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2008年5月 3日 (土)

与謝野馨著『堂々たる政治』から

 与謝野馨衆議院議員といえば、普通のインタビューならメモなしで的確に答える。ガンから復帰してからは、ゆっくりと、かすれた声で話すようになったが、相変わらず、新聞記者の質問を巧みな比喩でさばいている。安倍内閣の最後の頃、官房長官をつとめた。

 同氏は自民党議員の中で、官僚出身でなく、派閥にも所属せず、それでいながら、見識があって、閣僚の経験もあるという珍しい人物。その与謝野氏が最近、新潮新書の『堂々たる政治』を出版した。その中に、「国家は割り勘である」という章がある。C型肝炎患者に対する補償をするというようなとき、政府が補償するというのは、すなわち国民が負担するということである。社会保障にせよ、何にせよ、政府の活動に必要なカネは、国民が税金や保険料で負担しなければならない。そのことを国民に理解してもらうために、同氏は割り勘という言葉を用いている。

 同氏は、財政再建のやりかたをめぐる「上げ潮路線」には批判的である。ことにインフレを起こすインフレターゲット論には強く反対している。また、まず財政のムダをなくせという主張に対しては、ムダはせいぜい年間数百億円であり、それをなくしても、800兆円といった国の借金の削減には遠く及ばないと批判している。現在の財政状況を踏まえると、社会保障費の増大と財政健全化とを両立させるには消費税の引き上げが必要だという与謝野氏は温かみのある改革を唱えている。小泉構造改革のアンチテーゼのつもりだろう。

 4月21日のブログで、「上げ潮派」高橋洋一氏の見解を紹介した。自民党の中は、経済成長を重視する上げ潮派と、財政再建を重視する派(「財政タカ派」とも言われる)とが政策路線をめぐって対立している。こうした両派の見解がそれぞれ書物になって、国民の目に触れるのはとてもいいことだ。それだけではない。福田内閣および自民党の支持率が下がり続け、政界再編の胎動が感じられるようになってきただけに、体系立った政策を政治家や政党が明確にすることは民主政治の中身を濃くする。

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