« 精彩欠く全国紙の紙面 | トップページ | 「さん」づけで呼ぶと議論しやすい »

2009年1月 3日 (土)

人と人とのつながり、支え合い

 今月中旬に封切られる映画「ふうけもん」は、「便利屋」、すなわち、市民のちょっとした困りごとを引き受ける雑用代行業者の話である。頼まれるさまざまな仕事の一つが、一人暮らしの老女の話相手になることである。

 この老女は、お金には不自由しないが、一人家にこもっている孤独感は耐え難い。そこで便利屋に定期的に来てもらい、おしゃべりをする。そして来てもらうたびに謝礼に100万円(と思われる)を出す。便利屋・右京サービスの社長(中村雅俊)は、そんな大金をもらうわけにはいかないと断るのだが、老女はこのぐらいのお金はどうってことないと押し切る。

 この映画を観たとき、昔、知人から聞いた話を思い出した。定年過ぎて、ほとんど外に出かけなくなり、家で趣味の庭いじりなどをしていた地方都市在住の男性についてだ。証券会社の営業マンの勧誘で株や投資信託を手がけるようになった。営業マンがときどき訪ねてくると、家に上げ、お茶やお菓子を出してもてなした。そしてこの男性が亡くなったとき、取引口座にはほとんどお金が残っていなかったという。しかし、この家の奥さんは、ご主人が証券マンと話ができるのを楽しみにしていたから、損してもいいのだと語ったという。

 昨年末から新年にかけて、失業し、住むところを追い出された人たちに救いの手を差し伸べるNPOや地方自治体の活動が報道された。日比谷公園に設けられた「年越し派遣村」は、厚生労働省の目の前という宣伝効果もあり、全国に伝わった。NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」や全国ユニオンなどの努力には頭が下がる。それに関連してあれこれ思う。こうしたところに助けを求める労働者には、いざというときに一時避難にせよ、駆け込む親兄弟などがいないのだろうか。いたとしても厄介視されるとかで帰るわけにはいかないということなのだろうか、など。

 上記の、高齢者の話も、派遣失業者の話も、いまの日本では、社会や家族から孤立した人たちが少なくない事情を物語っている。オレオレ詐欺などに引っかかる事件が多発した背景にも、普段、世間との付き合いが少なく、核家族化で子供や孫との接触がほとんどない高齢者の孤独が存在する。

 高齢化社会というと、すぐ年金、医療、介護、生活保護などといった社会保障制度の充実という話になりがちである。そしてそのためには財源をどうするか、という話になる。しかし、それらをいくら充実しても、ひととのつながりを欠くようでは、所詮さびしい、孤独な社会である。「年越し派遣村」は、そうした私たちの社会が抱える本質的な問題を浮き彫りにしたのではなかろうか。

 高齢者に限らない。現役の労働者、市民もそうだ。楽しいときはともに笑い、悲しいときは支えてあげる。誰もがどこかでつながっているように、人間関係の多様なネットワークを構築することが日本のこれからの大きな課題である。

|

« 精彩欠く全国紙の紙面 | トップページ | 「さん」づけで呼ぶと議論しやすい »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/184848/43621759

この記事へのトラックバック一覧です: 人と人とのつながり、支え合い:

» 生活保護 [こはるのつぶやき]
夫が適応障害で働けません。生活保護について教えてください。 夫が適応障害で働けま... [続きを読む]

受信: 2009年1月 3日 (土) 14時36分

« 精彩欠く全国紙の紙面 | トップページ | 「さん」づけで呼ぶと議論しやすい »