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2009年2月18日 (水)

中長期の視点を忘れがち

 自民党の末期症状には国民もあきれ果てているだろうが、解散・総選挙のことしか念頭になさそうな民主党などの野党に絶望している国民も多いことだろう。経済が危機的な落ち込みを続け、雇用・生活不安が高まる一方なのに、政治は完全に機能を停止したままだ。米国が依然、金融機関の不良資産やGM・クライスラー救済などの問題を抱えながらも、経済対策を着実に進めているのをみると、民主政治が根付いている国とそうでない国との差を感じざるをえない。

 日本では超目先のつまらない政争関連の出来事ばかりが大きなニュースとして報道されている中で、日本経団連が中長期の視点に立った社会保障制度改革および少子化対策についてそれぞれ提言を発表したのは、ちょっと新鮮に思えた。メディアの扱いは小さいか、ないしは無視だが、いま、日本が緊急に打ち出さねばならない経済危機対策の重要な柱となるテーマを扱っている。

 提言「国民全体で支えあう持続可能な社会保障制度を目指して――安心・安全な未来と負担の設計――」は、昨年に経団連が出した2つの提言をもとに多少、内容を変えたものである。高齢者の総人口に占める割合がさらに上昇し、現役世代に過度に依存するいまの社会保障制度は持続不可能である。そこで、2025年度を最終目標に、中福祉中負担で国民が安心し信頼できる、制度横断的な社会保障制度の改革を目指したものという。

 緊急課題への対応と社会保障制度の基盤整備をはかる改革の第1段階(2009~2015年度)では「少なくとも消費税率5%分の財源を確保する必要がある」とし、年金の税方式への完全移行や介護・高齢者医療の公費負担割合を上げる第2段階(2016~2025年度)では、「社会保障国民会議のシミュレーション結果をもとに試算すれば、2025年度で追加的に必要となる公費は、現状に比して消費税率換算で12%程度必要になる」としている。

 制度改革の具体的な提案内容については、提言を読んでいただくとして、官庁の縦割りを超えた発想は評価できよう。

 もう1つの「少子化対策についての提言――国の最重要課題として位置づけ、財政の重点的な投入を求める――」は、騒がれる割に少子化対策が成果を挙げていない現状に危機感を抱いたところから出された。政府の「措置」の仕組みをやめて、保育を必要とする人たちが必要とする施設・サービスを選択し、利用できるように制度を改革するよう求めている。

 設置費用として新たに約1兆円、運営費用に年間7千億~8千億円出せば、潜在的な待機児童の解消ができるという。また、子育ての経済支援として、小学校卒業まで一律月額2万円の支給を提案している。そのための追加費用は2兆~2兆4千億円と見込んだ。次世代育成支援は公費での対応が基本だとし、追加的な費用は将来的には消費税引き上げにより安定財源を確保すべきだとしている。

 少子化が進むと、経済成長が抑制されるし、財政・年金制度の持続は不可能になる。それでは、日本の将来は暗い。そこで、経団連は自らはワーク・ライフ・バランスを積極的に推進するとともに、政府に対しては国の最重要課題として少子化対策に取り組むよう求めているものだ。いまの政治があまりにもお粗末なだけに、この時点で、とても貴重な提言だと思う。

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