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2008年2月 1日 (金)

社会保障国民会議に医師会が出した意見書

 政府は1月29日に社会保障国民会議の初の会合を開いた。社会保障の在るべき姿と、政府の役割および負担の分かち合いについて国民が納得する仕組みを議論するためで、民主党が参加を拒否したものだ。この会議には日本医師会の唐澤会長もメンバーとして参加している。

 その第1回会議に早速、意見書を提出したのは唐澤会長だけだ。「地域医療の崩壊、介護サービス提供基盤の未整備、いわゆる年金問題など、国民は不安を募らせています。国民を守る社会保障は、まさに平時の国家安全保障ともいえます。その重要性を認識され本会議を立ち上げられた福田総理に心から敬意を表する次第です」というところから始まるこの意見書は、1、2行おいてすぐ次のような内容が続く。

 「日本の対GDP総医療費は、OECD加盟30か国中22位ですが、日本の医療はWHOや諸外国から高く評価されてきました。そこには、国民の高い健康意識、医療従事者の献身的な努力、患者さんと医師や医療従事者と信頼関係があることを忘れてはなりません」。問題はすぐそのあとだ。

 「しかし、現在、社会保障への歳出削減により、地域医療、特に産科・小児科・救急医療が成り立たなくなりつつあります。さらに病院勤務医を中心に医師は疲弊しきっており、信頼関係も揺らぎつつあります。日本の医療は、もはや国民の意識の向上や医療従事者の努力だけで維持できる状況にありません」。そして、次の節で「日本が世界に誇る皆保険制度を、より充実させる前提で検討を進めるべきだ」と言っている。

 以上の内容を読み進むと、ひとごとのような言い方であるだけでない。いま起きている医療崩壊は国民の医療費負担が低いからだと暗に言っているように読める。しかし、そうだろうか。昨年4月14日のブログ「医師不足への日本医師会の取り組み」にも書いたことだが、小松秀樹著『医療崩壊』が指摘するように「勤務医は過酷な労働と安心・安全願望の攻撃を受けて、病院診療に絶望している」ことが最大の問題ではないのか。そうした現場の問題提起に正面から応えるのが本来、業界団体である日本医師会の役割ではないかと思う。

 同書に「日本医師会は開業医の利益代表として政治活動していると考えている」と書かれているように、医師会は苦悩する勤務医のためにほとんど何もしようとはしない。最近の診療報酬改定問題でも、開業医の再診報酬が勤務医より相当高いのを是正しようとする厚生労働省の方針を撤回させ、勤務医の窮状に積極的に手を差しのべようとはしない。要するに日本医師会は問題をカネの話としかとらえないのである。

 これでは、国民は救われないし、病院の勤務医はさらに減っていくだろう。開業医栄えて国滅ぶなんてことになりかねない。したがって社会保障国民会議は日本医師会の意見を真に受けることなく、小松氏が提起する問題点を中心に据えて改革の方向を打ち出してほしい。

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コメント

学生時代に交流のあった医学生の話では、産婦人科という特殊な職業事情もあると説明をしていた。当時は、まだ男性医師が多い一方で診療を受ける女性は女医を望み相反する状況下にあった。その心情を察した女学生は多く居たのであるが、勤務時間の不安定さは開業医であっても同じであり、一生大変な勤務条件を知られるのであるが、身体の許す限り女性であるが故にその事情は理解できるので母子の健康に問題ない場合には安全な自然分娩に心掛けたいと希望に満ちていた。残念ながら、その後どうなったかは交流がないので不明であるが、女性は結婚し子供を産むと過酷な勤務であればある程に子育てのために離職する人も多く医者も他でもないとの性別で区分した年齢と就業率の関係の図表を某TV番組で取り上げており拝見したことがあるので、そのデータに他の報道のように虚偽がなければ、この事由が背後に隠れているのではと感じなくてはいられないのである。
 
つまり、現在の論争と対策は論点がずれており、先行きが危惧される。本当に対策が必要だと考えているのであれば、真の対策を採ることを臨んでいる。

投稿: たぁ坊 | 2008年2月 1日 (金) 22時49分

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