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2008年10月 2日 (木)

経団連の消費税引き上げ案

 「税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言~安心で活力ある経済社会の実現に向けて~」を日本経済団体連合会が2日発表した。イギリスやドイツのような「中福祉・中負担」型の国家が日本の目指すべき道としており、2010~11年度に消費税を最低でも5%引き上げるよう求めている。

 基礎年金については、「広く国民が負担する税方式に移行することが有力な選択肢として考えられる」とし、高齢者医療に対しては「公費投入割合を増やし、国民全体で支えていく仕組みへと包括的・抜本的に見直していくことが必要となる」と述べている。介護保険制度も「公費投入割合を引き上げていく必要があろう」という。

 そして、「社会保障費用を消費税で賄うことが不可欠である」、この場合、「中長期的には消費税率が欧州主要国並みの水準になることは不可避である」としている。

 そして消費税は「国内消費に対する課税であり、基本的に輸出コストに反映されないため、国際競争力低下の懸念が無く、‥‥」と、経済界にとっては好ましい税制であることをさらりと付け加えている。

 この提言は2009~11年度の第1フェーズと、2012年度以降の10~20年程度にわたる第2フェーズとを想定して、もっぱら第1フェーズに関する各論を述べている。消費税の最低5%の引き上げと合わせて、消費税率1%相当程度の定額減税(期間5年程度)を行なうよう求めている。また、道州制の導入を見据え、消費税を引き上げたら、消費税10%の配分を国7%、地方3%とすることが適当だと述べている。

 以上が提言のポイントだが、どうも上記の計算が合わないのではないかと気になった。現在、消費税のうち国の懐に入るのは4%である。上記の増税後の国の7%から定額減税分1%を引くと、実際には6%しか国に入らない。とすると、いまより2%分(約5兆円)増えるだけだ。しかも2009年度には、基礎年金で国が3分の1の負担を2分の1に引き上げる約束になっているから、それだけで消費税1%分に相当する。ということで、残りはたったの1%分、約2.5兆円である。

 それなのに、さらに基礎年金を全額税方式に切り替え、高齢者医療にも介護保険にも税投入を増やすとしたら、約2.5兆円では全く勘定が合わない。年金の保険料積み立てが要らなくなる分を税で取るということかもしれないが、それはそれで相当の増税が必要である。「改革は増減税一体」で説明が足りているつもりかもしれないが、消費税か所得税か法人税か、何らかの増税が必要ではないか。

 もう1つ問題なのは、2011年度のプライマリーバランスの黒字化など財政健全化へ回す財源が、この一体改革の提言には何も提示されていないことだ。世界各国に比べてかなり高い法人への課税税率の引き下げが必要なことをさりげなく書いている割に、提言全体がラフだという印象が強い。経団連といえば、かつては、もうちょっときちんとした提言を出していたのに、と思ってしまう。

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