がっているのは日本だけだということだ。

 1993年に日本より1割ほど多かった世界第1位のルクセンブルグは2006年に8万9840ドルと日本の2.5倍余にまで成長した。製造業のウエートが大きいドイツは伸びが低いが、それでも、この間に4割強増え、3万5368ドルと日本を抜いた。1993年に2万5374ドルで第6位だった米国は、2006年に4万3801ドルとなり第7位だった。

 ドル換算でだが、日本経済は13年間にひとり縮んだ。それが異常なことは世界経済の中で見れば一目瞭然である。これでは、最近の株式市場の大幅下落が外国人投資家に見放されたせいだとする説を否定しがたい。

 1月17日の経済財政諮問会議で決まり、18日の閣議で承認された「日本経済の進路と戦略ーー開かれた国、全員参加の成長、環境との共生ーー」は、こうした日本経済の低迷から抜け出すための成長力強化を打ち出すとともに、地方の自立・再生や歳出・歳入一体改革、社会保障制度の改革などの政策課題を取り上げている。

 しかし、政策課題を書き連ねてはいるものの、それらを何が何でも実現するぞ、という気迫が感じられない。それどころか、祝詞を読んでいるような気持ちにさえなってくる。連立政権が実際にやっていることと、ここに書いてあることとが遊離しているからだ。

 「財政については、将来に負担を先送りしない構造を実現していかなければならない。また、それに向けた取組を着実に進めていくとともに、長期的な財政健全化の道筋を明確にしていくことで、将来の負担増に対する国民の不安感を取り除くことも重要である。それは、グローバルな金融市場で全世界がつながっている今日において、海外からの信頼を確保することにもつながる。」

 おっしゃる通りである。また、「2011年度(平成23年度)には、国・地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成する。」とも言う。だが、そのための具体策には触れていない。一方で、内閣府が参考試算として提示した経済見通しによれば、楽観的なケースでも、2011年度の基礎的収支は7千億円程度の赤字、対GDP比0.1%の赤字になる。これでは、上記の引用文にある「長期的な財政健全化の道筋を明確にしていくこと」にはなっていないし、いたずらに国民を不安に陥れるだけではなかろうか。

 いまの日本はどっちを向いても不安、不満があふれている。しかし、それは冒頭の1人当たりGDPの数字が示すように、配分すべき果実が減っているのに、皆が高成長時代の意識のまま、利益をもっとよこせと主張しているからだ。負担そっちのけで。

 医療問題1つとっても、日本医師会はじめ関係諸団体は医療費の引き上げを求める一方で、患者の医療費負担増には反対している。しかし、そこには、誰がどういう形でその費用増を負担するのかが欠けている。彼らは日本全体としての整合的な処方箋を書くのではなく、自分たちの利益を主張しているだけである。

 この「日本経済の進路と戦略」は、日本が直面しているそうしたさまざまな問題に対して整合的で、かつ明確な指針を示していない。小泉内閣の竹中経済財政担当大臣が作成していたときと比べ、心に訴えてくるものが乏しいように思う。

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コメント

ドル換算の数字が記載されていますが、為替レートの動向はどうなんでしょう。
 
最後の段落で誉めている政策はアピール度は高いことは承知していますが、実際には、それ故の現在の貧富の差だと思っています。詐欺に遭ったと感じている国民の方が多く、今となっては、とても良い政策とは思えません。
 
問題を先送りしていたバブル前の方が良かったように感じるのは何故なんでしょう。錯覚かもしれませんが実に不思議です。

投稿: たぁ坊 | 2008年1月20日 (日) 21時39分

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