« 「脱藩官僚の会」異聞 | トップページ | 毎年、日本の人口が100万人余も減る近未来 »

2008年6月24日 (火)

竹中平蔵著『闘う経済学』から

 小泉内閣のもとで郵政民営化などを推進した竹中平蔵氏(慶応大学教授)が『闘う経済学』(08年5月)を出版した。経済財政政策担当大臣や郵政民営化担当大臣などとして小泉改革にたずさわった体験を、「未来をつくる「公共政策論」入門」という副題を付けて学生向けに書いたものである。

 小泉改革については、竹中氏の著書を含め、いろいろ書かれている。ここでは、『闘う経済学』の中で興味をひかれた個所を紹介してみたい。

 1.「ジャーナリズムの多くが、依然として官僚をニュースソースにしている」=不良債権処理のために打ち出した金融再生プログラムへの批判は、「政策批判というよりも、担当大臣である私(竹中氏)に対する個人的なバッシングの形をとった」。竹中氏はその理由の1つとして、このことを挙げている。

 2.「民主主義社会にあって複雑な制度は悪い制度なのである」=自治体の財政破綻などを招く原因を追及した竹中氏は、地方財政制度の問題点の1つに、「複雑でわかりにくい」点があると言う。わかっているのは担当の官僚だけであり、その結果、「彼らの都合のいいような運営をされてしまい、民主主義のチェック機能がまったく働かないことになる」と指摘している。

 3.「経済財政諮問会議の場が、政治のリーダーシップから霞が関的ボトムアップ型に変化している」=小泉改革のもと、政府系金融機関改革などのドラスティックな改革ができたのは、「総理の前で、民間議員が入って、利害調整ではなく政策論の正論をオープンに議論するという経済財政諮問会議の場があればこそだった」。だが、「2007年以降、経済財政諮問会議では、民間議員よりも各省庁側から出されるプランが圧倒的に多くなっているように見える」という。竹中氏はこれを「政策決定のプロセスは生き物のように変化しているということなのである」と淡々と記述している。

 4.「閣僚が官僚のいいなりになる最大の要因は国会審議にあると言う側面がある」=日本では国会の審議時間がかなり長く、「閣僚が国会に拘束されている時間は異常に長い」。「その間の法律審議等々では、大臣は法律についての細かい質問に対して答弁しなければならない。それを支えるのは官僚であり、彼らが想定問答を作成する関係上、官僚との良好な関係を保つことができなければ、国会審議を乗り切ることはほとんど不可能である」。したがって、「国会のシステムを変えない限り政治主導はむずかしい」という。

 5.「「特殊な」総理大臣のもとで、特殊な大臣が数名出てこないと、日本の政策決定プロセスはなかなか改革できないだろう」=政府与党一体で閣議決定する現在の政策決定プロセスだと、大臣に就任してから新しい法律案をつくって国会に提出し、成立するまでに2年かかるという。一方、「実は残念ながら、日本では大臣が2年の期間在職するのはむずかしい」。だから、大臣になって「1年間役所のいうことをよく聞いて無難に過ごすことができればいいということになる」。それは役所の望みとも合致するが、「日本の閣僚が大きな政治的な力を持ちえない1つの理由がここにある」。

|

« 「脱藩官僚の会」異聞 | トップページ | 毎年、日本の人口が100万人余も減る近未来 »

コメント

誰もが一方的な立場で考えるものである。
竹中氏も同様であると感じている。
 
官僚が国会答弁の質疑応答用の資料を作成している現実があると居酒屋タクシーの報道の際においても説明がなされた。しかし、残念ながら霞が関は事実を把握していないことも多いようである。結果的に机上の空論も多くなる。たとえ学力優秀な人材でも限界はあるし、学力優秀であればある程に在学中に詰め込んだ知識に捉われ考え方が固定するので心太的な人材となるし意図的に情報操作も可能になる。その点においては竹中氏の考えは一理ある。
 
しかし、政治家も同様に国会という建物に拘留されており現実が見えていないことも多い。それに最近のようにエリートとされる人材を議員に選び過ぎると実は悪政に陥りやすい罠があるように思えてならない。

投稿: じろう | 2008年6月25日 (水) 10時27分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/41634405

この記事へのトラックバック一覧です: 竹中平蔵著『闘う経済学』から:

« 「脱藩官僚の会」異聞 | トップページ | 毎年、日本の人口が100万人余も減る近未来 »