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2008年8月 3日 (日)

農業の直売所は成長市場とか

 一橋大学の関満博教授といえば、ものづくりを中心に地場産業の復活・再生を研究してきた学者だ。エネルギッシュに現地、現場を駆け巡り、近年は中国の工業化にも研究の対象を広げていた。そのご本人が8月1日、東京で開催された「地域力創造シンポジウム」で基調講演した際、研究分野を農、食、暮らしを軸にしたものに移したと語った。「私はいま発見の喜びにひたっている」という。

 地域と産業・企業の関わりを専門とする同氏は、ものづくりに当てはまる市町村がいまや全国で300ぐらいしかないと指摘し、ものづくりを軸とする地場産業の復活、再生といった議論は苦しくなってきたと述べた。そして「こうした研究を35年間やってきたが、もううんざり。研究者には新しい発見がないと駄目だ。正直言ってあきあきしていた」と“告白”した。

 同氏によると、農業は農林水産省関連の産業で、経済産業省が扱う産業とは断絶がある。県庁などでも、商工部と農業とは別になっている。また、農業経済学はほとんどマルクス経済学で、大学の経済学部には講座がなく、農学部の中にある。要するに、完全に別々の存在である。しかし、中山間地域を歩いてみたら、農業に市(いち)ができ、それが発展してきた結果、地域と産業・企業の関わりという同氏の研究分野にぴったり合うものになっていたというわけだ。

 農家が無人販売所で野菜などを売るようになったのは約60年前、そして農家の女性たちが数人ないし数十人集まって直売所を始めたのは20年ぐらい前という。農協がたかをくくっているうちにどんどん増え、いまや、いいものは直売所に持ち込み、そうではないものを農協に出すようになっているとのこと。農協も5年前に直売に参入したが、こちらは生産者の顔が見えないという欠点があるそうだ。

 直売所での売り上げはいまや年間6千億円を超えて、年々10~15%伸びている。同氏は「最後の成長市場」だと指摘する。そして、「中山間地域の明日を切り拓くのは直売所、加工場(集落の農家が直売所で売るため加工する)、農村レストラン(集落の農家が共同で地元の材料を使って飲食を提供する)の3点セットだ」という。いずれも、農家の奥さんがたが営むものだ。

 直売所を始めたことで現金収入を得、預金通帳を持つようになった農家の奥さんがたは買いに来るお客さんと話すようになり、顧客ニーズを知るようになった。その結果、例えば、農協の指示に従って全国一種類だった大根づくりが、いろいろな種類をつくるようになったそうだ。また、直売所などで経営の面白さを知った奥さんがたは高齢者であろうと、元気はつらつとしているらしい。

 農協や農業経済学が全く関心をみせないうちに、直売所が核になって農業地域の市場経済化が進んでいるという実態を関教授は今後の研究対象にしていく。都市住民が知らない変化を分析してくれるのは楽しみと言ったら失礼か。

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