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2009年1月10日 (土)

不況への企業の対応あれこれ

 世界的な経済危機に対し、企業はさまざまな対応策を取り始めた。トヨタの社長交代見通しなど、たまたま新聞記事で目にした三社の対応策について思うところを以下に――

① トヨタ自動車の渡辺捷昭社長が6月末に副会長になり、創業者一族の出身である豊田章男副社長が社長に昇格する人事が固まったらしい。日本経済新聞は「創業家の旗の下、世界三十万人の巨大グループが結束して危機を突破する体制を整える。」と交代理由をあげる。記事の見出しまで「創業家「旗」に危機突破」と書いてある。

 それで思い出すのが、かつて松下電器産業(現、パナソニック)が創業家の直系の副社長を社長にせず、副会長にした出来事だ。父親の元社長が息子を社長にと強く求めたのに対し、当時のトップはそれをしりぞけた。会社は社会の公器であり、人物本位で選ぶべきだという理由からだ。

 トヨタは豊田達郎社長が病気で退き、ピンチヒッターとして奥田碩副社長が社長に就任するまで同族経営の色彩が濃かった。例えば、本社の役員食堂では、昼食時、会長、社長をはじめ、各役員の座る席が決まっていて、豊田英二、豊田章一郎氏らトップないしトップ経験者に対し、役員といえどもめったに口をきくことができなかったという。

 そうした社風を奥田社長が変え、上下左右にわたって風通しをよくした。その結果、トヨタの快進撃が始まった。しかし、奥田社長が創業家一族をないがしろにしていると感じた一族の一部は、奥田氏が後任を選ぶときに、豊田家を大事にする人を選ぶよう相当圧力をかけたといわれる。張冨士夫氏が奥田氏の後任になったが、それが決まるまでには、そうした事情もあった。

 過去のこうした経緯を考えると、章男副社長の社長昇格は豊田一族の年来の悲願達成ということになろう。新聞の見方では、大株主でもないのに、創業家一族の副社長が社長になることで社員が結束し、この未曾有の危機を突破する、というのだが、章男氏が世界のトヨタを率いるだけの力量を持つ人物とはどこにも書いていない。

 いまの時代、仕事はチームプレーであるとはいえ、政治と同様、卓抜したリーダーシップが必要である。トヨタのトップ選びが、世界のトヨタから三河のトヨタに回帰するのでなければいいがと憂う。

② 日本電産の永守重信社長といえば、抜群のリーダーシップで知られる。斜陽の企業を次々に買収し、立て直してきた。その日本電産が本体とグループを構成する企業(業績の堅調な日本電産コパルは除く)の社員の賃金を2月から1-5%カットする(10日付け日本経済新聞朝刊)。役員の報酬や管理職の給与もすでにカットしており、2月から削減幅を拡大するという。

 同社は仕事を融通したりして残業を減らし、雇用維持を優先するという。スタートしたばかりの春闘に水をかけるような話だが、ことしは、こうした賃金カットを行なう企業が相次ぎそうである。すでに非組合員である管理職等の給与・ボーナスのカットを始めた企業の名前も聞く。

 春闘では、連合が打ち出しているように、個人消費の落ち込みを避けるため、賃上げを要求する産業別労働組合組織が少なくないとみられる。しかし、個別企業レベルでは、労使とも、賃上げどころではないというところも多いのではないか。まだ一部の企業にとどまっている賃金カット、希望退職募集などがかなり広がるという想定もせねばなるまい。

③ 富士通マイクロエレクトロニクスが今月から工場の勤務体制を12時間勤務2交代から8時間勤務3交代に変更したという。半導体を生産する3つの工場が対象である。8時間勤務のあと4時間も残業をする勤務体制だったというのにいささか驚いた。

 連続操業をする工場は普通、3交代制をとっている。4組とか5組で回していく。それが同社の場合、12時間2交代というのだから、3組で回しているのだろう。12時間のうち4時間は割増手当が出る。それを1月から3交代制に変更、8時間の通常勤務だけにし、割増手当の支払を不要にしたというわけだ。

 半導体製造のみならず、連続操業の現場では、深夜労働をしたり、勤務時間がちょくちょく変わったりして、働く人たちには負荷が大きい。同社のように12時間勤務というのは、3日に1日休めるとしても、身体によくない。加えて、家族との暮らしのリズムが安定しない。それらの点は8時間労働の3交代制にしても完全に解決するものではないし、当の従業員にすれば、残業手当が減るほうが痛いのかもしれない。

 しかし、先進国としてこれほどの経済的な富を得た日本において、家庭生活など個人の暮らしが、あまりにも仕事に振り回されているのはやっぱりおかしい。タクシー会社勤務の運転手とか、サービス業では、やはり長時間連続の労働が当たり前になっているところが多い。失業者の問題が深刻化しつつあるが、それとともに、人間性を尊重したディーセント・ワーク(まっとうな仕事)が当たり前になるような経済体制づくりが大きな課題である。言うはやすいが‥‥。 

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