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2008年2月13日 (水)

トヨタが春闘相場を決めると内需振興にならない?

 サブプライムローンに端を発した世界経済の暗雲は心配の種だが、日本は財政、金融とも景気対策で打てる手が限られている。したがって、総需要の6割程度を占める消費の拡大に期待する声があがり、格差問題、生活物価上昇等もあって、ことしの春闘の賃上げには政界、経済界においても、出せる企業は出せという好意的な見方も多い。

 そうした情勢の中で、自動車業界の労働組合である自動車総連の主要労働組合が13日に総合生活改善の要求を会社側に提出する。総連としての統一要求は、平均賃金引き上げが1000円以上、年間一時金が5ヵ月以上である。

 春闘相場を大きく左右するトヨタ自動車はどうかというと、同社の労働組合は1500円の賃上げ要求をするという。昨年も1500円の要求で、1000円の回答で妥結したが、ことしは「満額とってもらわねば」(高木連合会長)と外野の期待も大きい。

 トヨタは毎年、好業績を挙げてきているが、従業員に対する利益の還元はもっぱら年間一時金の増加で報いてきた。一時的な好業績ではないのだから、本来は、ベースとなる基準内賃金を上げるべきだが、それをしないできた。その結果、毎年、経済界で「あのトヨタでさえ、あの程度の賃上げしかしないのだから‥‥」という経営側の口実に利用され、春闘全体の賃上げ抑制が続いてきている。

 トヨタは総資本の代表的企業だから、同社の経営者は、賃上げ抑制による日本産業の競争力維持に努めてきたと自負しているかもしれない。ある時期までは、それが日本企業全体の体質強化に貢献したことは否定できない。だが、さすがに、ここまで来ると、春闘に対するトヨタの姿勢は、かえって内需振興による日本経済全般の回復の足を引っ張っているのではないかという見方も成り立つ。

 実は、連合はトヨタ労組に2000円の賃上げ要求をするよう働きかけた。しかし、それは拒否された。仮にだが、トヨタ労組が2000円を要求し、満額回答を断固かち取ったら、部品メーカー、下請け業者の労働組合もいままで以上の賃上げを獲得でき、また、ほかの産業の春闘にも影響が及ぶだろうから、それこそ内需主導型の日本経済に一歩前進することになる。しかし、日本一の企業であるトヨタの労組には、元来、そういう発想がない。

 トヨタ労組の綱領を読むと、「労働者の生活安定と産業・企業の発展は車の両輪」とあるが、「産業・企業」というのはトヨタ自動車のことである。そして、「現実には、大、中、小企業のおかれている条件は、必ずしも同一でない場合もあるので、大企業労働者の独善性、中・小企業労働者の依存性をともに払拭し‥‥」と言い切っている。戦後の混乱期に辛苦を重ねたトヨタ労組にとっては、生産性の向上による企業基盤の確立こそ優先すべきであり、他社や天下国家の立場には立たないことが基本的なスタンスである。それがいまの日本経済にとっては不幸なことかもしれないのである。

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コメント

会社のために犯罪を犯して利益に貢献すれば出世する会社。それは、サラリーマン社長も同じであるようです。週刊金曜日発行の本でも醜聞が記載されているが本当である部分も多い。火がなければ煙は立たないのである。それにしても果たして誰が操っているのだろう。

投稿: 漂流者 | 2008年2月13日 (水) 13時16分

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