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2008年4月20日 (日)

『さらば財務省!』は推奨に値する

 小泉改革を推進した竹中平蔵氏を支えたブレーン。その中に財務省出身の高橋洋一氏がいるということで、名前だけは知っていたが、氏が書いた『さらば財務省!』(2008年3月刊)を読んで、彼がどんな人かがかなりわかった。「官僚すべてを敵にした男の告白」という副題が決して誇張ではない内容である。

 読めば、この本がいかに霞が関の本質と実態をさめた目でみているか、官僚支配がこの国を危うくしているか、がよくわかる。それに、構造改革をめぐる官僚たちや政治家の行動を具体的に描写しているので、読み物としても引き付けられる。

 普通、こんなにおもしろい本なら、あちこち、新聞等の書評で取り上げるはずだが、さっぱりお目にかからない。下司の勘ぐりかもしれないが、これだけ官僚たちをこてんぱんにやっつけた本を書評でほめたら、書評した当の学者やジャーナリストたちは、以後、霞が関でまともに応対してもらえなくなると懸念したからではないか。あるいは、市場メカニズムを重視するということで竹中氏はマスコミに相当に叩かれたが、竹中氏を支えたブレーンが書いたものなど読むに値しないということだろうか。

 安倍首相は、事務次官会議が通さなかった公務員制度改革案を閣議に諮るという画期的な決断をした。それは「歴史的な快挙」だったが、「翌日の新聞は事の経緯を一切報道しなかった」。なぜ取り上げなかったのかについて、高橋氏はきびしくマスコミを批判している。新聞等はそれに立腹して書評に取り上げないのかもしれない。

 本書の著者の考え方は、「社会主義的な思想に染まっている官僚にとって資本主義は悪である」、「統制経済で市場を管理し、変動を起こさせないのが自分たちの役割で、それが最良と信じている官僚」、「しかし、好むと好まざるとにかかわらず、多くの世界は市場メカニズムで動いている。これを否定したら、経済が破綻するだけだ」、「市場経済をベースにして、官の価値基準、行動原理の一部に民間の考えを入れるとどうなるか。小さな政府になり、制度も全部変わる」というものである。そうした考えに立って、高橋氏は官僚社会の内側から、官僚支配構造の打破に腐心した。

 高橋氏はもともと東大理学部数学科の卒業で、東大法学部出身者が幅をきかす大蔵省では異色の存在だった。数式モデルやコンピュータに強いから、日本の財政投融資や郵便貯金などが抱えるリスクに気が付き、その対策を考え出す。と同時に、日本の官僚制度の欠陥にも気が付き、公務員制度改革などを主唱する。霞が関のムラ社会とは一線を画し、日本を改革しようと必死になって働いた高橋氏には頭が下がる。

 「第七章 消えた年金の真実」で、日本人は政府を「むやみやたらに信じたがる。私はこれが日本国の最大の欠陥だとさえ思っている」、「私からすれば、役所ほど信用してはならないものはない」と断言している。そして「役所への過信は、国民、行政組織双方にとってためにならない。自分の身は自分で守る。その基本が根付いていなかったことも、年金問題をこれほど深刻にした原因なのだ」と述べている。

 ねじれ国会は日本の政治を根本から問い直すよい機会である。国民一人ひとりがこれからの日本のありかたをどう考えたらいいのか、について、たくさんの示唆を与える本書を皆にぜひ読んでもらいたい。 

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