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2008年3月20日 (木)

地方自治体の自立を妨げる者は誰か

 月刊雑誌『世界』の4月号に、前鳥取県知事の片山善博慶応大学教授が「自治体の自立を妨げる地方財政システムを除け」と題して書いている。どこの過疎地域に行っても、道路が立派に整備されている。過疎自治体に対して、国が財政の手厚い優遇措置を講じてきたからだという。その一方で、最近、路線バスが廃止や縮小されており、高齢者は困っているという。

 その原因は何か。国が返済の8割を面倒みてくれるというので、どんどん過疎債を発行して道路を整備してきたが、自前で返済する2割の分の債務が膨れ上がって、自治体の財政がきつくなったせいだという。「本来、自治体とは、住民のために、住民が必要とする行政サービスを、できるだけ低コストで、かつ、できるだけ良質に提供する使命を帯びているはず」だが、国が差し出す「有利な制度」を追い求め、肝心の「住民のニーズにまともに向き合ってこなかった」からであるとしている。

 しかも、いまになっても、過疎自治体の首長の多くは自助努力を怠り、国からの援助を受け続ける過疎団体でいたいと考えている節があると指摘している。

 では、国のほうはどうか。税源の乏しい自治体に財源を補填する地方交付税交付金制度のあり方について、片山氏は透明性が低いという。総額は総務省と財務省の密室における協議で決まる。それに、各自治体への配分はルールがあいまいで、総務省官僚の裁量で決まる。それは特別交付税の場合、顕著である。「特別交付税の算定額の各自治体への内示は、いまだに国会議員を通じて行われている」そうだ。これでは都道府県市町村が中央官庁に陳情し、ご機嫌伺いせざるをえない状況は変わらない。

 自らが自治省(いまの総務省)出身の片山氏は「ひたすら権限にしがみつく(国の)役人と、力不足の国会議員が自治体の真の自立を妨げている」と言い切っている。

 ところで、福島県矢祭町といえば、市町村合併はせず、独自の町運営で知られる。最近は町議会議員の日当制を導入したことで有名だ。その前町長、根本良一氏が朝日新聞の3月18日付け朝刊の「私の視点」で道路特定財源と道路建設について投稿している。その中で注目したのは、次のくだりだ。

 「特定財源を地方自治体の一般財源にして、自治体の裁量で道路や学校をつくるとなると、うまくいかないだろう。残念ながら各自治体にそこまでの能力がないからだ。首長によっては偏った使い方をしてしまうだろう。自治体間の格差が広がることにもなる」。「透明性の高い補助金制度を確立すべきだ」。

 片山氏が書いているような、まともに住民のニーズに向き合う自治体行政が望ましいのだが、現実は、地方自治とか地域主権というものからほど遠いということなのだろう。最近、道州制に関する取り組みがいろいろなされているが、それも、地域の住民が地方自治、地域主権を確立することが先だろう。 

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コメント

地元有力者が首長になることが多い点で不正は横行しやすい実態があり、資産がある人は就任できない等の出馬制限を法制化した方が良いのではないかと感じる程である。もっとも、就任後についても規制が必要であり、首長に関係のある可能性のある歳費には制限を設けて、特に必要な場合には、必ず議会および住民投票で採決するというようなシステム作りが大切ではないか。
 
地元に絶対必要な出費は、地元にしか分からない。全国横並びでは論点がずれることは明白なので、この矛盾点は永遠のテーマで難しいと感じたのであった。

投稿: 漂流者 | 2008年3月22日 (土) 14時32分

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