« 医療をめぐる2つのニュースから | トップページ | 北京五輪での日本の総括 »

2008年8月23日 (土)

映画「ボーダータウン」でマキラドーラの一面に触れた

 日本のエレクトロニクス企業が米国本土での生産よりもコストが安くなるとして、メキシコとの国境を越えたすぐのところに設けられた輸出保税加工区に進出し始めたのは1960年代の後半である。諸外国の繊維、エレクトロニクスなどのメーカーが相次いで工場を新設し、メキシコ人を雇って生産したものを輸出した。

 このマキラドーラといわれる仕組みで、メキシコ経済は発展した。だが、NAFTA(北米自由貿易協定)により、2000年11月以降は、米国、カナダや、EUといった国々にはマキラドーラの適用が廃止された。それに、中国のようにメキシコよりも人件費の安い国に企業が工場を移転するようになったため、マキラドーラの工場は減っているといわれる。

 最近、観た映画「ボーダータウン 報道されない殺人者」は、米国のエルパソからメキシコとの国境を越えたところにあるマキラドーラのフアレスという街が舞台となっている。マキラドーラがどんな経済的な仕組みかについては何十年前から知っていたが、映像で見ると、印象が違うものだ。

 映画は、何年も前から若い女性が次々に殺害され、その被害者数は膨大なのに、真相は定かでない。警察も政治家も腐敗しており、事件を解明しようとしない。そこに、シカゴの新聞社の女性記者が取材に来る。工場で働く若い女性が帰途、強姦・殺害され埋められたものの、運良く息を吹き返し、地元新聞に事件究明を相談する。女性記者は地元新聞の幹部と旧知の間柄だったので、被害者を助け、真相を追究する。以下省略。

 マキラドーラに限らず、輸出保税加工区は世界の各地にある。アジアで日本のあとを追って発展した国々はほとんど輸出保税加工区を設けていた。それが、それらの国々のその後の経済発展の基礎をなしたというプラスの評価をしていいと思う。

 映画で見る限り、メキシコのマキラドーラは、その地域の経済発展をもたらしたが、極端な貧富の格差、犯罪多発といった社会の歪みも大きいという印象を抱く。その国や地域の政治が独裁体制であったり、政治家や企業経営者が私欲をむきだしにしている社会だと、経済発展の成果を特権階層が独占してしまう。外国資本はそうした歪みの拡大に手を貸しているとも言える。

 輸出保税加工区の外国資本は、人件費が低いなどのメリットを得るために来ている。そこで働く労働者がどんな暮らしをしているかとか、一人ひとりが人生にどんな夢や生き甲斐を求めているかなどを知ろうともしない。きちんと部品を取り付けたりしてくれさえすればよいのである。

 しかし、いつクビになるかわからない。単純労働なので、スキルが身につかない。賃金も低く、暮らしはかつかつだ。いま、日本で起きている非正規労働者の問題と本質的に変わらない。そうした問題をマキラドーラは内包している。

 日本の企業も、他国の企業も、グローバルな競争の中で、コストに目が行き過ぎて、そうした社会に及ぼす影響には目をつぶっている。この映画はそのことを意識させる。告発している。 

|

« 医療をめぐる2つのニュースから | トップページ | 北京五輪での日本の総括 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/42243704

この記事へのトラックバック一覧です: 映画「ボーダータウン」でマキラドーラの一面に触れた:

« 医療をめぐる2つのニュースから | トップページ | 北京五輪での日本の総括 »