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2008年3月23日 (日)

石弘光前政府税調会長の本から

 日本は中福祉低負担などといわれる。社会保障などに対する国民の要求は「もっと、もっと」だが、税や社会保険料の負担増は国民の抵抗が強くなかなか進まない。そのギャップが国債発行残高の拡大など国の借金増につながっている大きな理由だとみられている。

 前政府税制調査会会長だった石弘光放送大学長が1月に出版した『税制改革の渦中にあって』を読んだ。同氏は「むすびに代えて」で、同書で最も強調したかったことを3点挙げている。

 「第一に、税制は社会的インフラだという事実である」。税制における公平・中立・簡素の原則が重要だという。特定の政策目標で優遇税制を実施するのは既得権益化をもたらし、税制への国民の信頼を失うと指摘する。読者は道路特定財源を思い浮かべよう。

 「第二は、減税・低税負担方式からの訣別である」。「戦後一貫して、税制改革は増税が企てられても必ず減税とセットになり、ネット減税かあるいは悪くても税収中立の枠で進められてきた」と指摘して、本格的な財政再建にはネット増税の税制改革を「試みるしかない」という。

 「第三に強調したいことは、これから国民皆で「広く」、「公平に」税負担をすべきだという点である」。もうけている企業や高所得層への増税や行政のムダな歳出のカットだけでは財政再建は不可能であることを本文で説明している。

 少子高齢化社会に不可欠な費用の負担は「国民皆でつまりオールジャパンで支えるべきである。とするとすべての国民に「広く」、「公平に」負担してもらう消費税に、今後の税制改革はより多く依存するのが当然の帰結と言えよう」。政治公約には増税反対など「とかく安易な国民に迎合する甘口のメニューが登場する」が、「国民は目前の甘い選択肢に惑わされずに、将来真に必要なものを見抜く眼力が求められる」。そう述べる石氏は「子供の頃からしっかりした租税教育を受ける必要がある」という文で締めくくる。

 本書で「第3章 国民の理解とマスコミ報道――どう改善しうるか――」でマスコミのあり方を問題にしているのは、広く、公平に税負担する税制改革を実現するには、「マスコミが事柄の本質を客観的に正確に報道してくれること」がきわめて大事だと著者が考えているからだろう。

 政府税調の発表文書が意図に反して報道された苦い経験から、著者は「報道の責任とは何か」と言って、「客観的に内容を紹介し、必要ならば解説で批判をすればよい」、そして「目先の現象のみではなく、もっと中長期的な視点から、日本のあるべき姿に関し建設的な国民的議論を深めるような報道が不可欠」と書いている。メディアの報道姿勢で正すべき点の1つである。

 財政再建の目標について、石氏は「公債残高の対GDP比率を2010年代後半から年2%引き下げることを目標にすべきである。具体的には、基礎的収支で年約10兆円の黒字が必要となろう」と記している。「プライマリーバランスは財政再建として、余りに甘すぎる目標といえる」という。

 政府税調会長の立場を離れたので、同氏は自らの意見をはっきりと述べている。ほかにも参考になる内容が多々ある。

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コメント

正に税制の理想論ですね。
公正で公平で簡便なという名目だけの租税原則に似ています。というのも、現実は、分野別項目別に優遇されている特別税的な要素が強い場合が多く、再分配されていることもあるからです。
 
真に財政改革をしたいだけであれば、投資の考え方と同じです。投資に対して如何にして多くのリターンを得るかに注視すれば良い訳なのであり、この見込みがあるからこそ、借金(国債や公債)してでも融資(予算組)をすることになるのではないだろうか。
 
しかし、これはミクロ経済学の公共事業の考え方とは矛盾する。ここでは、職員の給料および担当事業の経費は考慮しない代わりにインフラとして有用であれば利益を追求しない。つまり、税金で賄うという考え方があり、所謂、公共福祉的な意味合いがあるからである。

投稿: たろう | 2008年3月24日 (月) 10時40分

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