« デイトレーダー云々で話題の経産省次官講演 | トップページ | 全国ユニオンが指摘する労働の現実 »

2008年2月17日 (日)

公開討論会「徹底討論・温暖化問題」を聞いて

 東京大学などで構成するサステナビリティ学連携研究機構(IR3S)が主催した、ポスト京都を見据えた日本の戦略を議論する公開討論会「徹底討論・温暖化問題」が2月16日に東大・安田講堂で開かれた。住明正東大教授がモデレーターとなり、京都議定書のあとの温暖化対策をめぐってかなり熱を帯びた議論が行われた。

 図式化すれば、日本もEU同様に排出権取引を導入すべきだという意見と、セクトラルアプローチを基本にすべきだという意見とが真っ向から対立した。前者は西條辰義大阪大学教授、植田和弘京都大学教授らが主張、後者は松橋隆治東大教授、桝本晃章東京電力顧問が主張した。福田康夫総理大臣が先に世界経済フォーラム(ダボス会議)で演説した内容は後者だと思われるが、討論会では、早く日本の戦略を明確に打ち出さないと、日本は孤立し、不利になるとの意見が多かった。住東大教授は、かつての銀行のBIS基準と同じことになりはしないかと指摘したが、その通りだと思う。

 EUがどんどんキャップ・アンド・トレードの排出権取引で先に行っている。そして、米国の次期大統領が誰になろうと、米国は大きく環境戦略を転換するし、EUに歩調を合わせる可能性がある。そういう状況なのに、日本は環境省、経済産業省合同の審議会においても、意見の対立が続いている。対立の内容は基本的に討論会と同じだ。温暖化対策は本来、政治が決める重要課題だが、国会の論戦はもっぱら道路特定財源の暫定税率などに焦点を当てている。日本の政治が機能不全に陥ったままだと、人類の運命を左右する温暖化について、日本の明確な戦略は描かれない懸念がある。

 討論会で、印象に残った意見を紹介すると、 

・「安倍前首相が2050年には温室効果ガスの排出量を半減するというクールアースを提案した。これは大きな意味を含んでいる。現在、先進国と途上国の排出量が半々だから、2050年に途上国が横ばいなら、先進国は排出量ゼロにするということだ。社会経済をそのままにして、多少、節約することですむ話ではない。途上国の貧困削減対策を合わせていかないと成功しない。」(植田京大教授)

・ 「EUは軍事力では米国にかなわないので、競争戦略として、持続可能な発展とからめて環境をとりあげている。では日本はどういう戦略なのか、そこがはっきりしない。国際的な金融市場のもとで、日本の一部にだけ通用するような制度ではだめだ。」(同)

・「京都議定書は排出総量を固定し、価格で調整する仕組み。EUの排出量取引はまさにそれである。EUは炭素排出を生産要素の1つとした。日本もそう考えねばならない。過去、日本は無策の10年だった。」(西條阪大教授)

・「IPCC第4次報告にもセクトラル(セクター別)アプローチが書いてある。日本はそれでリーダーシップがとれる。途上国にも参加してもらい、世界が公平に少しずつ削減するツールは何かが大事だ。キャップは企業の生死に関わる。」(松橋東大教授)

・「EUはトップダウン方式。エリートが高いところから決める。ヨーロッパ社会はストックが大きい。1つの制度ではなく、違いを認め合うことが必要だ。福田提案のように、公平な積み上げが実現したらいい。日本はアジアで温暖化の共同体があっていい。」(桝本東電顧問)

・「2050年に日本が70%削減できるか検討したが、50%分はいまの技術でいける。残りは炭素に値を付けることで達成できる。」(西岡秀三国立環境研究所参与)

・「皆、用意ができている。政府が方向を示せ。旗を振れ。アジア省エネ共同体を作り上げたらどうか。50年後を考えた良い日本モデルをつくること、それが一番の貢献である。」(同)

 討論会の締めで登壇した小宮山宏東大総長は「Is it too late?」と題して話し始めた。「行動を起こすべき時期にきた。もう始めないと間に合わない。ダボス会議の結論は、長期的視野を持とう(50~100年)、直ちに行動を起こそう、であった。」と述べた。映画「不都合な真実」を見て思い出したのが、核戦争で人類が滅びるというテーマを描いた映画「渚にて」だそうで、その最後のシーンには、誰もいない建物に架かっている白い幕に「There is still time --- Brother」 と書かれている、と話を締めくくった。       

|

« デイトレーダー云々で話題の経産省次官講演 | トップページ | 全国ユニオンが指摘する労働の現実 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 公開討論会「徹底討論・温暖化問題」を聞いて:

« デイトレーダー云々で話題の経産省次官講演 | トップページ | 全国ユニオンが指摘する労働の現実 »