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2008年2月15日 (金)

デイトレーダー云々で話題の経産省次官講演

 北畑隆生経済産業省事務次官が1月25日に財団法人経済産業調査会で行なった講演「会社は株主だけのものか? ―企業買収防衛策・外為法制度改正・ガバナンス―」が話題となっている。2月14日の記者会見で、北畑次官は週刊誌などで批判された発言について、「デイトレーダーの方に対して失礼な表現をした」、「競輪ファン、競馬ファンという言い方もいたしました。これも適切でなかった」とお詫びした。

 同次官は、調査会に無断で録音し、メディアに持って回った人がいたことを問題にしているが、いまどき、そういうやからがいることを想定せずに、わかりやすくと、つい口がすべったのは軽率だと言わざるを得ない。

 それはそれとして、調査会がまとめた公式の講演録が経済産業省のホームページに載っている。企業買収などで、会社は株主のものという面が強く出ているが、同次官は、本来、会社は株主、顧客、従業員、地域社会など多様なステークホルダーのものという、いまでは当たり前の主張を展開している。

 ただ、同次官の講演は、長期に保有する株主と、もっぱら短期的な売買をする株主とを分けて考えていて、後者について「デイトレーダーが会社の経営者だといっても、実体的にはどうも納得感が得られません」、「この会社はもうだめだと思ったら、株主は見限って出て行くのが容易です。よくいわれる経営者のモラルハザードだけでなく、株主にも随分モラルハザードが生じうるのです」と言い切っている。

 そして、「少なくとも経営責任を有する主体として株主を考える際には、同じ株主でも、会社と同じ船に乗る株主とそうでない株主に分けて考えなければならないだろう」、「会社も株主を選ばなければならない。そのためには、経営者がはっきりと会社の方針を株主に示すことで、自分たちの会社の方針に共感してくれる方に株を持っていただけるよう努力することが大切なのです」とまで言う。

 それらの二つを制度的にも分ける方法として、「会社の長期的な利益についてあまり関心がない株主と、(中略)長期的に会社の利益を最大化することに関心を持った株主を分けて、それぞれの多様なニーズに応える株式発行形態がとれないか、と考えております」という。そして無議決権株・多議決権株といった種類株式の発行と取引所上場を推進するとしている。

 北畑次官の基本的な認識は「少なくとも短期的な利益を追求する類の株主と多くの日本の経営者との考え方は違っています。会社を存続させ社会貢献を持続させることを重視し、そのため、配当よりも将来のための投資に向けた内部留保を重視してきたのが日本の経営なのです」というところに示される。

 しかし、講演で示された同次官の認識はかなり偏っていると思う。株式市場は長期投資だけで普段の売買がなくては適切な価格形成ができず、市場としての機能を欠く。投機が同時に必要である。また、会社と同じ船に乗って沈没することが予想できても株式を売れないというのでは、譲渡の自由を否定するもので、株式会社制度の根幹にかかわる。

 また、過去の日本型経営では、会社の経営者は大株主を丁重に扱ったが、零細株主を概して軽視し、冷遇してきた。また、大企業であっても、○○偽装が次々に発覚しているように、内に閉じこもった経営で、およそ外に開かれた経営ではなかったところが少なくない。

 そういう経緯を踏まえると、まだまだ、日本の企業にとっては、社員、経営者にとって都合のいい経営をしてきたのを改め、ステークホルダーの一員として株主をまともに遇するという課題が残っていると思う。

 企業買収に対する防衛策のありかたについての同次官の話は参考になった。一読をお勧めしたい。

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コメント

上場社側から観ると経験内容や実態に関係なく売買される人の率が高くなると困る部分もあり、その立場に立る省庁の次官だからこそ、ご指摘の講演になったのでしょう。
きっと立場が変われば違うのだと思います。
 
確かに瞬間投資であれば、仮に米国のように制限がない状況下であれば、お金持ちは、やりたい放題であり、問題がありそうである。不正にターゲット企業を陥れることも簡単だからである。実際に、デイトレーダーの人でTVに出演したり証券会社とタイアップして各地で講演会を開いている人は、おとり売買をして、仕掛け技を推奨している事実もあり、モラルにおいて問題がありそうである。しかも、堂々と不法行為を自らの経験を参考に推奨しているのである。正に、犯罪の自白であるのだが、摘発を受けたと聞いたことはないし、一部の人は今もTV出演を継続している事実から不公平感もあり、不思議に感じている。どうやらこの国は法治国家ではないようである。

投稿: 漂流者 | 2008年2月15日 (金) 18時00分

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