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2009年2月 3日 (火)

またも浮上してきた「政府紙幣」発行構想

 苦しいときの神頼み? 国債を発行せずとも、「政府紙幣」を発行すれば、打ち出の小槌のように、財源を生み出せるから、その発行を検討すべきだという声が政界などの一部で上がっている。

 自民党の菅義偉氏らが景気刺激策としてぶちあげているという。「政府紙幣」発行の意見は、米国の著名は経済学者であるスティグリッツ氏が2003年にわが国の関税・外国為替審議会で、デフレ克服策として提案したことがあるし、榊原英資氏なども唱えたことがある。最近では高橋洋一氏が提言している。

 「政府紙幣」は政府が発行する紙幣だ。日本銀行が発行する紙幣(日銀券)と同様に通用するが、単に紙切れとしての1万円札などを発行するコストしかかからない。国債を発行した場合には利子を支払わねばならないが、「政府紙幣」を発行しても利子は不要である。したがって、財政難だとか、財政健全化だとかといったことを気にしないで財政支出を増やせる。そこに目をつけたわけである。

 国債が増えすぎ、市場消化が難しくなった場合、日銀に国債を直接引き受けさせると言う形で、政府が財政支出の財源を確保するというやりかたも考え得る。だが、それは「通貨の番人」である日銀の独立性を侵すことになるし、国債発行により利子支払いが伴うから、国の債務が膨らむ。財政悪化が誰の目にも明らかになる。「政府紙幣」の発行は、そうした問題を回避できる。

 このように、一見すると、「政府紙幣」はいいことづくめのようにみえる。しかし、実体経済の規模が同じところに紙幣の量だけが増えるのだから、物価上昇につながるおそれがある。景気を刺激しようという目的で発行するのだから、わずかな金額ではないだろうから、当然、インフレの危険を伴う。今日の政治情勢をみると、一旦始まれば、発行量に歯止めが効かなくなる心配もある。

 しかも、政府は「政府紙幣」を回収するというような調節はしないから、日銀が日銀券の増減で金融調節することになるが、スムーズに行くかどうか。

 おぼれる者はわらをもつかむ。いまの世界的な経済危機をどうやって乗り越えるかを考えるとき、「毒食わば皿まで」といった、節度も何もない、ただ何にでもカネを使えば景気はよくなる、といった発想は人々の心を堕落させ、将来の日本を、あるいは世界をみじめな状態に陥れるのではないか。「政府紙幣」を議論することは結構なことだが、その直接、間接の効果や社会的な影響などを十分に検討すべきだろう。

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