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2008年4月21日 (月)

「上げ潮派」高橋洋一氏の見解

 昨日のグログで高橋洋一著『さらば財務省!~官僚すべてを敵にした男の告白』を取り上げた。日本の財政を危機と見るか、どうすべきか、といった点について、同氏はいわゆる「上げ潮派」に属する。「財政タカ派」とは真っ向から対立する考え方である。

 そもそも、財政危機に対する認識が両派は全く違う。高橋氏によれば、政府の抱えるグロスの「粗債務」は大きいが、金融資産を差し引くと、「純債務」は約300兆円まで減る。だから、同書は、「実は、日本が財政危機ではないことは、財務省自身がよく知っている」と書いている。その例示として、財務省の国内向けと海外向けのアナウンスはまるで違うという。2002年、アメリカの格付け会社が日本国債の格付けを引き下げたとき、財務省は純債務でみれば財政危機などではないと主張したのだという。もっとも、高橋氏は、そのすぐあとで、「私は、財務省のいう財政危機は大げさだと思うが、さりとて安心していいとも思えない」と述べている。

 「上げ潮派」は、財政再建には、まずデフレ脱却をめざす。次に政府資産の圧縮を、そして3番目が歳出削減、4番目が制度改革、そして最後に増税という順番を唱える。そして、高橋氏によれば、日本がデフレ基調から脱却できないのは、日銀がハイパワードマネーの供給をしぼっているからだという。「ハイパワードマネーを増やすには日銀が国債を購入しなくてはならない」が、それは戦前の軍備拡張路線を支えた国債引き受けという屈辱の歴史を踏まえると、「日銀にとっては大蔵省(財務省)への屈服、敗北を意味する」。それは日銀エリートの矜持が許さないという。

 だが、「もし、日銀が適切な金融政策をとって2%程度の緩やかなインフレになり、デフレ脱却をしていれば、現在の実質成長率2%に加えて、上げ潮派が目標とした名目成長率が達成されていた」と述べている。そうなれば、財政健全化しやすいというわけである。

 高橋氏はまた、「経済成長こそが、財政再建への近道であるという事実は疑いようもない」として、目先の財政収支の均衡しか頭にない財務省の「財政原理主義」を批判する。とともに、「財政タカ派にとって財政再建は二の次、彼らはどうあっても増税が必要だという結論を導き、消費税率をアップしたいのだ」と批判している。

 そのほか、日本政府は公務員などの人員は先進国では少ないものの、政府資産の規模で見れば大きな政府であると指摘する。「少ない官僚が大きな金融資産を抱えているということは、官僚1人あたりの権限が他の先進国より何倍も大きいのだといえるかもしれない」とおもしろい解釈をしている。

 上げ潮派の代表的な人物、中川秀直自民党元幹事長が提起した霞が関埋蔵金論争にも陰で関わっていたようだが、高橋氏が財政改革を進めるための方策を次々と提起した功績は大きい。「財政タカ派」に対する氏の解釈は極端すぎるし、日銀への解釈も同様だと思うが、財政健全化をめぐって経済論争だけでなく政治的論争が起きるのはいいことだ。 

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