« 特別会計改革についての八代氏の提案 | トップページ | 20年前に城山三郎が指摘したこと »

2008年9月21日 (日)

『官僚との死闘七○○日』を読んで

 東京新聞・中日新聞の論説委員である長谷川幸洋氏が、元財務省官僚の高橋洋一氏とともに安倍晋三政権に関わって、官僚支配体制の打破に取り組んだ闘いのルポである。新聞記者が蔭でとはいえ、ここまで政権の動きに関与することには疑問がないではないが、そこまで踏み込んだ結果、見えてくるものがあるのも確かだ。

 霞が関の中枢を押さえる財務省の動きに多くのページが割かれている。その中で、なるほどと教わったところがある。主税局OBの幹部の話の引用である。

 「財務省の水面下で戦われている基本的な議論の構図」、換言すれば「対立といってもいい」のは、「主計局が本当に狙っているのは、歳出削減ではない、増税なんです。それに抗するように、主計局に対して『増税を唱える前に、歳出削減にもっと汗をかくべきだ』と唱えてきたのは、つねに主税局なんです。」

 床の間を背にして、予算をつけてやるという立場の主計局は、財布をいつも一杯にしておきたい。だから、増税を志向する。これに対し、主税局は増税を認めてもらうにはあちこちに平身低頭でお願いするしかないから、増税よりも歳出削減を訴える。そういう構図があるというわけだ。

 「税収が増えたら使ってしまえ」という小見出しの文中には、実例をもとに、こんなことが書いてある。主計局は税の自然増収が多いとき、財政赤字減らしに回すよりも、補正予算を組んで使ってしまおうとする。なぜなら、自然増収で増税機運が遠のくのを避けるためだという。

 この本は、安倍政権が公務員制度を大きく変えて官僚支配体制を崩そうとするのに対し、霞が関の官僚たちが政権内部の政治家たちをも動かしてすさまじく抵抗する様子を描いている。それは、公務員ののりを超えた骨抜き作業である。小泉政権以来の霞が関改革が容易ではないことを感じさせる。

 それでも、公務員制度改革は福田康夫政権のもとで、民主党の賛成を得て改革基本法が成立した。その背景について、著者は「内閣を形成する政権中枢が事実上、改革派と抵抗勢力に分裂し、野党第一党の民主党が政権内改革派と手を組んだのである」、「政治を根底で動かしている基本図式はいまや『与党』vs.『野党』、『自民党』vs.『民主党』ではない。『与野党双方の改革派』vs.『政権内抵抗勢力』という構図にシフトしつつある。」と指摘している。

 今後の政局を占う点で、この見方はとても興味深い。

|

« 特別会計改革についての八代氏の提案 | トップページ | 20年前に城山三郎が指摘したこと »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『官僚との死闘七○○日』を読んで:

« 特別会計改革についての八代氏の提案 | トップページ | 20年前に城山三郎が指摘したこと »