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2008年9月28日 (日)

少子化は経済にとって大した問題ではない?

 「人口減少と日本経済――労働・年金・医療制度のゆくえ」と題する日本学術会議の学術シンポジウムが9月26日に開催された。人口減少の背景と将来展望、社会保障制度の課題と展望、労働市場とマクロ経済への影響、という3つのセッションが持たれた。途中からのぞいたら、専門的な話が多く、正直言ってよくわからなかった。でも、印象に残った部分がある。さすが、学者、研究者だと思った。

 二神孝一大阪大学教授は「技術進歩と人口成長:出生率は低すぎるか」と題する報告で、いきなり「少子化は経済にとっては大した問題ではない」と述べた。大切なのは経済厚生であるという。また、家計は子どもの数を私的に決定しているのであり、市場の失敗でもないのに、子育て補給金を出すというのはおかしな議論だと指摘した。さらに、ワークライフバランスとか女性が働きやすい環境をつくることを少子化対策に結び付けるのはおかしい、出生率を何%にするかをまず議論してから少子化対策を考えるのが筋だと発言した。

 大竹文雄大阪大学教授は、常に団塊の世代が政治的な影響力を持ってきたと述べ、そのために、今後、教育への支出が減ると将来の経済成長に悪影響を及ぼす可能性があるとして、「世代別の国会議員数のワクを設けることで人口構成のゆがみが悪い影響を及ぼすのを避けることができる」、「次の世代を産む20歳代、30歳代の政治力が弱い。これらの世代の投票権を2倍にすることで、これから生まれる世代の代弁をさせることが考えられる」と指摘した。

 こうした理論経済学者からの報告・見解に対して、社会保障や労働経済学を専門とする学者、研究者の発言はというと、

 高山憲之一橋大学教授は「日本は役人が信用できないから、消費税の引き上げは15%までが精一杯。しかし、消費税の半分は地方に渡すということになると、社会保障に新たに向けられる財源は2%ぐらいしかない」と指摘した。そして「基礎年金の2分の1を政府が負担するようになったら、基礎年金の2分の1を税方式の年金とみなして、無年金者でもその分はもらえるようにしたらどうか」と提案した。その理由の1つとして、無年金者でも消費税を払っていることを挙げた。

 また、高山氏は社会保険庁の問題に関連して「行政における本人確認がいかに大事かが、今回の教訓」と言い、「最後の1人まで確認をするというのには賛成できない。どこかでケリをつけるべきだ」と語った。

 この点に触発された廣松毅東京大学教授は「統計学者として、年金の名寄せなどで半年と政府が言ったのは信じられなかった。それは不可能である。でも、我々の誰も、それを発言しなかった」と反省の弁を語った。同氏は「アカデミアはオルタナティブを提示すべきである」とも述べた。

 ところで、このシンポジウムをもとに来年末までに出版物にするという話だが、緊急性のある社会保障制度改革に学界が発言し、影響を与えていこうというのなら、そんな悠長なことを言っていては話にならない。せいぜい半年以内に、学術会議の分科会という立場で、論点を明確にし、選択肢を提示するぐらいはしてほしいものである。

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