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2008年6月 4日 (水)

歳出増の圧力が高まる季節

 6月3日、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会が「平成21年度予算編成の基本的考え方について」という建議を額賀財務相に出した。同審議会は財務省の意見を代弁しているようなものだが、景気にかげりがみえ、いまでも深刻な国家の財政状態がさらに悪化するので、建議の本文には危機感がみなぎっている。

 「膨大な債務残高を抱え、金利上昇に脆弱な状態が続いている」、「政治のつけを国民に回すことなく、将来世代への責任を果たし得る規律ある財政運営を行うよう強く求めたい」、「最近の歳出圧力の増大には大いに懸念を持つものであり、現在進められている財政健全化に向けた取組の手綱を緩めてはならない」、「ひとたび財政の健全性に対する市場の信認が揺らげば、リスクプレミアムの拡大という形によっても、国債金利の急激な上昇が懸念される」等々と。

 いま、世の中は後期高齢者医療制度や救急医療体制、産科医不足など医療問題、介護サービスの担い手不足など介護保険制度問題、年金制度の抜本改革、少子化対策など、社会保障制度をめぐる問題が次々に噴出。市民が安心して暮らせるように保障を充実すべきだという歳出拡大要求の大合唱。学校教育のありかたについても、文部科学省が予算の大幅拡充を求めている。

 これに対し、与党の中で財政健全化を唱える政治家や財務省は、小泉内閣のとき、「骨太の方針2006」で掲げた2011年度の国・地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化の目標を下ろさないようにと必死だ。それが上記の財政審建議につながっている。

 民主党との対抗上、与党・政府の多数はばらまきでプライマリーバランス黒字化の目標を一時、棚上げしようとしているようにみえる。しかし、建議にもあるように、日本が財政健全化の努力を放棄したとみなされたら、日本の長期金利が上がる(国債が値下がりする)のではないか。長期金利上昇は国債・地方債の利払費増を招き、国・地方の財政が一層悪化する。

 したがって、国と地方で800兆円近い長期債務を抱えていて、いまなお債務が増え続けている現実を踏まえて、政治は、そしてメディアもだが、無い袖は振れない、フリーランチはないということを国民にはっきりと言わなければならない。財政支出を増やしてほしいなら、それに見合う増税を受け入れることを覚悟してもらわねばならない。あるいは、いままでの支出を見直して、優先度の低い支出項目から順次、削減して財源を捻出するしかない。

 日本経済は長かった景気上昇局面が終わったようだ。資源エネルギーの猛烈な値上げで、日本から所得がどんどん資源国に流出していて、日本国民は貧しくなりつつある。しかも、少子高齢化対策で国・地方の財政支出は増大基調にある。そうした厳しい実態を国民にきちんと知ってもらうことが必要である。

 と同時に、戦後の経済成長時代にできあがった仕組みや制度を、木に竹を接ぐような改正を繰り返して今日に至っているから、制度はどこかに無理があるし、国民にはわかりにくい。それゆえに、官僚が好き勝手に制度を運用してきたのだとも言える。できれば、それをご破算にして、日本社会の新たな将来ビジョンをもとに、社会保障制度、税制などを、国民にわかりやすい、公平で、簡素な、そして活力あるものに抜本改革していかねばならないように思う。

 6月3日に、日本記者クラブで、厚生労働省の江利川毅事務次官が「我が国の医療政策 特に、長寿医療制度について」というテーマで話をした。あとで、そっちの分野には疎い高齢の某氏が「聞いていて何にもわからなかった」と言っていた。制度がややこしいだけでなく、論理的ではないせいだ。私もよくわからないほうの1人だが、政府はこれまで、制度ごとに、その時々の微縫策でごまかしてきたため、社会保障制度全体のあるべき姿という観点が弱くなっているのではないか。

 これまで、国会などの議会が役所に依存し、国民も政治家や役所に依存してきたが、民主主義国家にふさわしく、政、官、民が一緒になって医療、年金などの制度をつくりかえるようにしたい。政治がその音頭をとるべし。

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