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2009年3月 1日 (日)

伯野卓彦著『自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い』

 青森県大鰐町、長野県飯綱町、北海道芦別市、赤平市。これらは、バブルの時代やその余熱があった時期に、第三セクター方式でリゾート施設、テーマパークなどに巨額の投資を行なったり、市立総合病院を大規模化・新鋭設備化したりし、その後、経営不振で借金の重圧にあえいでいる自治体である。

 伯野卓彦著『自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い』(09年1月刊、講談社)は、これらの自治体のあえぎが聞こえてくるようなルポルタージュであり、背後には、夕張市のように破綻しかねない自治体がたくさんあることが行間から読み取れる。

 折りにふれ、新聞などで伝えられる夕張市のその後は、それを読む者にも、逃げ場のない苦しさを感じさせる。本書も同様である。もちろん、苦しい中で必死に努力している人たちには頭が下がる思いがする。しかしながら、一方で、どうして、こんな馬鹿なことが起きたのか、誰の責任か、責任者はその責任をきちんととったのか、などを明確にする作業が絶対に必要であると痛切に思う。

 それについての私の意見を言えば、第1に、自治体および住民の、いざとなったら国が面倒をみてくれるという高度成長時代から続く甘え、および、それと裏腹の関係にある自治体の経営感覚欠如である。地方自治には自己責任が伴うが、自治の基本が確立していない。情報を公開し、議会および住民がきちんと議論し、納得するステップを踏まず、簡単においしい話に飛び付いている。リスク感覚がゼロに近いのである。

 自治体は、第三セクターの債務について、金融機関と損失補償契約を結んでいた。それが何を意味するかも、自治体はほとんど知らなかったようだし、知っていても、第三セクターが破綻して、借金をすべて肩代わりして返済せねばならない時が来るなんてことを全く想像していなかった。まして、住民はそうだったろう。

 自治体と第三セクター設立で手を組んだ民間企業のほうも、相当おいしいことを言って自治体を丸め込んでいたと思われる。でも、それだからといって、自治体および住民の負うべき責任、負担が軽減されるわけではない。

 第2に、j地方自治体の味方のようなふりをしながら、国の行政機関として自治体を支配し続けている総務省(旧自治省)の行政である。同省は、補助金や交付金などで自治体の活動をコントロールし、自治体および住民の主体性確立を妨げてきた。したがって、いまだに地方自治体および住民の国に甘える意識は変わらない。真の地方自治が実現すれば、総務省はほとんど要らなくなる。そうならないように、自治体を生かさぬように殺さぬようにしているのが総務省の客観的な役割である。

 もちろん、個々の地方自治体は万能ではないから、ベストを尽くしたとしても、予測不可能な事態に直面し、お手上げになることもある。それに備えて財政面の蓄えを十分にしておくとか、緊急に国が新立法で救済する必要もあるだろう。しかし、平時には、国は地方自治を貫く方向にもっていくべきだ。さもないと、自治体は性懲りなく国に甘えようとする。中央政府が真の地方自治をめざす自治体および住民を支援するように、政治自体を変える必要がある。

 著者は、「おわりに」で、責任の所在は国にあるのか、自治体の幹部にあるのか、住民にあるのか、バブルの時代のせいか‥‥、おそらくそのすべてだと思うと書いている。そして、長期戦略を立てられないこの国の構造的な問題が根っこにあるような気がしてならないと指摘している。しかし、責任の所在を一億総ざんげのようにあいまいにするのには賛成しかねる。

 いずれにせよ、なぜ、こうしたことが起こったのかを徹底的に解明することが望ましい。それが行なわれれば、責任の所在も、今後の対応策も、明確になる。日本の行政および政治がそれを避けていては、簡単に過ちを繰り返すだろう。 

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