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2008年11月 1日 (土)

「生活対策」等の経済対策で感ずること

 麻生内閣が10月30日、「生活対策」と銘打った新たな総合経済対策を発表した。翌31日には日本銀行が政策金利(無担保コール翌日物金利)の誘導目標を年0.3%程度に引き下げた。「生活対策」は事業費の規模が26.9兆円程度、“真水”の国費は5.0兆円程度という。それらをみて感じたことを書き連ねると――

 バラマキの最たるものである定額給付金は選挙対策としか思えないが、霞が関の各省庁も予算(カネ)が得られるというので、よくまあ、あれこれ総花的に対策を書き連ねていることか。世界的な経済危機が日本経済のどこにどう響いてきているのか、そこをきちんと詰めて検討した結果出てきた対策もあるが、そうでないものがたくさんある。

 円高というと、すぐ大変だという声が上がる。しかし、流通業界や旅行業界では円高メリットを還元するセールなどを始めている。また、原油値下がりなどでガソリンなどが安くなってきており、ひところ石油製品高騰で悲鳴をあげていた産業やマイカー利用者の負担は減る傾向にある。世界経済をおおっていた過剰な投機が急速に縮小した結果、ついこの間まで各種輸入品の価格高騰に苦しんでいた産業や消費者も一息つき始めているわけだ。経済対策はそうした経済情勢の変化を踏まえた内容になっていない。バージョンが1つ古いのである。高速道路料金の値下げなんぞはその1つだ。

 国・地方とも財政は危機的な状態が続いている。したがって、100年に一度の危機だからといって、いい加減なカネの使い方をしては困る。追加予算を組むとしても、今後の日本経済が直面する社会保障など中長期的な課題の解決に役立つことを優先すべきである。そして、規制の撤廃・緩和や地方分権の徹底などの構造改革、つまり中央省庁の役人がいやがる改革を実行すべきである。この国をどういう社会にしたいかの理念に裏付けられていない個別政策は国費のムダ遣いである。

 麻生首相は30日の記者会見で「大胆な行政改革の後、経済状況を見た上で3年後に消費税引き上げをお願いしたい」と述べた。しかし、「大胆な行政改革」とは具体的には何かわからない。消費税引き上げが必要なことを国民に言明したのは評価するが、いくつかの条件が付いた表現なので、増税が先送りになり、財政悪化状態がより深刻さを増すだけにならないか心配だ。

 「生活対策」の財源は赤字国債に依存しないという。しかし、財政投融資特別会計から国債整理基金特別会計に繰り入れて国債償還に充てるカネを使ったりするのだから、国の財政全体でみれば赤字国債の発行と実質は同じだ。そうまでして、政府が財政健全化にこだわっているという見方もできるが、それは多分に市場向けのポーズだろう。21世紀に入ってからの長い好景気の間、政府はプライマリーバランスの黒字化を一度も達成しなかったし、それ以前も、ずっと国債残高を積み上げてきた。ついでに言えば、08年度の税収が予算を5兆円程度下回ることになれば、赤字国債を発行せざるをえない。財政健全化とはおよそ逆のコースをひた走っているのだ。

 日本銀行はバブル崩壊後に史上かつてない超低金利を維持してきた。上記の好景気のときでさえ、デフレから脱却していないとの理由で、超低金利状態を当然視していた。このため、景気が悪化しても、政策金利を下げる余地がほとんどないままだった。日銀が市場金利をせめて2%か3%ぐらいにまで戻していれば、景気の調整弁として金利機能を使うことができただろうし、国民の金融資産の利息がもっと増えて、消費を促し、内需主導型経済に移行するきっかけを用意できたかもしれない。米欧の投資銀行や各種ファンド等が日本で調達した超低利資金をもとに不動産、株式、商品先物の投機を行なっていたといわれるだけに、日銀の硬直的な金融政策の罪は重い。 

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