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2008年1月30日 (水)

本質はそっちのけの与野党対立

 「つなぎ法案」をめぐる与野党対立は、1月30日、衆参両院議長のあっせんで一旦、冷静さを取り戻した。しかし、問題の本質に迫り、国民に納得されるような結論をめざしてほしいものだ。 

 与党は暫定税率をさらに10年間延ばして道路特別会計―道路特定財源の仕組みを維持しようとしている。これに対し、民主党はガソリンにかかる暫定税率をやめさせて値下げを実現しようとする方針をとり、真っ向から対決する形となった。しかし、どっちもおかしい。

 本質的な問題は、税収を特定目的にだけ充てるという特別会計を廃止して一般会計に統合すること、そして、歳出全体の中で社会保障その他の必要度に応じて支出内容を決めるようにすることである。これに反して、道路特別会計―道路特定財源の仕組みは税収をほぼすべて道路建設に優先的に振り向けるというものだから、そのまま存続してはならない。与党の法案はこの仕組みをさらに10年続けようとしているのだから賛成できない。

 いまの仕組みだと、すべて廃止するとした場合、道路建設のための特定財源である揮発油税などの税もやめなければならないことになる。しかし、財政危機のもとにある日本で、税収が大幅に減るのは問題がある。それに地球温暖化対策上、エネルギーへの課税を上げることはあっても下げるという政策選択はありえない。したがって、環境税などの名目で課税を続けるのが望ましい。民主党のガソリン引き下げという政策はおおかたの理解を得られない。

 税収はできるだけ急速に増大する社会保障関連などの支出に充てるのがいい。社会保障は具体的には身近な自治体が担うのだから、税収を地方自治体が自由に使える財源に振り向けるべきである。道路にしか使えないのと、自由に使えるのとでは、後者がいいに決まっている。そして、地方自治体は行政需要に応じて使える財源が増えることで真の地域自治に近づくことができる。

 たまたま30日に話を聞いたモルガン・スタンレー・日本証券のロバート・アラン・フェルドマン経済研究主席は「(揮発油などへの)課税は残すべきだが、(道路建設に充てるという)特定財源は毒だ。国を悪くするからやめるべきだ。民主党は福祉に充てる(特定財源)というが、これも毒だ。特定財源は腐敗(のもと)。それをメディアが言わないのはおかしい」と言っていた。正論である。

 現実には、道路特別会計―道路特定財源を擁護したり、地方分権に逆行する動きが目に付く。全国知事会などは、道路建設はまだまだ必要だと言っている(地元の圧力で言わされている面もあるようだ)。そして、つなぎ法案を支持した。また、地方の味方のふりをする総務省は、自治体が減収補填債を発行しやすくなる法改正を進めている。税収が予算で見積もった額を大きく下回ったら、穴埋めのために補填債を発行していいことにする。地方に財政自立を求めるのではなく、甘やかし、その結果、自治体が困ったときは国が面倒みますよという総務省の自治体支配術だ。

 これではフェルドマン氏に「米欧の投資家からみて、日本は存在しない、つまり不在。文化財です」と言われても反論しにくい。 

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コメント

税制の原則からすればフェルドマン氏の指摘は正しい。
 
しかし、国民の平等にするとき、利用者と非利用者で負担が同じであるのはおかしい訳で、その工夫が特定財源の起源なのではないか。できれば、単年度収支で使い切れない(必要無い、過剰な)予算は、不正に引き出すことがないように、翌年度以降の一般財源に組み込む等の一工夫が必要なのかもしれない。あるいは、予備費でも良いだろう。
 
特定財源は一つの財政投融資的側面があり、不正も発生しやすいが、良い面もあり、どう改良するかと言う点が重要な気がしてならない。

投稿: たぁ坊 | 2008年1月31日 (木) 16時17分

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