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2009年1月22日 (木)

リチャード・クー氏の「バランスシート不況」論

 1990年代、日本のバブル崩壊後に「バランスシート不況」という言葉を初めて聞いた。その懐かしい言葉を、22日、リチャード・クー野村総研主席研究員から聞いた。彼がこの日、日本記者クラブで催された勉強会のゲストとして講演した際にだ。

 「バランスシート不況」は彼が言い出した言葉だそうで、資産価格の暴落が起こす不況のことだという。土地などの資産が暴落すると、企業は債務超過に陥り、倒産するか、本業で少しずつ債務を返済しようとする。後者の場合、ひたすら返済に専念する。新たな借り入れはしない。例え、金利ゼロであっても借りない。そうなると、マクロ経済的には、家計などが収入の一部を貯蓄すると、そのカネを借りて使う主体がないと、消費はスパイラルに縮小する。経済全体が収縮を続けることになるこの悪循環をバランスシート不況だという。

 日本は1989年末からの土地と株式の下落で1500兆円の富を失った。GDPの3年分に達する。かつて米国が大恐慌で失った富はGDPの1年分だから、日本のほうがはるかに深刻な打撃をこうむったことになる。しかし、彼は、日本がバブル崩壊後、市街地価格指数が87%も下落するなど資産価格が暴落したにもかかわらず、GDPが拡大を続けたという事実こそ、米国など世界にとっての唯一の希望だという。

 バランスシート不況を日本がうまく切り抜けたのは、マクロ経済的に見た貯蓄を政府が使ったからだと指摘する。税収が落ちたのに、政府は逆に歳出を増やした。それがGDPの拡大をもたらしたのであり、もしも政府が国債を発行して公共事業などをしなかったら、GDPは半分になったり3分の1になっていただろうという。

 過去、GDPが滅茶苦茶に落ちたとき、戦争が起きて回復した。平和のままで経済が回復したのは日本が初めてだとクー氏は語った。米国では、これから貯蓄が行なわれるようになるから、それを対象に国債を発行すればよい、海外からカネを借りる必要はないとも述べた。もっとも、米国は財政出動するにしても、ことし9月以降にしか可能ではない。それまでに経済は落ち込むから大変だとの見方を示した。

 クー氏は米国や西欧の危機を日本の経験した不動産バブルに引き付けて見ている。しかし、池尾和人慶應大学教授は米国を重層的な市場型間接金融と定義して、日本の経験は参考にならないと言っていた。したがって、財政出動に対する見方も、積極的であるのと消極的であるのと分かれる。

 専門家でもさまざまな意見に分かれるところだ。日本の国会はそうした分析、対策をめぐって議論してほしい。政治家にとってはその見識や能力を発揮する100年に一度のチャンスだから。オバマ米大統領の登場を見てもわかることだが、いまは野党が総理大臣の国語力を試す質問をしているようなときではない。危機感が政治家全体になさすぎる。

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コメント

・・・で、2009年11月現在では、

イギリスを筆頭に、世界中で、故小渕元総理が
やった、財政出動を真似しているわけだ。
日本も当然、そうした。

イギリス、スペイン、韓国、アメリカなんて、
そのうえで、所得税最高税率引き上げまでやってる。
社民党もびっくりだ。

投稿: 未来からのコメント | 2009年11月 9日 (月) 15時54分

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